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第1部 第43部
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サンテは、自身が営む工場を出てから、直ぐに、トウの町の中心部から少し離れた所にあるウラスが所有する隠れ家とした別邸へと向かった。
本来なら、こんな選挙活動の期間中ならば、ウラスが昼間に隠れ家とした別邸などにいることは無いはずなのに、この日は、まるで、サンテが、この別邸に訪れる事が、予め解っていたのかと疑いたくなる程、突然の訪問にも関わらず、ウラスは別邸に在宅であり、また、サンテの訪問を快く迎え入れてくれたのだった。
サンテが、ウラスの別邸の使用人に案内されて、何度となく訪れているウラスの書斎へと向かった。
「どうした?珍しいじゃないか?」
サンテが自分を尋ねた理由も解っているだろうに、ウラスが恍けたように声を掛けてきた。
「お前、どういうつもりだ!」
書斎に備わるソファーに腰かけると同時に、サンテがウラスに向かって声を荒げる。
「どういうつもり、とは?」
書斎机で、何やら書き物をしていたウラスが驚いた顔を見せてサンテに問い直す。
「いい加減にしろ!お前がさせているんだろ!」
そう言って、サンテは先程、手元に届いた役場からの例の『督促状』を目の前のテーブルへと投げ捨てた。
その行動に、眉を顰めて、ウラスが椅子から立ち上がり、サンテが座るソファーへと移動し、無言で、その投げられた『督促状』を拾った。
「これが、どうした?」
ウラスは、拾った『督促状』を、テーブルへ置き直し、サンテの対面のソファーに腰かける。
「まだ、金がいるのか?今度はいくらいるんだ?もういい加減にしろ!」
サンテが捲し立てるように言い放つが、ウラスは、目を細めたままでいる。
「こっちは、息子の王都でのことでも腹を立てているんだぞ!よくも、知人の子どもを騙して!」
「その話、何度言えばわかるんだ。わしは知らんと話しただろうが」
怒りで、顔を真っ赤にして怒鳴ってばかりいるサンテとは対象に、ウラスは落ち着いた話しぶりで応えて見せる。
「お、お前の叔父が手引きしたんだろうが!」
怒りから、手元がわなわなと震えるサンテに対して、ウラスは尚も表情一つ変えないでいた。
「叔父は、後学のためにと、田舎の若者に都会の顔を教えただけで、そこからは、息子が勝手に舞い上がってしたことだろうが」
「よくも、ぬけぬけと、貴様は、私達をなんだと思ってるんだ!卑怯な事ばかりして!」
「卑怯も何も、関係ないのに言いがかりはやめてくれ。だいたい、今日は、その事で来たのか?」
ウラスは、激高するサンテに、当てつけるように、テーブルにある『督促状』を指でトントンと叩いて意識を向けさせる。
「これはなんだ?」
「お前がさせたんだろ!セフィかケントに指示させて!」
バン!と、今度は、ウラスの態度に苛立ち、サンテが大きな音をテーブルに立てたのだった。
「役場からの『督促状』に、何故、私が指示が出せるんだ。あれは、国からしか動かせないものだ」
お前だって、それくらいわかるだろう?と、ウラスの方はニヤリと目を細め、口角を上げる。
「ウラス、お前、何をしているのか、わかっているのか?」
サンテは、ウラスの表情を見て、ここにきて、漸く只ならぬ恐怖を感じだした。
「何のことだ?わしは、ただの「平民議員」だ。何の力もなく、発言権もない「平民議員」だ。そんな、わしに何が出来るんだ」
ウラスがそう言って、ケタケタと笑いだす。
「ウラス、目を覚ませ。このままでは、大事なものがなくなるぞ!」
サンテが、真剣な顔になり、ウラスに詰め入るが、彼の耳には何も届かない。
「お前たちは、言われた通り金を差し出せばいいんだよ。そうすれば、この町は救われるんだ」
ウラスは不気味な笑顔をサンテに見せて、「早く、払って来いよ!」と急かしだす。
「馬鹿なこと言うな!払えるわけがないだろう!」
尚も、サンテが抵抗して言い出すと、また、ウラスが笑いだした。
「お前、息子の王都でのあのこと、あれで全部済んだと思っているのか?あの娼婦、子どもが出来ていたらしいぞ」
ウラスの言葉に、サンテの顔が青く染まっていく。
「仕事に差し支えるからと、堕胎したらしいが。暫く、稼げなくなったし、堕胎薬には相当の金がいったらしいぞ。今度はいくら、請求されるんだろうな?」
ウラスは声高らかに笑いだす。
「貴様、殺してやる!」
サンテが勢いよく立ち上がり、ウラスの胸倉を掴むが、ウラスはその行為にもニヤニヤと笑いだす。
「わしを殺して、お前は牢屋行き、息子は借金に追われ、身の破滅だ!」
その言葉に、サンテはウラスの胸倉を離したが、目には怒りから、涙までもが浮かんでくる。
「くそ!」
そう吐き捨てるのが精一杯だった。サンテは、その言葉を吐き出してから、ウラスの元から立ち去った。
サンテが出た書斎は、暫し、静寂が訪れていた。
ウラスは、サンテが座っていたソファーをじっと眺めている。
そんな時、書斎の扉を何の断りもなく開けて入ってくる女がいた。
「で、お金は集まりそうなのかしら?」
この町には、とても似つかわしくない高級で派手な装いの女がそう言いながらソファーに座り込む。
「約束の期限は、とっくに過ぎているのよ。きちんと守らないといけないでしょう?」
女は涼しい顔をしながら、ウラスを睨みつける。
「私をこんなところに何日滞在させるつもりよ。あの人も待っているのよ。身体も壊して、お薬もあげないといけないのに。こんなところに何日もいたら、死んでしまうかもよ。」
くすくすと笑いながら、女は、先程、サンテが置いて行った用紙を眺めている。
「わかっています。叔父にも待たせていることも」
ウラスは女の顔を見ないで、俯き加減で女の言葉に返答する。
「ならいいのよ。こっちも大変なのよ。「平民議員」の面倒見てあげるのもね。早くしてくれないと、他の「平民議員」のとこに行くかも知れないわよ。そうなったら、困るでしょ?あなたの息子も、この町も・・」
女は目を細めて、薄い唇の右端に笑窪を作り、にいーっとさせて、不気味に微笑んだ。
ウラスはそんな女の言葉には応えられず、ただ、黙りこむしか出来なかった。
本来なら、こんな選挙活動の期間中ならば、ウラスが昼間に隠れ家とした別邸などにいることは無いはずなのに、この日は、まるで、サンテが、この別邸に訪れる事が、予め解っていたのかと疑いたくなる程、突然の訪問にも関わらず、ウラスは別邸に在宅であり、また、サンテの訪問を快く迎え入れてくれたのだった。
サンテが、ウラスの別邸の使用人に案内されて、何度となく訪れているウラスの書斎へと向かった。
「どうした?珍しいじゃないか?」
サンテが自分を尋ねた理由も解っているだろうに、ウラスが恍けたように声を掛けてきた。
「お前、どういうつもりだ!」
書斎に備わるソファーに腰かけると同時に、サンテがウラスに向かって声を荒げる。
「どういうつもり、とは?」
書斎机で、何やら書き物をしていたウラスが驚いた顔を見せてサンテに問い直す。
「いい加減にしろ!お前がさせているんだろ!」
そう言って、サンテは先程、手元に届いた役場からの例の『督促状』を目の前のテーブルへと投げ捨てた。
その行動に、眉を顰めて、ウラスが椅子から立ち上がり、サンテが座るソファーへと移動し、無言で、その投げられた『督促状』を拾った。
「これが、どうした?」
ウラスは、拾った『督促状』を、テーブルへ置き直し、サンテの対面のソファーに腰かける。
「まだ、金がいるのか?今度はいくらいるんだ?もういい加減にしろ!」
サンテが捲し立てるように言い放つが、ウラスは、目を細めたままでいる。
「こっちは、息子の王都でのことでも腹を立てているんだぞ!よくも、知人の子どもを騙して!」
「その話、何度言えばわかるんだ。わしは知らんと話しただろうが」
怒りで、顔を真っ赤にして怒鳴ってばかりいるサンテとは対象に、ウラスは落ち着いた話しぶりで応えて見せる。
「お、お前の叔父が手引きしたんだろうが!」
怒りから、手元がわなわなと震えるサンテに対して、ウラスは尚も表情一つ変えないでいた。
「叔父は、後学のためにと、田舎の若者に都会の顔を教えただけで、そこからは、息子が勝手に舞い上がってしたことだろうが」
「よくも、ぬけぬけと、貴様は、私達をなんだと思ってるんだ!卑怯な事ばかりして!」
「卑怯も何も、関係ないのに言いがかりはやめてくれ。だいたい、今日は、その事で来たのか?」
ウラスは、激高するサンテに、当てつけるように、テーブルにある『督促状』を指でトントンと叩いて意識を向けさせる。
「これはなんだ?」
「お前がさせたんだろ!セフィかケントに指示させて!」
バン!と、今度は、ウラスの態度に苛立ち、サンテが大きな音をテーブルに立てたのだった。
「役場からの『督促状』に、何故、私が指示が出せるんだ。あれは、国からしか動かせないものだ」
お前だって、それくらいわかるだろう?と、ウラスの方はニヤリと目を細め、口角を上げる。
「ウラス、お前、何をしているのか、わかっているのか?」
サンテは、ウラスの表情を見て、ここにきて、漸く只ならぬ恐怖を感じだした。
「何のことだ?わしは、ただの「平民議員」だ。何の力もなく、発言権もない「平民議員」だ。そんな、わしに何が出来るんだ」
ウラスがそう言って、ケタケタと笑いだす。
「ウラス、目を覚ませ。このままでは、大事なものがなくなるぞ!」
サンテが、真剣な顔になり、ウラスに詰め入るが、彼の耳には何も届かない。
「お前たちは、言われた通り金を差し出せばいいんだよ。そうすれば、この町は救われるんだ」
ウラスは不気味な笑顔をサンテに見せて、「早く、払って来いよ!」と急かしだす。
「馬鹿なこと言うな!払えるわけがないだろう!」
尚も、サンテが抵抗して言い出すと、また、ウラスが笑いだした。
「お前、息子の王都でのあのこと、あれで全部済んだと思っているのか?あの娼婦、子どもが出来ていたらしいぞ」
ウラスの言葉に、サンテの顔が青く染まっていく。
「仕事に差し支えるからと、堕胎したらしいが。暫く、稼げなくなったし、堕胎薬には相当の金がいったらしいぞ。今度はいくら、請求されるんだろうな?」
ウラスは声高らかに笑いだす。
「貴様、殺してやる!」
サンテが勢いよく立ち上がり、ウラスの胸倉を掴むが、ウラスはその行為にもニヤニヤと笑いだす。
「わしを殺して、お前は牢屋行き、息子は借金に追われ、身の破滅だ!」
その言葉に、サンテはウラスの胸倉を離したが、目には怒りから、涙までもが浮かんでくる。
「くそ!」
そう吐き捨てるのが精一杯だった。サンテは、その言葉を吐き出してから、ウラスの元から立ち去った。
サンテが出た書斎は、暫し、静寂が訪れていた。
ウラスは、サンテが座っていたソファーをじっと眺めている。
そんな時、書斎の扉を何の断りもなく開けて入ってくる女がいた。
「で、お金は集まりそうなのかしら?」
この町には、とても似つかわしくない高級で派手な装いの女がそう言いながらソファーに座り込む。
「約束の期限は、とっくに過ぎているのよ。きちんと守らないといけないでしょう?」
女は涼しい顔をしながら、ウラスを睨みつける。
「私をこんなところに何日滞在させるつもりよ。あの人も待っているのよ。身体も壊して、お薬もあげないといけないのに。こんなところに何日もいたら、死んでしまうかもよ。」
くすくすと笑いながら、女は、先程、サンテが置いて行った用紙を眺めている。
「わかっています。叔父にも待たせていることも」
ウラスは女の顔を見ないで、俯き加減で女の言葉に返答する。
「ならいいのよ。こっちも大変なのよ。「平民議員」の面倒見てあげるのもね。早くしてくれないと、他の「平民議員」のとこに行くかも知れないわよ。そうなったら、困るでしょ?あなたの息子も、この町も・・」
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