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第1章:第4節
俺の中の有力候補 ー神無月カイトsideー
しおりを挟む「ハァー、全然楽しくない………」
屋上にて、俺は少し曇りがかかった夜の空を見てため息を吐いていた。
(月曜に早速、スピカ先輩のクラスに行ったら本人は学校に来てなしい、幼馴染である由奈先輩に聞いても分からないって言われっし、んで勇気出して学校を遅れて来た桃ちゃん先輩に聞いたら、七海先輩の親父が経由してる七海総合病院で入院してるみたいじゃん。)
「………これ、拷問ってやつだよね、ぜってー。自分の好きな子を他の奴に取られた、みたいなー。」
誰もいない屋上で俺は独り言を溢す。
「こうなるんだったら、スピカ先輩の部屋調べれば良かった……」
俺自身の運の無さにまたハァーとため息を吐く。
(いや、あん時寮の部屋番号も出てたはずだし、それを見落とした俺が悪いんだけど……)
あの日に偶然にも俺はスピカ先輩の後ろ姿を目撃して、徹夜して徹底的に調べた。
髪色が銀髪であったこともあり、直ぐに名前が出てきた。
____藤野スピカ。5月当初で[3ーC]クラスに転校してきた生徒。
調べた時に顔写真も出てきたけど、どうしても本人の顔を直接見たくてあの日の翌日、俺は先回りをしてスピカ先輩がくるのを待っていた。
(つーか、いくらなんでもスピカ先輩……起きんの早すぎじゃん!俺朝弱いし、あん時スピカ先輩が来るまで立ったまま居眠りしてしまったし……)
なんでもスピカ先輩は相当朝には強く、毎日早朝5時に起きる習慣があるらしい。
(ここ転校してくるまでどんな生活してたんだろう……。めっちゃ気になるんだけど。)
ふと半信半疑に思ってたら、ガチャリと屋上のドアを開く音がした。
(あっ……この匂いは!)
匂いで誰か分かった俺は寝転がった状態で、そいつは俺のところに近づいてくる。そしてそいつは、俺の前にて立ち止まった。
「……ここ最近君は、この屋上にいることが多くなりましたね。」
この流暢な喋り方で落ち着きのある声を持つ持ち主に俺は体を起こし、そいつに振り返った。そこには一人の青髪の青年が立っていた。
「俺の気分がここ最近、憂鬱なんだよね。あーくん。」
「君が憂鬱になるものなんて、女関連以外ありえませんから。」
「分かってんじゃん。」
俺はあーくんこと、千夜葵をあだ名で呼ぶ。
「……女好きの貴方が憂鬱になるなんて、余程その方が気になるんですか?」
「まぁね、その子今入院してるんだよね~。全然会えてないし。…って、あれ?俺言ったっけ?その子が誰かって?」
「言ってはいませんが、大体察しがつきます。」
そう言ってあーくんは眼鏡をクイッと上げ、俺を改めて見る。
「既に調べがついてますし、先程ご挨拶を済ませたところですから。」
「へぇ~、そういう所は律儀だよねー♪というかスピカ先輩、もう退院してたんだー♪」
「やはり、あの方なんですね。……カイトが興味を持ったお方は。」
「ありゃ、バレちゃったか♪」
俺がテヘッと顔を出せば、やれやれとあーくんは半ぱ呆れ混じりに眉を寄せる。
「……ですが、カイト。分かっているのですか?あの方は"有力候補"ではありません。」
あーくんは眼鏡をクイッと上げ、真剣な表情で俺を見る。
「確かにそこなんだけどね、有力候補である由奈先輩より、候補外のスピカ先輩の方が気になっちゃってんだから仕方ないじゃん!それに………」
「……それに?なんです?」
「……俺が見た限りだと西園寺先輩以外全員、スピカ先輩に何かしらの興味持ってるよ。ま、西園寺先輩はスピカ先輩にまだ会ってないから何とも言えないけど。」
そう行って俺は、あーくんに意欲を示した。
「要は、君を含めた他のヴァンパイア達も西園寺先輩以外は藤野先輩に興味を抱いてる。…………そういうことですか?」
あーくんはふん、バカバカしいと鼻を鳴らし、眼鏡をクイッと上げる。
「僕は先程、藤野先輩を会いましたがそんな要素は何処にもありませんでした。特にこれといったものは…………」
ふとあーくんはいいやめて、何かに引っかかったように考え込みはじめ、凛とした顔立ちが歪んでいた。
「……あーくん?」
「…………いえ、話を戻しましょう。」
不審に抱いた俺は声をかけるとあーくんはいつも通りの凛とした顔立ちに戻る。
「君は藤野先輩に興味を持ってるようですね。西園寺先輩以外のヴァンパイア達も含めて。」
「そうだよ。俺の見立てでは確実にね。」
「………仮にそうだったとしても、それは単なる好奇心では?」
あーくんは今度、怪訝な眼差しで俺を見る。先程と違い、あーくんの瞳からはまるで穢れたものを見るかのように蔑んでいた。
「……少しお喋りが過ぎたようですね。」
あーくんは屋上のドアを視線に向けば、ガチャリとドアが開く。あーくんは即座に俺から離れて、気配を消した。
俺らに馴染みのない奴等が屋上に入ってきて、数分後に学生寮に戻っていく。
「それでは、僕もこれで失礼しますよ。"神無月君"」
奴等が出ていったことを確認したあーくんは、ついてくように屋上のドアを触れてガチャリと学生寮に戻って行った。
「また明日、"千夜葵君"」
俺もあーくんを見送って、学校の時の呼び名を呼ぶ。
そして再び、寝転がって夜空を見上げる。先程曇りかかってた空が完全に星空に変わっていた。
それは今の俺の気持ちを表してるかのように……____
「…………あっ、あーくんにスピカ先輩の部屋番号聞くの忘れてた。」
ふと俺は後から思い出したが、ま、誰かに聞けば分かるかと落胆的に考え、星空を見上げたのだった。
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