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「旦那様っ…!」
メイドが変えたばかりのシーツは、カトリーナの身体が簡単に沈んでいった。
「…なんだ?」
「な、なにを…」
「なに?…確かめると言っただろう。まさか、何をするか分からないわけではあるまい」
分かっております。分かっております、けれど。
何年もずっと放置されていたものですから、私では反応しないのだと思っていたのに。
「ひゃっ!?」
ドレスの紐を解かれ、コルセットの紐にまでアルベルトの手が伸びる。
「あ、あの…」
「…今度はなんだ?」
不機嫌そうな問いかけが返ってくる。けれど言わずにはいられない。
「も、もう朝ですので…」
「だから何だと言うのだ!」
アルベルトの怒鳴り声に身をすくませる。けれど、こんなのは嫌だ。自分勝手にもそう思ってしまった。
「…もしも」
いけないと分かりながら、挑発してしまう。でないと自分の身が危ない。この歳でこんなことを言っている場合でないのは分かっているけれど、怖いのだ。
この血気が盛んなこの人に今、抱かれることが。
「もしも、私が旦那様の望む答えを持っていなかったときは、私を追い出しますか」
旦那様が何を望んでいるか。それはきっと、正妻である私が貞淑な妻であることだろう。
「…なに?」
「お答えください。私を、この邸から追い出されますか?」
その問いかけに、アルベルトは醜く鼻で笑った。
「まさか」
「では、」
「もしもその時はあの男を引き摺ってきて、お前の目の前で首を切り落としてやる。そしてお前はーーそうだな、永遠に地下室にでも放り込んでやる」
そして、とアルベルトが続ける。
「一生、俺だけがお前を愛してやる…」
その言葉に身動きが出来なくなる。
愛してやる?そんなにも簡単に、私を愛せるのだろうか。長年私を嫌っていたこの人が。
「…私を愛すことなど出来ないでしょう」
「どういう意味だ」
「旦那様は私を愛していないでしょう…」
「……誰がそんなことを言った?」
「え……」
分からない。旦那様が何を考えているのか。
「愛しているーー。…もしもお前が処女でなければ、相手はあの男しかいないだろう?許すわけがないだろう、あの男も……お前も」
「…私を、愛しているとおっしゃるのですか」
話しかけても返事も返してもらえない。挨拶もろくにさせてもらえない。それが私にとって、どれだけ辛かったか。
「あぁ、そうだ」
けれどそんな思いも吹き飛ぶほど、嬉しいのだ。喜んでいる場合ではないというのに。
「…では、気の行くまでお確かめになってください」
***
「ーーおい」
卑猥な水音と共に、アルベルトの低い声が暗い寝室に響く。
「は、い…っ?」
耳を塞ぎたくなる音だったけれど、カトリーナの両手はアルベルトの右手で押さえつけられていた。
「お前、…どっちだ…?」
「ーーえ…あの、」
「っ……もういい、挿れるぞ」
「あっ!?」
息が詰まるような感覚に襲われる。
「ぁ…あ、旦那…様っ…、」
「ーー初めて…か…」
息が出来なくて虚ろな瞳になったカトリーナに、アルベルトがこれ以上ないほどのキスを振りかける。
「カトリーナ…」
痛くて堪らなくなり、カトリーナは逃げようとする。けれどその度にアルベルトが追いかけてきて、結局痛いままだ。
「痛、ぃ…!」
空気を吸え、というアルベルトも実際は吸う暇もなく、カトリーナの口を貪りついている。
「…愛している、カトリーナ…」
「旦那、様…」
予想以上の激痛と、甘い言葉の連鎖。
それに耐えきれずカトリーナが気を失ったのは、そのすぐの後だった。
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