乙サポ ー乙女ゲームで主人公をサポートする男装女子に転生したー

紅千智

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第3章:第3節

その声を聞いて無意識な気持ちを隠す

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数分後、柳原駅に電車が到着したのですぐに車内に乗車する。乗車してから三十分、多留兎駅に到着する。


駅内に入って改札口を出ると、黒とカーキを纏うレトロ風ゴシックパンクの姿をしたショウさんが多留兎駅の出入り口付近にて寄りかかっていた。


(駅内にいる皆より服装が一段、目立ってる。)


駅内に往き来する人々の服装はスーツや私服姿が多いが、多留兎街は若者向けの街でもある為、V系とゴスロリ系ファッションをする人も多く、このホームを往き来することがある。


ショウさんの私服は営業してる時と同じく、V系ファッション__主にゴスパンやカーキ色の服装に取り入れている__をしているのだが、【MARGIN FRAME】のオーナーで成せることなのか、私の横に往き来するV系ファッションの人々とショウさんでは比べものにならない。


____と言うより、ショウさんから放っているオーラが一段と違うからだ。


私は直ぐさま、出入り口付近にいるショウさんに歩み寄る。


「ショウさん、早いですね!」
「待ち合わせ時間より早くくるのが、俺のモットーだよ。」


私の声に気づいたショウさんは、寄り掛かっていた体を私のところに歩み寄る。ふと私の服装に気付いたショウさんは歓喜の声を溢してじっくりと見る。



「スーちゃんのゴシックファッション、凄く似合ってるよ!」
「あ、ありがとうございます。」


自分の服装を褒められた私は照れ隠しで顔を俯き、仄かに赤めた。



「乗り換えまで時間あるから、この近くで軽めの朝御飯を食べに行こうと思っているんだけど、スーちゃんはご飯食べてきた?」
「いいえ、この服装とメイクで時間消費して朝御飯はまだ済ませてません。」
「だろうね。特にメイクは凄く力入れてる。」




ショウさんは愉しげな表情でハハッと笑う。



「ここら辺にさ、最近オープンしたばかりのカフェがあるからそこに行こう。トーストやサンドイッチの軽めの食事は勿論、ケーキやクッキーのデザートがあるんだ。」
「ショウさんはそのお店に行ったことがあるんですか?」



ショウさんは歩きながら右側の通路に通って行く。私もショウさんの横に歩いて聞いていく。



「あるけど男一人じゃキツイ。なんせ、女性やカップルに人気のお店だからさ。内装もどちらかと言うと女性向けなんだ。」



苦笑を浮かべて少し渇いた声でハハッと笑う。ショウさんの服装を考えたら一段と目立つのは間違いない。


「凄い勇気ですね。女性達からの視線、キツかったじゃないですか?」
「凄くキツかったよ。俺こういうファッションしてるからさ、めっちゃ視線を感じた。お掛けで食べづらかった。」


ショウさんの話を聞いて私は女性達に見られているショウさんを想像する。自分も誰かの視線を感じながら何かをするのはやり辛い。


と言ってもショウさんの場合は、ショウさんの美形に魅入られてる女性達からの熱い視線だろう。モテる人も苦労するようだ。



「スピカ………?」


ふと遠くから誰かの声が私の名前を呼ぶ。ヴァンパイアハンターの私は嗅覚も鋭いけど、聴覚も他の誰よりも遠く聴くことが出来る。



(あの声は………)



私はその声を聞いて、切なさに胸が突き上げられる。一瞬困惑な表情を浮かべるが、ショウさんに気付かれないように平静を装う。勿論、その声の主は誰かは分かっていた。後ろからその視線を感じながら…………




「……ショウさん、そのお店に早く行きましょうか。」


けれど私はその声を聞かなかったことにして、パッと和かな表情へと切り替えてショウさんに問いかける。


スピカと呼ばれてもその声は後ろから聞こえたので顔は見えてないはず。それに藤野スピカはセミロングであり、今の私の姿は完全なロングだ。胸椎の真ん中辺りの長さはある。


「そうだね。電車の乗り換えもしないといけないから朝御飯を済ませようか。」



ショウさんは空いてる私の右手を繋いで、歩いていく。私は一瞬驚いたが、逸れないように手を繋いでくれてるのかなと心の中でしんみりと思う。


(こういうのって、親子だったり友達だったり……好きな人にもするんだよね。)



「スーちゃん、いきなり赤の他人の俺が言うのもアレなんだけど……」
「何ですか?」


ふとショウさんは立ち止まり、真面目な表情で私を見る。どうしたんだろうと私が首を傾げているとショウさんは、口を開く。



「……____自分の気持ちを蓋にするのは、かえって辛いだけだよ?」


視線を逸らすことなく真っ直ぐ私に見据えて、その声には憐憫が含まれていた。







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