RYANGA-リャンガ・【俺の性格上それは無理!!】

錬寧想 リンロ

文字の大きさ
21 / 26
第一章:リャンガとして

第十七話:冒テントイ録脱走日・トゥーチョの作戦

しおりを挟む
 トゥーチョが冒テントイ録にやってきてから約一ヶ月が過ぎた夜。遂に命綱だった賞味期限切れのお菓子が底を尽きた─────

 厳かな雰囲気が漂う中、ショーケースの上で足を組み座るロコイサ王が見下ろすのは石床の上で左片膝ひだりかたひざを着いていたトゥーチョ。

 「大変お待たせしてしまい申し訳がございませんっチョッ! ロコイサ王様っ!」

 そうは言ってロコイサ王を見上げるトゥーチョの面持ちは、謝っている者とは思えぬ程に生き生きとしていた。

 「良い……別に構わぬ。してお主のその顔の自信の満ち溢れよう……少々期待しても良さそうだな」

 「はいっバッチリ問題ありませんっチョ! ロコイサ王様にこの約一ヶ月という猶予ゆうよを頂いたお陰でこの店の今期のだいたいの流れを把握はあくすることができましたっチョ。そして今回……作戦はその中で見つけた一番隙をつけそうな新発売の玩具の入荷時、そこを狙って明日作戦を実行致したいと考えておりますっチョ。
 急時ではありますっチョが食糧切れのこともありますので明日のタイミングが万全を期した状態で挑める最後の機会になりますっチョ。ですので大変申し訳がございませんっチョがロコイサ王様、どうかご了承を頂きたく願いますっチョッ!!」

 石床に頭を付きトゥーチョが頼み込むと、ロコイサ王は考える間もなく顔色ひとつ変えずに言葉を返した。

 「我はお主の才気を図りたいがゆえに機会を与えたのだ、無論止めるつもりはない。お主が思うように好きにやってみせよ。我はそれに付き合おう」

 グッ

 ロコイサ王からの承諾を得たトゥーチョは感謝の気持ちを込め、更に強く石床へ頭を押し付け石床にわずかにヒビを入れた。

 「御承諾ごしょうだく頂き感謝の限りですっチョッ!! 
 チョれでは早速ではございますがロコイサ王様、これよりご説明の方へと移らせて頂ければと思いますっチョ──────────────」


──────────────────────────────────────────────────────────
─────────────────────────────



 トゥーチョの作戦説明会が終わり、迎えた翌日早朝───────────


 ピー ピー ピー ピー


 冒テントイ録の外で本日入荷する玩具を積んだ荷車が駐まる音が鳴ると、その音を聞きつけたモチャオーチが一度シャッターを開けに店へと出てきた。

 ガラガラガラガラ

 シャッターを開け終えたモチャオーチは印鑑など必要な物を取りに再び家屋へと戻って行く。

 「今ですっチョ~っ!!」

 トゥーチョの気合いの入った小さな合図で早急に外に飛び出した二人。勿論そのまま逃げ切ることは不可能だと学んでいた彼らは昨晩の打ち合わせ通りに荷車の方へ向かって走って行く。

 ばんっ

 扉を閉め運転席から姿を現したのは全身黄色い作業着に中肉中背の身を包んだ人相の良い黒髪ショートの二十代後半の男。配送員はそのまま荷台へと回り荷物を下ろしに取り掛かる。

 「モチャオ~チさ~んっおはよ~ございま~っほにゃへぇ~~んっ」

 元からフニャフニャとしていた彼の声で発せられていた挨拶だが、何故かそのまま原形を留めることなく体のバランスとともによれていき。

 ボスンっ

 と配送員は前のめりに柔らかい材質のダンボールの上へと倒れ込んだ。倒れた配送員の背後からドヤ顔で姿を見せたのは、ダンボール片手に立つトゥーチョだった。

 【昨晩のトゥーチョの作戦説明─その1】
 『(まずは運びに来た配送員にオレがこの【当たり心地良すぎて癒失神いやしっしんしちゃうふかふかダンボール】で一発かまして失神させますっチョ─────)』

 それから間髪入れずに気絶した配送員をウーポシュックスでダンボールへと変えたトゥーチョは、そのダンボールを両手で抱え上げ自身は次の行動に移るべく計画通りロコイサ王にパスを繋げた。

 ぱッ

 「ロコイサ王様っ、お願い致しますっチョッ!」

 ゴべしーーんッッ!! 

 トゥーチョから出されたパスは無情にもロコイサ王の反射的に出された拳によりぎ払われ、そのまま荷車の荷台へと弾き飛ばされた。

 「焦るでないっ! トゥーチョよっ! お主が手を滑らせたがためにダンボールが我の方へと飛んできたではないかァっ!!」

 「─────ッ!? ……チョ……えっ? いやっ……チョれはっ……」

 それ以上は口に出すことはなかったトゥーチョだったが彼の内心は、 
 
 (チョえぇぇえぇぇーーーーッ!? 昨日100チョー%確認しましたっチョよねぇーーーーッ!?)

 だった。  

 青ざめ言葉を失い固まっていたトゥーチョを見て、それを落ち着いたと判断したロコイサ王は。

 「よし落ち着きを取り戻したようだな。ここからはその状態を維持したままで事を進めていくがよい。さて……ほれっ、我に配送員を差し出すのではなかったか? 早うするのだっ」

 断じて今のが配送員でしたとは言えなかったトゥーチョは。

 「…………配送員はいなくなりましたっチョ」

 「……そうか。それはつまり、我の任が一つ減ったということか…………ことッ!!」
 
 【昨晩のトゥーチョの作戦説明─その2】 
 『(次に2WCCが店に出てくる前に急いでオレが配送員をダンボールに変えてロコイサ王様にパス致しますので、トラックの後ろに隠して下さいっチョ)』
 
 ガラガラガラ 

 モチャオーチが硝子ドアを開け再び店へと出てきた。

 「おはよう~今日も朝早くからありがとうね~……おや?」
 
 【昨晩のトゥーチョの作戦説明─その3】
 『(そしてヤツが再び店の外に出てきた時っ! ヤツの目の前にはダンボールの壁が立ちはだかっていますっチョっ!)』

 モチャオーチの目前には彼の背丈の倍程の高さでピラミッド状に積み上げられたダンボールの壁が3重に置かれ、更にその手前には二つのダンボールが横並びに置かれていた。

 タ タ タ

 動揺しつつもゆっくりと足を進めていき、モチャオーチは二つのダンボールの前で止まった。困惑しどうしたらいいか分からず立ち止まっているモチャオーチに壁の向こうから指示が出される。

 「ダブ……モチャオーチさんっ、すいませんが目の前の二つのダンボールを開けてみてもらえませんか?」

 配送員を装ったトゥーチョのチョ抜き言葉で出された指示にモチャオーチは、何も聞かずに言われた通りに二つのダンボールを開ける。

 「おや? 中身が空っぽだね……いやしかしこっちにはちゃんと入っているね。これは一体……」

 「お目にして頂いた通りの状況です。自分も荷下ろしの際に先程初めて気付きました。モチャオーチさん……この度は多大なるご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳がございませんッ!! お客様にプライベート事情をお話するなどご無礼極まりなく非常に申し上げ難いのですがこの状況は恐らく、昨日理不尽な言い掛かりを付けてきて喧嘩になった自分のスーパーカラハラ上司の仕業です。本来出荷予定だったものに嫌がらせで沢山の空箱を混ぜ込まれてしまいこのような状況なってしまいました、本当に申し訳がございませんッ!!」

 「そうだったのかい……君も大変だねぇ~。まぁそういうことなら、微力ながら私にも手伝わせてくれないかい? 君にはいつもお世話になっているからね」

 「ありがとうございますっ!!」

 ────────

 直後3重に積み上げられたダンボールの壁の一層目が一瞬にして消え去っていた──────

 「空空空空有空空空空空有空有空空空空有空空空空有─────────」

 「チョッ!? チョッ、まだまだいっぱいあるのですが御言葉に甘えてもっと頼ませて頂いても大丈夫ですか~~~~ッ!?」

 「勿論いいですよぉぉぉおぉぉ~~~~っ!!」

 「チョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョチョ────────────」

 バババババババババババババババババババババババババ
バババババババババババババババババババババババババ────────────

 死に物狂いでダンボールを生成しまくるトゥーチョとそれを余裕の表情で開封していくモチャオーチ。
 
 (まずいッチョッ!! 想定外に手捌きが早すぎるッチョ!! 逃げる隙が全くないッチョ!! チョあ~~~~ッ、こうなったらもうしょうがないっチョッ。ロコイサ王様だけでもッ!!)

 「ロコイサ王様っ! 申し訳がございませんっチョがっ……オレはっ……どうやらここまでのようですッチョ!! ですのでオレを置いて今の内に早くお逃げ下さいッチョッ!!!!」

 そう言ってトゥーチョが必死な顔を向けた先。虚しくもそこではロコイサ王と見知らぬ幼い少年の木の枝で突き合う決闘が繰り広げられていた─────────────
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完】はしたないですけど言わせてください……ざまぁみろ!

咲貴
恋愛
招かれてもいないお茶会に現れた妹。 あぁ、貴女が着ているドレスは……。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...