36 / 78
第1部 第36話
しおりを挟む
あれから、馬車の車輪の修繕の為、皆が手分して手を貸してくれる人などを探したが、誰もアッシュたちへ手を貸す者はいなかった。
さっきまで、集落の人とも少し距離をつめれていただけに、この状況には、アッシュたちも肩を落としてしまった。
どうやら、誰かが集落の者とアッシュが距離を縮めたことで、アッシュと集落の者に対しての警告的な意味で、車輪の破壊をしたようだ。
今回の事件により集落の者は怯えてしまい、皆がまたアッシュを拒絶したのである。
こうなっては、この地の者に車輪の修理の協力は難しいと感じて、一同は、この集落に隣接する町へ修理部品を求め、また、今夜の宿も探しにいくことにしたのだった。
だが、その前に、壊れた馬車や荷物を預かって貰う人探しをしだすが、こちらも厳しい状況は変わりなくて・・・
今度は、集落にある駐屯騎士団の派出所を訪ねる事にしたのだった。
この集落は、トウの町の端にあたる事から、隣接した町との境界でのもめ事を視野にして、駐屯騎士団の派出所が置かれている。
なので、そこを頼り、一時預かりを申し出る事にしたのである。
だが、ここでも思わぬ態度で拒絶がされたのだった・・・公の機関であるにも拘らず。
「すみません。だから、本当に一晩で良いんですよ」
さっきから、アッシュは何度もこの言葉を騎士へ投げかけているが、騎士の方からは「いいや、ダメだ!」と断りの言葉しか返ってこずで、時間だけが空しく過ぎていくばかりだった。
しかし、もう後がないアッシュは何度断られても、負けじと彼らにしがみついていく。
「そこを何とか?」
お礼もするからと、頼むが、それには逆に悪い様に取られてしまう有様である。
「お礼?君は「平民議員」に立候補する身でありながら、俺に賄賂を渡すのか!」
騎士の言葉に、アッシュが逆に驚いてしまう。
「えっ!そんなことはないですよ。違いますから!」
慌ててアッシュも弁解しだすが、騎士はニヤリと笑いだして、尚も大声で言い続ける。
「最低だな!そんなことして、票を得ようとして。今までもそうやって来たんだろ!」
「そんなことしてません!やりませんよ!」
アッシュも言われてばかりではいられずに言い返すが、騎士の声量は大きく、アッシュの声はかき消される始末だ。
『まずいなぁ・・・』
アッシュは、状況の悪さに思案してみるが、追い込まれている身では名案が浮かばない。
『どうしよう・・・・』
考えれば、考える程、相手に隙を与えているのか、益々、分が悪い。
「あの、すみません。アッシュさん。お礼はこの様な状況を生むことになりますので、やはり差し控えましょう。ただ、こちらとしては、騎士の方にご協力を頂きたいだけなのですが」
アッシュが追い込まれてるのを助ける様に、ラドが、ここで漸く、口を挟んできた。
「なんだ!俺達はお前たちなんかに協力など出来んぞ!」
騎士は、偉そうな態度でラドに言い放つ。
「いや、そこを何とかお願いします。簡単なことなんです。ちょっと、今回、この地までの道のりが長くて、道中の寛ぎの為に菓子など用意してきたんですよ。それを持って、宿に行くのも荷物になるんで、処分したくて」
ラドはいつから用意していたのか、手伝い人に荷物を持たせて騎士の前に来させていた。
手伝い人がもつ荷物は、アッシュには見覚えのない物ばかりだ。
「菓子類が多いんですがね。王都で販売されてるものでね。日持ちもあまりしないんです。だから・・」
と、言いながら、騎士の目の前の机に、品を並べていく。
そこには、確かに王都で販売されているという、ハロルド商会の商品の菓子が並んでいく。
中には、煙草や酒類も並んでいて、アッシュも目を丸くした。
「こちらをここで処分、お願いしたいのですが?」
騎士はラドの美しい顔に呆けている。
「いいの、か?ほ、本当に捨てて・・」
ごくりと、騎士が唾を飲み込む音が聞こえた。
「ええ、お願いします。あと、お願いついでに、馬車も一晩預かって頂けると、尚、嬉しいんですがね?」
ラドは、とても綺麗な笑顔を騎士に見せたのだった。
「さっきは、その、助かったよ・・」
隣接する町に、手伝い人たちと共に徒歩で向かいながら、アッシュがポツリと呟く。
「いえいえ、私は、アッシュさんの秘書ですからね」
お気になさらずにと軽い言葉で、ラドはアッシュに向けていう。
「しかし、あの集落は酷いですね。搾取されまくりで」
ラドが呆れて、集落の者から聞いた話を思い出しながら話し出す。
さっきの騎士の様子からも、騎士自体もやつらに飼いならされているように見受けられる。
今回ラドが機転を利かせて、色々と小道具を用意してくれて、上手い具合に騎士を引き込んでくれたから良かったが、下手すりゃ、何泊もこの地で足止めされて、また、その間には、手汚い仕打ちを浴びせられていたかもしれないと思うと、本当に腹たたしい。
アッシュたちは今日一日行っただけで、こんな卑劣な行為を受け怒りが爆発しそうなのに、この集落では理不尽なことが頻繁にあるという。それでは、本来救いとなる「平民議員」が嫌われるのも無理はない。
おまけに・・・
「最近は、酪農事業を実質運営しているウラスの弟夫婦も追い込まれている話もありましたね」
ラドがまたポツリと話を再びし出す。
「そんな話もしていたな」
そう、ケーシー一族が営む酪農事業、社長と名乗っているのは、ケーシーの父、前「平民議員」のウラスだが、彼は名ばかりで、その運営は彼の弟が家業を引き継ぎ、懸命に営んでいるという。
ただ、そんな弟にも『上納金』と呼ばれるものを重く押し付けているようで、弟は資金繰りに頭を悩ませているようだ。
そして、それを強いているのは、どうやら彼らの叔父であるジムラルであると聞いた。
『なんて事だ!、寄りによって、公人の立場の人間が搾取側にいるなんてな!』
アッシュは再び、苛立ちを募らせていく。
「どんどん、「平民議員」の素性が見えてきましたね?」
「本当にな。何とかしないとな・・」
アッシュとラドが顔を見合わせて頷き合う。
今日は取り敢えず、車輪の換えを探してから、宿で一夜を過ごし、明日、朝早くに宿を出て車輪を交換してから、あの集落を出る。
アッシュたちはそう計画を立てて、予定通りに進められるように、それぞれが仕事をこなしていったのだった。
さっきまで、集落の人とも少し距離をつめれていただけに、この状況には、アッシュたちも肩を落としてしまった。
どうやら、誰かが集落の者とアッシュが距離を縮めたことで、アッシュと集落の者に対しての警告的な意味で、車輪の破壊をしたようだ。
今回の事件により集落の者は怯えてしまい、皆がまたアッシュを拒絶したのである。
こうなっては、この地の者に車輪の修理の協力は難しいと感じて、一同は、この集落に隣接する町へ修理部品を求め、また、今夜の宿も探しにいくことにしたのだった。
だが、その前に、壊れた馬車や荷物を預かって貰う人探しをしだすが、こちらも厳しい状況は変わりなくて・・・
今度は、集落にある駐屯騎士団の派出所を訪ねる事にしたのだった。
この集落は、トウの町の端にあたる事から、隣接した町との境界でのもめ事を視野にして、駐屯騎士団の派出所が置かれている。
なので、そこを頼り、一時預かりを申し出る事にしたのである。
だが、ここでも思わぬ態度で拒絶がされたのだった・・・公の機関であるにも拘らず。
「すみません。だから、本当に一晩で良いんですよ」
さっきから、アッシュは何度もこの言葉を騎士へ投げかけているが、騎士の方からは「いいや、ダメだ!」と断りの言葉しか返ってこずで、時間だけが空しく過ぎていくばかりだった。
しかし、もう後がないアッシュは何度断られても、負けじと彼らにしがみついていく。
「そこを何とか?」
お礼もするからと、頼むが、それには逆に悪い様に取られてしまう有様である。
「お礼?君は「平民議員」に立候補する身でありながら、俺に賄賂を渡すのか!」
騎士の言葉に、アッシュが逆に驚いてしまう。
「えっ!そんなことはないですよ。違いますから!」
慌ててアッシュも弁解しだすが、騎士はニヤリと笑いだして、尚も大声で言い続ける。
「最低だな!そんなことして、票を得ようとして。今までもそうやって来たんだろ!」
「そんなことしてません!やりませんよ!」
アッシュも言われてばかりではいられずに言い返すが、騎士の声量は大きく、アッシュの声はかき消される始末だ。
『まずいなぁ・・・』
アッシュは、状況の悪さに思案してみるが、追い込まれている身では名案が浮かばない。
『どうしよう・・・・』
考えれば、考える程、相手に隙を与えているのか、益々、分が悪い。
「あの、すみません。アッシュさん。お礼はこの様な状況を生むことになりますので、やはり差し控えましょう。ただ、こちらとしては、騎士の方にご協力を頂きたいだけなのですが」
アッシュが追い込まれてるのを助ける様に、ラドが、ここで漸く、口を挟んできた。
「なんだ!俺達はお前たちなんかに協力など出来んぞ!」
騎士は、偉そうな態度でラドに言い放つ。
「いや、そこを何とかお願いします。簡単なことなんです。ちょっと、今回、この地までの道のりが長くて、道中の寛ぎの為に菓子など用意してきたんですよ。それを持って、宿に行くのも荷物になるんで、処分したくて」
ラドはいつから用意していたのか、手伝い人に荷物を持たせて騎士の前に来させていた。
手伝い人がもつ荷物は、アッシュには見覚えのない物ばかりだ。
「菓子類が多いんですがね。王都で販売されてるものでね。日持ちもあまりしないんです。だから・・」
と、言いながら、騎士の目の前の机に、品を並べていく。
そこには、確かに王都で販売されているという、ハロルド商会の商品の菓子が並んでいく。
中には、煙草や酒類も並んでいて、アッシュも目を丸くした。
「こちらをここで処分、お願いしたいのですが?」
騎士はラドの美しい顔に呆けている。
「いいの、か?ほ、本当に捨てて・・」
ごくりと、騎士が唾を飲み込む音が聞こえた。
「ええ、お願いします。あと、お願いついでに、馬車も一晩預かって頂けると、尚、嬉しいんですがね?」
ラドは、とても綺麗な笑顔を騎士に見せたのだった。
「さっきは、その、助かったよ・・」
隣接する町に、手伝い人たちと共に徒歩で向かいながら、アッシュがポツリと呟く。
「いえいえ、私は、アッシュさんの秘書ですからね」
お気になさらずにと軽い言葉で、ラドはアッシュに向けていう。
「しかし、あの集落は酷いですね。搾取されまくりで」
ラドが呆れて、集落の者から聞いた話を思い出しながら話し出す。
さっきの騎士の様子からも、騎士自体もやつらに飼いならされているように見受けられる。
今回ラドが機転を利かせて、色々と小道具を用意してくれて、上手い具合に騎士を引き込んでくれたから良かったが、下手すりゃ、何泊もこの地で足止めされて、また、その間には、手汚い仕打ちを浴びせられていたかもしれないと思うと、本当に腹たたしい。
アッシュたちは今日一日行っただけで、こんな卑劣な行為を受け怒りが爆発しそうなのに、この集落では理不尽なことが頻繁にあるという。それでは、本来救いとなる「平民議員」が嫌われるのも無理はない。
おまけに・・・
「最近は、酪農事業を実質運営しているウラスの弟夫婦も追い込まれている話もありましたね」
ラドがまたポツリと話を再びし出す。
「そんな話もしていたな」
そう、ケーシー一族が営む酪農事業、社長と名乗っているのは、ケーシーの父、前「平民議員」のウラスだが、彼は名ばかりで、その運営は彼の弟が家業を引き継ぎ、懸命に営んでいるという。
ただ、そんな弟にも『上納金』と呼ばれるものを重く押し付けているようで、弟は資金繰りに頭を悩ませているようだ。
そして、それを強いているのは、どうやら彼らの叔父であるジムラルであると聞いた。
『なんて事だ!、寄りによって、公人の立場の人間が搾取側にいるなんてな!』
アッシュは再び、苛立ちを募らせていく。
「どんどん、「平民議員」の素性が見えてきましたね?」
「本当にな。何とかしないとな・・」
アッシュとラドが顔を見合わせて頷き合う。
今日は取り敢えず、車輪の換えを探してから、宿で一夜を過ごし、明日、朝早くに宿を出て車輪を交換してから、あの集落を出る。
アッシュたちはそう計画を立てて、予定通りに進められるように、それぞれが仕事をこなしていったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる