<第一部 完結> お前がなれるわけがない!

mokono

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第1部 第44部

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サンテに届けられた『督促状』は、他の事業主にも届けられていた。



その異常事態は、勿論、ハロルド商会のエディたちの耳にも届いていた。



「うちの下請けにも、例の『督促状』が来ていたみたいだ」



カルロが、どこからか入手した『督促状』を手にして、エディがいる執務室へ駈け込んで来たのだ。



「役場では、昨日から、所長もいないのに、町民への税金の納付期限が変更されたと言って、追加徴税を言い出してるみたいだ」



『督促状』の用紙を入手すると同時に、カルロは、どうやら、町で起きているも騒動についても調べたようで共に伝えてきた。



エディも、カルロが入手した『督促状』なるものを、自身の目で確かめる。



「国からの指示とあるが、近隣でも行われているのか?」



『督促状』をひらりと、カルロに返しエディは額の横に手を置いて思案している。



「いや、うちへ出入りしてる連中に聞いたが、どこもそんな話題はないらしい」



カルロがエディから返された『督促状』を懐に仕舞いながら、「誰かに探らせるか?」と問う。



それに対して、エディが「いいや」と首をゆっくりと振り、カルロの提案を断った。



「ちょうど、ジルは、王都にいるジムラルを調べてるんだったな?なら、ついでに、所長の居場所を探させろ」



「所長は、定例会合があるとかで王都へ出張に出ているらしいが、探した方がいいのか?」



エディに言われた言葉に少し納得がいかない顔で、カルロは問い返した。



「足止めを喰らわされている可能性がある。金が集まるまで時間がいるはずだ。所長が生きていればいいがな」



不穏な言葉を告げるエディに、カルロも目線を下げて、唇を噛みしめる。



「うちの者を使って、そっちも捜査しろ」



「ああ、わかった」



エディに言われ、カルロは慌てるように部屋を飛び出していった。



カルロの姿を見送った後、エディは、座ってる椅子に背を凭せ掛け、目を閉じ、最近の出来事を思い浮かべる。



何かが動いている。



それは何となくは見えてきている。



でも、それがどこに繋がっているのかが見えない。



あの、『督促状』もだが、ウラスたちだけで成し得るものではない。



大きな力をもつ何者かが動いているんじゃないか?



エディがそう思っているところに、執務室の扉が勢いよく開いた。



顔を表したのは、うっとおしそうな顔をしたラドだった。



「頼まれていた女。探っているが、どこにもいないぞ」



ソファーにどさりと体ごと沈めて横になってから、ラドはそう呟いた。



「パーティ―も空振り、酪農んとこでも見なかった。こっちのジムラルの屋敷にもいないみたいだ」



どこに隠れていらっしゃるのかなぁ。と、ラドは、投げ出した足を組みながら、大きく背を伸ばしながら言う。



「ジムラルの女は、資金集めの時期に、最近は、ジムラルの代わりに来ているみたいだ。派手な服装の女が、時折ここ(トウ)で見掛けられている」



エディは顔色変えずに、ラドへと告げる。



「そんな女なら、直ぐに、目に付くのにな?」



ラドは、天井を眺めながら遠い目をしている。



「その女、薄い唇で笑うと右端に笑窪が出来るようだ」



「すごーいねえ、そんな情報あるのに、素性がわからないんだ?」



エディが伝えた女の情報に、ラドがわざとらしく言ってみせた。



「ジムラルの王都の女って括りでしかみていなかったからな」



ラドの言葉にきちんと返したエディだが、ラドは「フーン」と、問い掛けておきながらも、興味なさげにつぶやいて見せる。



そんなラドには目もくれず、エディが話を続けてゆく。



「最近、ジムラルがこちらで顔を見せていない。年齢的なものかと思っていたが、女が何かしていそうだな」



「女は怖いからね。もしかすると、そのおっさん死んでっかもな」と、ラドがそう言って笑っている。



「かもしれないな」



不謹慎な話ではあるが、あながち、これは当たっているように思えてくる。



「しかし、そんなに金がいるのか?「平民議員」になるのには?」



ラドが天井を見つめながらふと思った事を呟く。



「お前も知っているんだろ?今、役場での騒動。あそこまでするか?金は確かにかなり集まるかもしれないが、その後は、もう終わりだろ?選挙どころじゃないよね?どーしたのかな?ケーシーくん、絶対に「平民議員」になれないよ?」



ラドはニタニタと笑い、「馬鹿じゃねーの?」と言っている。



そう、エディも思っていた。



これは捨て身での行動じゃないかと。



確かに、選挙には金はいる。



しかし、国の名を騙ってまで行う資金集めは度を超えている。



もしかすると・・エディが考えを巡らせていると、ラドがポツリと呟く。



「どっかの誰かに見限られたのかもしれないなぁ」



フフフと、鼻歌でも口にしそうな感じで再び、ラドが笑い出す。



「女を見つけろ?人を増やしてもいい」



「いいけど。約束守るなら、死ぬ気で探すよ」



ラドが、ソファーから体を起こしてエディに微笑む。



その時、再び、執務室の扉が音もなく開いた。



「はァ、ラド、お前はまだ言ってるのかよ」



部屋に入るなり、カルロがラドに呆れながらも釘を差し込む。



「はんっ!うるせぇんだよ。ビジネス何だから報酬は貰って当然だろうが!」



ラドは綺麗な顔を歪めて、悪態をつく。



「ラド、悪いが、ローサはものじゃない。意思のある人だ」



エディが目を細め、静かな口調で話を向ける。



「へー、だったら、本人がお前と別れるって言うなら、俺が貰って良いんだな?」



エディの話から、ラドは瞳を輝かせて言い出してきた。



「あぁー、やる気が出てきたな!選挙が終わるのが楽しみだ!」



よいっしょと、一言ラドは言いながら、ソファーから立ち上がると。



「さぁてと、女のこと引き続き、探してきますわ」



そう言って、ラドは手をひらひらとさせてから、執務室から消えた。



「あいつ、相変わらず、賢いのかどうなのかわからんやつだな・・」



カルロがラドが出て行った先を眺めながら呟いた。



「で、手配は出来たのか?」



「あぁ、うちから3人ほど、王都に向かわせるようにした。ジルと合流して、手分けるようにしている」



カルロからの返事に、エディも頷く。



「場合によっては、私が王都に出向くことになるかもしれない。カルロ、その時はここを頼む」



「あぁ、わかった」



エディとカルロが互いに頷き合ってみせた。
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