乙サポ ー乙女ゲームで主人公をサポートする男装女子に転生したー

紅千智

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第3章:第1節

俺様と女たらしのそれぞれの心境

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スピカが失踪して二週間____


507号室の自分の部屋にて、不機嫌オーラを纏う。


「くそッ!!」


俺は苛立ちを露わにして、拳でバンッと壁を殴る。壁に掛けられていた制服が殴った拍子にガタッと床に落ちる。



(スピカが居なくなって二週間経ってるのに、未だに手掛かりがねぇとかありえねぇだろう!)


床に落ちた制服に目もくれず、歯を噛み締めて途方に暮れているとコンコンと玄関からノックの音が聞こえてくる。


俺はすかさず自分の部屋を出て、大股で歩きながらリビングを通過して玄関のドアを開ける。


「香月先輩♪」
「…………気のせいか。」



そこには神無月が目に入るが、スピカの失踪より神無月の行動に怒りを通り越して呆れていた俺は見なかったことにして即座に玄関のドアを閉めようとした。が、ドアに神無月の足が挟まり閉めることが出来ない。


「ちょっ、何閉めようとしてるんすか!?俺、話があるんすけど!」
「どうせ、ロクでもねぇことだろう!」
「そんなこと、言っていいんすか!?スピカ先輩の居場所を、分かったんで教えようと…………ウワッ!?」


神無月からスピカの居場所が分かると聞いた俺は、抑えていたドアを手から離す。その際に必死にドアをこじ開けていた神無月は俺が手を離したことにより体がよろけて、床にドサッと尻もちをつく。


「イタタタ…………いきなり手を離さないで下さいよ!」
「…………中に入って詳しく教えろ!!」
「香月先輩………もうちょっと、俺に労ってほしいっす。」


神無月は腰を抑えながら立ち上がり、507号室に招き入れる。リビングに移動して互いの顔が見える位置にしゃがみ込んだ。


「……んと、居場所を言う前に言っておきたいことがあるっす」
「何だ?」
「香月先輩……スピカ先輩の事、どう思ってるんすか?」


神無月に言われた俺は一瞬、脳裏にスピカを浮かび上がる。あいつの色んな表情がコロコロ変わっていき、声を聞くだけで居心地がいいと心の中で俺はそう思い始める。



「……どうとは何だ?」


ただ、スピカ以外の野郎と楽しく話す所を見てたら無性にイライラしている自分がいた。これが何か分からない。


「____それ、分かってて聞いてるんすか?」
「んなわけねぇだろう。」



神無月は胡座をかいて真剣な表情で俺を見る。神無月がこういう顔をする時は、ふざけているのではなく本気(マジ)の話や質問をする。


「……____分からねぇから言ってるんだ。」


表面上はチャラチャラしていて頼りないように見えるが、相手をよく見ており何かと鋭い。もしかしたらこいつが一番観察力があるんじゃないかと俺はそう思い始める。



「……ふーん」


それでも神無月は納得いかない表情を浮かべて、俺を見据える。そしていつも通りのちゃっかりした表情に戻ってニヤリと口元をあげる。



「ま、分からないなら俺がスピカ先輩を貰いますけど。」
「…………神無月、なんでそうなるんだよ。」


ニヤけた顔で挑発する神無月に俺は、剣幕な表情を浮かび神無月を睨み付ける。


「分からないんすよね?それって肯定でもなく否定でもないってことっすよ!」
「………………」
「俺に無言で威圧かけても無駄っすよ。桃ちゃん先輩と違って、怖くないっすから!」


何故かは知らねぇが、俺の中に目の前にいる神無月に対する対抗心が芽生え始めて眉をますます寄せていた。こいつだけは…こいつだけでなく、他の男もスピカに絶対渡さねぇ、と。



「……っ」


(なんで俺はそう、思ったんだ…………?)


俺は今の心境に戸惑い、動揺する。この気持ちはなんなのか、俺は既に知っている。だけど心の中でも俺は素直になれずにいて、俺自身に問いかけていた。


「……先輩?」


神無月が目を細めて俺に見据える。


「……んなことより、居場所分かったんだろう?」
「んまぁ、そうっすね。」


今思ったことを悟られないように俺は話を戻して神無月にスピカの居場所を教えるよう促した。


※※※※※※※※※※



数十分後、香月先輩の部屋を後にして俺は209号室へと向かっていた。


(……あれは分かってるっすね。)


さっきの香月先輩の表情を思い浮かべ俺は、ムスッと不機嫌顔にして眉を寄せる。
 


(分かってるくせに分からないフリをしてる。ありゃ、大事な時には言わないタイプっすね。)


香月先輩は気付いてないかもしれないけど、いつもスピカ先輩を見る目は熱がこもってる。ありゃどう見たって男の目をしていて、女好きの俺でも一目瞭然だ。本当に分かりやすい。


(全く、どっちもどっちっすよ…………)


学生寮の通路を通りながらハァーとため息を吐く。


(それより居場所は分かったけど、相当強い結界張ってるみたいだから入ることが出来ない。)


俺は歩きながら顎に手を置いて考える仕草をする。女好きの俺でもここまで考えることはなかった。多分、スピカ先輩だから俺は真剣になれるかもしれない。


(一応、香月先輩には"彼奴ら"のこと教えたけど、同時に厄介なんだよな。)


俺は難しい表情を浮かべていると、209号室にたどり着く。玄関のドアを開けてリビングを通って自分の部屋に入り、椅子に座って机の横に掛けている鞄を取ってノートパソコンを取り出す。


カタカタッとキーボードを操作して検索するとノートパソコンの画面には栖蘭学園の名簿が表示される。その中に夢音と言う苗字が目に入り、そのうちの一人にクリックする。


(特にこいつ……夢音カルマは要注意だ!)


今年の十月辺りに転校してくる予定でそのうちの一人…夢音カルマは、俺らにとってとても厄介な人物。なんでも薬品マニアという変わり者で薬品以外に関しては興味を示さない。が、薬品以外に興味を示すことがあるらしく、場合によっては人体実験をさせられることがあるという噂が流れている。


(まず間違いなくこいつ、スピカ先輩に興味を示す!)


俺は知っているから。香月先輩でさえ知らない、スピカ先輩のもう一つの秘密を………


(でも今は、こいつらをこの栖蘭学園に来るのを待つしかない!)



強い結界に張られているため、無闇に近づくことが出来ない。


(あと二週間………長く感じるけど辛抱だ。)


俺は机の上に拳をギュッと握りしめる。俺の部屋から見える夜空には俺の心境がそうであるように少し曇り空になっていた。



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