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第1部 第35話
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着いた・・・
馬車に長々と揺られてきた牧草地帯。
着いた先は、草原広がる大地。
途中の道から、民家も少なくなり、色々と不安に思っていたけれど。
「あれー、民家が、ほとんどないですねぇ?」
ラドが額に手を当てて、わざとらしく遠くを見渡す仕草を見せる。
「いや、でも、エディさんからの資料にも小さな集落があると書かれているけれど・・」
アッシュも少し焦りが出てしまい、額に汗が浮かぶ。
「集落ねぇ?」
辺りを見渡すが、やはり、民家は見られない。
「とりあえず、もう少し先にある、ケーシー一族が運営する酪農家に行くしかないかな・・・」
仕方なしに、再び、馬車に乗り込むアッシュたち。
それから暫く道中を進むと、すると、大きな牛舎らしきものが見えてきた。
その牛舎が見えてから、民家の存在も確認できた。
「先程のとこは違ってたんでしょうかね?」
ラドも同じことを思った様で口にしてきた。
「うーん。いや、昔来た時は、あの辺りにも民家はあった気はするんだよ」
アッシュは、遠い記憶を手繰り寄せて考え込むが、昔過ぎておぼろげだ。
「まあでも、人が居てて、良かったですね」
そう、本来の目的は、「平民議員」の選挙に対してのお願いに来たのだ。
人がいないと、意味がない。
取り敢えず、安堵しつつ、この場での演説に向けての準備に取り掛かる。
アッシュたちは、まずは、演説を行う為のお立ち台づくりを行う。
それは、ハロルド商会が特注で制作したもので、ただの木箱と思いきや、その木箱を縦にも横にも並べ、それを付属の金具で繋ぐと、木箱同士が固定されるという仕組みだ。
例えば、木箱の数が多ければ多いほど大きなステージも作れる代物だ。
おまけに、木箱の中は収納もできるので、必要な備品も詰め込めれる素晴らしいものだ!
と言う事で、皆で木箱を並べて、金具で固定して出来た簡易お立ち台が完成した。
そのお立ち台づくりをしていると、うまい具合に人も集まる。
そう、この流れは、ここ最近よく見る光景である。
お立ち台づくりに興味が沸いた人が、そのまま足を止めて、アッシュたちの動きを見てくれる。
それが、やがて人だかりとなり、演説するには恰好のチャンス到来である。
今日もその見慣れてきた光景に、アッシュたちは互いに頷き合い、ここだと思った時に、宣伝用の紙を配る。
そう、今日も、「ここだ!」と思った時に、事務所の者たちにより紙を手にして配布をし出す。
そして、アッシュが完成したお立ち台にあがり、皆の視線を集めて語り出す。
そんな、いつもの流れで今日も行うハズだったが、ここの集落の者たちは皆、アッシュの事務所の者が手渡してきた紙を見るなり、ぐしゃりと紙を握り潰したのだった。
「えっ!」
アッシュの顔が描かれた紙がキツク握り潰されて、捨てられる様には、事務所の者が驚きの声を上げた。
「あらら・・」
ラドが、「さすがは、敵陣営の地ですね」と納得の様子を見せながら頷いている。
だが、アッシュの方はお立ち台に上がったまま、こちらは落ち込んでしまい言葉が出なくなってしまっていた。
「アッシュさん、ここまで来たんですから、気を取り直して、スマイルでいきましょう!」
そう、ラドからの励ましを受けて、アッシュもここは気持ちを切り替え、いつものように、まずは自己紹介を行いだそうとしたが、
「うるせーぞ!「平民議員」なんて、それ自体がいらねーんだよ!お前らは何もしてくれねーじゃねーか!」
「そうだ!、そうだ!」
「金はとるばっかで、この集落を住み辛くしやがって。隣の町のが良いとか言って、皆、いなくなったんだぞ!」
「俺らは、「平民議員」がいない方がいいんだ。その方が平和で暮らせるんだ!」
アッシュのお立ち台付近に僅かに残る人から怒号が上げられたのだった!
しかも、その内容には思わず、目を瞠るものがあった。
アッシュは、慌ててお立ち台から飛び降りて、その怒号を浴びせてきた人物の一人に駆け寄っていく。
相手の男は、急にアッシュに駆け寄られて驚き、固まっている。
「あのう、すみません。今の話はどういう事ですか?」
アッシュに詰め寄られた男はビビりながらも、アッシュの質問に答えようとした。
「な・・なんだよ!さっきのって、あれかよ。上納金のことかよ?」
男は怪訝な顔を浮かべながらも、この集落に根付く『上納金』のことを教えてくれた。
この集落には、代々、「平民議員」が排出される一族が営む酪農家がある。
彼ら一族が営む酪農が集落の柱となることから、集落の多くの人が、この一族が営む酪農に携わり、集落全体で支えているようだ。
しかし、この集落では、仕事以外でも、この一族、いや一族から排出される「平民議員」を支える為の掟たるものがあるようで、それの一つが『上納金』とした「平民議員」への支援金だそうだ。
初めは、集落から出る「平民議員」に皆が期待し、誇りにさえ思っていたから、皆が助け合う事に意義もなく、激励さえも込めて支援をしていたのだが、酪農業も既に伸び悩み、稼ぎも変わらないと言うのに、支援金は決まったように求められる。
しかも、ここ最近、物価上昇だとかと訳の解らない言葉で金額が吊り上がるばかり。
おまけに、支払えないとわかると、嫌がらせをされたりもあるらしく。
この集落から逃げて、隣の地などに移り住む者も後を絶たないという。
アッシュたちは、この話に物凄く驚いた。
「金を渡しても、この集落は何も変わらねぇ、道も整備されねぇし。物流もなかなか届かねぇ。ただ「平民議員」の一族の故郷って言葉があるだけだ。こんなんなら、俺らは「平民議員」はいらねぇーよ」
男は不貞腐れたように文句を言っている。
「酷い話ですね」
集落の男の話に、ラドがポツリと呟く。
本当にありえない話だ。アッシュは唇を噛みしめる。
「俺達は、「平民議員」なんかには期待しねぇ。それにあんたがいくら頑張ってもあいつらには勝てねえーよ」
男は、半ば諦めたように言い捨てる。
しかし、それにはアッシュが、今度は力を得たように男に逆に向き直る。
「いいや、ダメだ!負けたらダメだ!「平民議員」は故郷の為に尽くすものだ。それが故郷を苦しめているなんてあってはいけない。確かに、私自身も何が出来るのか、よくわからないけど。これはおかしい。この状況はやっぱりダメだ・・」
アッシュは拳を握りしめて、男に強い眼差しを送る。
このアッシュの言葉は、この男以外の集落の者にも聞こえたようで、皆、立ち止まり、下を向き口を噤んでいる。
「あんたが、変えるって言うのか?」
男は怪訝そうにアッシュを見ながら問い掛ける。
「変えれるかはわからない。というか、「平民議員」で何ができるのか、どこまでできるのかもわからないんだ。だけども、私なりにやれることはしたい」
アッシュは、苦笑いを浮かべながら、男の手を取った。
「それには、私だけの力では無理で協力が欲しい。良かったら、この集落で困っている事なども聞かせてほしい」
男は、アッシュの強い眼差しに当てられたようで、小さく頷いた。
そして、アッシュたちは、この男を中心に集落の者と交流をすることになったのだ。
しかし、温和な雰囲気とは別に、不穏な動きもまたあって・・・
「アッシュさん!ば・・馬車が、馬車の車輪が壊れています!」
そろそろ、この地ともお暇しようかと思い、荷物を片付けて帰り支度をと動き出した時、手伝い人の一人がアッシュの元へ駈け込んで来た。
彼の言葉に、アッシュとラドが驚き、馬車の確認の為に駆け付けると、馬車2台の車輪が壊れていた。
明らかに、作為的なものだとわかる壊れ方であった。
「あぁ、これは酷いですね」
車輪が、硬い石か何かで叩きつけられ、折られている。
「今日中に帰れますかねぇ」
ラドが呆れた声で呟くと、アッシュを含めた手伝い人の皆も大きく項垂れてしまった。
「取り敢えず、修理出来るとこを探そう!」
アッシュの声で、皆が我に返り、奔走するのだった。
馬車に長々と揺られてきた牧草地帯。
着いた先は、草原広がる大地。
途中の道から、民家も少なくなり、色々と不安に思っていたけれど。
「あれー、民家が、ほとんどないですねぇ?」
ラドが額に手を当てて、わざとらしく遠くを見渡す仕草を見せる。
「いや、でも、エディさんからの資料にも小さな集落があると書かれているけれど・・」
アッシュも少し焦りが出てしまい、額に汗が浮かぶ。
「集落ねぇ?」
辺りを見渡すが、やはり、民家は見られない。
「とりあえず、もう少し先にある、ケーシー一族が運営する酪農家に行くしかないかな・・・」
仕方なしに、再び、馬車に乗り込むアッシュたち。
それから暫く道中を進むと、すると、大きな牛舎らしきものが見えてきた。
その牛舎が見えてから、民家の存在も確認できた。
「先程のとこは違ってたんでしょうかね?」
ラドも同じことを思った様で口にしてきた。
「うーん。いや、昔来た時は、あの辺りにも民家はあった気はするんだよ」
アッシュは、遠い記憶を手繰り寄せて考え込むが、昔過ぎておぼろげだ。
「まあでも、人が居てて、良かったですね」
そう、本来の目的は、「平民議員」の選挙に対してのお願いに来たのだ。
人がいないと、意味がない。
取り敢えず、安堵しつつ、この場での演説に向けての準備に取り掛かる。
アッシュたちは、まずは、演説を行う為のお立ち台づくりを行う。
それは、ハロルド商会が特注で制作したもので、ただの木箱と思いきや、その木箱を縦にも横にも並べ、それを付属の金具で繋ぐと、木箱同士が固定されるという仕組みだ。
例えば、木箱の数が多ければ多いほど大きなステージも作れる代物だ。
おまけに、木箱の中は収納もできるので、必要な備品も詰め込めれる素晴らしいものだ!
と言う事で、皆で木箱を並べて、金具で固定して出来た簡易お立ち台が完成した。
そのお立ち台づくりをしていると、うまい具合に人も集まる。
そう、この流れは、ここ最近よく見る光景である。
お立ち台づくりに興味が沸いた人が、そのまま足を止めて、アッシュたちの動きを見てくれる。
それが、やがて人だかりとなり、演説するには恰好のチャンス到来である。
今日もその見慣れてきた光景に、アッシュたちは互いに頷き合い、ここだと思った時に、宣伝用の紙を配る。
そう、今日も、「ここだ!」と思った時に、事務所の者たちにより紙を手にして配布をし出す。
そして、アッシュが完成したお立ち台にあがり、皆の視線を集めて語り出す。
そんな、いつもの流れで今日も行うハズだったが、ここの集落の者たちは皆、アッシュの事務所の者が手渡してきた紙を見るなり、ぐしゃりと紙を握り潰したのだった。
「えっ!」
アッシュの顔が描かれた紙がキツク握り潰されて、捨てられる様には、事務所の者が驚きの声を上げた。
「あらら・・」
ラドが、「さすがは、敵陣営の地ですね」と納得の様子を見せながら頷いている。
だが、アッシュの方はお立ち台に上がったまま、こちらは落ち込んでしまい言葉が出なくなってしまっていた。
「アッシュさん、ここまで来たんですから、気を取り直して、スマイルでいきましょう!」
そう、ラドからの励ましを受けて、アッシュもここは気持ちを切り替え、いつものように、まずは自己紹介を行いだそうとしたが、
「うるせーぞ!「平民議員」なんて、それ自体がいらねーんだよ!お前らは何もしてくれねーじゃねーか!」
「そうだ!、そうだ!」
「金はとるばっかで、この集落を住み辛くしやがって。隣の町のが良いとか言って、皆、いなくなったんだぞ!」
「俺らは、「平民議員」がいない方がいいんだ。その方が平和で暮らせるんだ!」
アッシュのお立ち台付近に僅かに残る人から怒号が上げられたのだった!
しかも、その内容には思わず、目を瞠るものがあった。
アッシュは、慌ててお立ち台から飛び降りて、その怒号を浴びせてきた人物の一人に駆け寄っていく。
相手の男は、急にアッシュに駆け寄られて驚き、固まっている。
「あのう、すみません。今の話はどういう事ですか?」
アッシュに詰め寄られた男はビビりながらも、アッシュの質問に答えようとした。
「な・・なんだよ!さっきのって、あれかよ。上納金のことかよ?」
男は怪訝な顔を浮かべながらも、この集落に根付く『上納金』のことを教えてくれた。
この集落には、代々、「平民議員」が排出される一族が営む酪農家がある。
彼ら一族が営む酪農が集落の柱となることから、集落の多くの人が、この一族が営む酪農に携わり、集落全体で支えているようだ。
しかし、この集落では、仕事以外でも、この一族、いや一族から排出される「平民議員」を支える為の掟たるものがあるようで、それの一つが『上納金』とした「平民議員」への支援金だそうだ。
初めは、集落から出る「平民議員」に皆が期待し、誇りにさえ思っていたから、皆が助け合う事に意義もなく、激励さえも込めて支援をしていたのだが、酪農業も既に伸び悩み、稼ぎも変わらないと言うのに、支援金は決まったように求められる。
しかも、ここ最近、物価上昇だとかと訳の解らない言葉で金額が吊り上がるばかり。
おまけに、支払えないとわかると、嫌がらせをされたりもあるらしく。
この集落から逃げて、隣の地などに移り住む者も後を絶たないという。
アッシュたちは、この話に物凄く驚いた。
「金を渡しても、この集落は何も変わらねぇ、道も整備されねぇし。物流もなかなか届かねぇ。ただ「平民議員」の一族の故郷って言葉があるだけだ。こんなんなら、俺らは「平民議員」はいらねぇーよ」
男は不貞腐れたように文句を言っている。
「酷い話ですね」
集落の男の話に、ラドがポツリと呟く。
本当にありえない話だ。アッシュは唇を噛みしめる。
「俺達は、「平民議員」なんかには期待しねぇ。それにあんたがいくら頑張ってもあいつらには勝てねえーよ」
男は、半ば諦めたように言い捨てる。
しかし、それにはアッシュが、今度は力を得たように男に逆に向き直る。
「いいや、ダメだ!負けたらダメだ!「平民議員」は故郷の為に尽くすものだ。それが故郷を苦しめているなんてあってはいけない。確かに、私自身も何が出来るのか、よくわからないけど。これはおかしい。この状況はやっぱりダメだ・・」
アッシュは拳を握りしめて、男に強い眼差しを送る。
このアッシュの言葉は、この男以外の集落の者にも聞こえたようで、皆、立ち止まり、下を向き口を噤んでいる。
「あんたが、変えるって言うのか?」
男は怪訝そうにアッシュを見ながら問い掛ける。
「変えれるかはわからない。というか、「平民議員」で何ができるのか、どこまでできるのかもわからないんだ。だけども、私なりにやれることはしたい」
アッシュは、苦笑いを浮かべながら、男の手を取った。
「それには、私だけの力では無理で協力が欲しい。良かったら、この集落で困っている事なども聞かせてほしい」
男は、アッシュの強い眼差しに当てられたようで、小さく頷いた。
そして、アッシュたちは、この男を中心に集落の者と交流をすることになったのだ。
しかし、温和な雰囲気とは別に、不穏な動きもまたあって・・・
「アッシュさん!ば・・馬車が、馬車の車輪が壊れています!」
そろそろ、この地ともお暇しようかと思い、荷物を片付けて帰り支度をと動き出した時、手伝い人の一人がアッシュの元へ駈け込んで来た。
彼の言葉に、アッシュとラドが驚き、馬車の確認の為に駆け付けると、馬車2台の車輪が壊れていた。
明らかに、作為的なものだとわかる壊れ方であった。
「あぁ、これは酷いですね」
車輪が、硬い石か何かで叩きつけられ、折られている。
「今日中に帰れますかねぇ」
ラドが呆れた声で呟くと、アッシュを含めた手伝い人の皆も大きく項垂れてしまった。
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