乙サポ ー乙女ゲームで主人公をサポートする男装女子に転生したー

紅千智

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第3章:第3節

追跡者

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数時間後、私は街灯を照らす夜道にて神無月と二人で帰っていた。


ショウさんは言うと昼御飯を食べた後、【MARGIN FRAME】へと急いで赴いていた。今【MARGIN FRAME】には、誰もいない__店の番を頼んでいた本人が私達に追跡していた__からだ。


「まさか兄貴と先輩が既に知り合いになってたなんて、流石の俺も想定外っす。」


神無月は腕を後ろに回して昼頃にて起きた出来事を思い出していた。


「……しかも、"スーちゃん"とか。由奈先輩みたいにあだ名で呼ばれているし、服装もなんか気合い入ってるし。………それに俺と兄貴の時の態度が違いますし?」


何故かは分からないが、神無月の声には不満げな言い方だ。私は凍り付くような声で神無月に問いかける。


「……なんでそんな不満げな言い方なの?」
「何言ってんすか?俺、別に不満じゃないっすけど。」


そう言いながらも少し拗ねた顔で私を見据えて苛立ちを見せる。


____完全に不機嫌じゃないか。


私は神無月の苛立つ態度を見て心の中で呆れ返る。


「それより先輩、時を遡って一つ質問していいっすか?」
「随分突拍子だね、"時を遡って"とか。前から気になってたことがあるの?」
「……ありますよ、大アリで!」


先程の不満げな表情は何処へやら、神無月の表情が真剣な表情へと変わっていく。私を見る金色の瞳は水面のように静かでこういう時の神無月は、確信あるいはそれに近いものを持って尋ねるのだ。


「先輩って……」


神無月が言葉を言いかけて、急に険しい表情を見せて眉を顰める。どうしたんだろうと訝しげな表情で首を傾げると、いきなり私の腕を掴んだ。そして掴んだ腕は神無月の胸板へと寄せられる。


「えっ?ちょっ!?何す____」
「……静かに聞いてください。」


突然の行動に私は困惑して体を引こうとしたがそれを叶わず、私の腰に手を回され、私が次の言葉が終わらないうちに人差し指で止められる。そして神無月が顔を近づけこっそりと耳打ちをした。


「……____誰かが俺らの跡をつけてます。」


一瞬冗談かと思っていたが、誰かの視線に気付いた私は眉を顰める。


「……この気配、人間ではなさそうね。」
「俺らの知ってる奴でもないみたいっす」


私達がいる場所から数メートル先にある電柱の上に人影が浮かび上がって、影の向きは私達が歩いている方へと伸びている。


「ここだとマズイんで、人気のないところに移動しましょう」
「奇遇ね。私も同じことを考えてた。」


小声で喋りながら私と神無月は抱きついた体を引いて、再び歩き始めた。


※※※※※※※※※※



暫くして人気のない場所へと移動した私達は、追跡者以外誰もいないことを確認する。そして目で交わした後ピタリと立ち止まる。


「さて…………コソコソと俺らの跡をつくのやめて、堂々出てきたらどうです?」


神無月は大人びた口調で後ろにいるであろう追跡者に問いかける。
すると後ろからピューと風を起こしてサッと飛び降りる音が聞こえてくる。そして追跡者がアスファルトに足を着いたことを確認して、後ろを振り返った。


私はその追跡者の顔を見て、警戒心を強めた。何故なら、私にとってその追跡者は知ってる人物だったから。


「……ほう。兄より気配を察知するのが早いようだな。」



その男は悪巧みの顔を浮かべて、神無月に目を向ける。


「その言い方あんた、兄貴の知り合い?」


私を庇うように前に出た神無月は目を細めて、男に威嚇するように睨み返した。


「そうだ。だからそう警戒するな。」
「……兄貴の知り合いだと言われて、ハイそうですかと言うと思ってんの?これでも俺、常識あるから」


そう言いながらも男の顔は半笑いのままで、警戒心を解くはずもなく神無月は眉を顰める。


ふと男は私にチラッと視線を向けて目が合う。


「ほう…………」


男は物珍しそうに目を細めて__目が濁って不気味な光を湛えて__私を見る。私は男の視線が凄く不愉快だと感じたので凍り付くような眼差しで睨み付けた。


「………成る程、な」


男は何かを納得したかのようにニヤリと悪巧みの笑みを浮かべる。この男から感じるものは憎悪しかない。その笑みを見た私はゾクリと戦慄が走った。


「私はジェレマイア。君の兄に私の名前を言えば分かるはずだ。」


そう言って追跡者…ジェレマイアは神無月に目を向けて名を名乗る。


「"面白いものを見れたから"私はこれで失礼する。」


そして愉しみが含む声でジェレマイアは背を向けて、夜風に靡く髪を揺れながら暗い夜道へと去って行く。


「……なんなんすか、あいつ。」


神無月は納得いかない表情でジェレマイアの背中を見届ける。人気のないこの場所で、昨日より冷たい夜風によって木々が鳴り出し、私達の体を吹き抜けていた。




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