<第一部 完結> お前がなれるわけがない!

mokono

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第1部 第53話

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ケーシー陣営との思わぬバッティングで起きた騒動では、何だか言いようのない結末を迎えてしまった。



アッシュたちは、街頭宣伝を行うにも周りに人が居なくなった為に、不本意ながら、この地は撤退することにしたのだった。



で、空いた時間をどうするかという話になったところで、ラドが思い出したかのように



「そう言えば、忘れていたが、あのボンクラ一族?が営む酪農の、牧草地?での馬車事件の犯人が見つかったぞ」



そう告げてきた。



「えっ?そうなんだ?」



アッシュもそう言えば、そんなことあったな?と思い起こす。



「で、犯人は誰なのさ?」



ロビンも気になるようで問い掛けてきた。



「犯人は決まっているだろ?ボンクラ一族だよ」



呆れた眼差しを向けてラドが応える。



その言葉に、周りの皆が、やっぱりな!と肩を竦めた。



「示談金の話をするとこまで、エディの部下が動いてくれている。時間が空いたなら移動が大変だが行くのも手だぞ」



ラドの提案に、アッシュは思案しだす。



忘れていた事案ではあるが、示談金まで漕ぎ付けて貰っているならあまり放置もよくないなァと思いながら、ラドの顔を伺う。



「明日の予定なら、町の中央に比較的近くでの活動予定だな」



ラドは、アッシュと目を合せただけで、彼の投げかける言葉がわかったのか?そう言葉を伝えた。



「いいじゃないですか?ちょっと気晴らしに出掛けましょうよ!」



と、ロビンまで、ニコニコ笑顔を向けて勧めてくる。どうやら行く気満々のようだ。



「そ、そうだな」



アッシュは、そう言いながら、空を眺める。まだ、日は高い、例え、一泊しても朝早くに出れば、翌日の予定も熟せるだろう。と思い、「じゃあ、予定変更で向かうか!」と言いながら、馬車に移動しようと向かいかけていると。



「馬車じゃ遅くなるから、馬で向かうぞ」



ラドは目を細めながら、呆れた口調で言ってきた。



「えっ!?馬なの?」



そのラドの言葉に対して、アッシュより先に声を上げたのは、ロビンだった。



「当り前だろ!選挙も終盤で忙しいんだろうが!馬車なんかでちんたら行けるか!アホかっ!」



ラドの言葉に、ロビンの顔が蒼褪める。



「あっ、あ、の、僕、そ、それなら、先に事務所へ戻っていますね・・」



急に、ロビンが萎れたように小さくなりながら、馬車へと後退る。



「は?えっ?どうした?ロビン?」



ロビンの急な変化にアッシュが首を掲げてみせる。



そんなロビンの姿に、ラドはフン!と鼻を鳴らして、馬を調達するべく先に歩きだして行った。



「お義兄さん、ご武運をお祈りしています」



ラドがその場に居なくなったところで、ロビンは、変な言葉を告げ出してきた。しかも、祈りの仕草まで付けてだ!



「お、お前、戦場に行くんじゃないんだぞ・・」



目はウルウルとさせたロビンを怪訝に思いながら、アッシュもラドを追う事にした。



「生きて帰って来てくださいね。メイに頼んで、胃に優しいスープを作って貰って待ってまいすからね」



そう言いながら、まだ、祈りの仕草のままで、ロビンはアッシュを見送っていたのだった。



そんなアッシュは、ロビンの態度に疑問を抱きながらも、ラドと共に馬に乗り牧草地に向けて旅立つ。



しかし、馬に乗って、直ぐに、アッシュは、ロビンの態度の理由を知ってしまう・・・



『ウソだろォー!』



馬での移動を舐めていた。



自分が乗る馬より、はるか先に、ラドが馬を操り走っている。



アッシュもトウの町での生まれなので馬には乗った経験は勿論あり、学校の授業でも乗馬はあったので、今回の「馬での移動」にも何の疑問も持たなかったのであるが・・・



『信じられん・・・速過ぎるぞ・・・』



しゃべったら、舌を噛みそうな勢いだ!



必死に喰らいついて、先行くラドの背を見失わないように、アッシュは馬の手綱を握る。



『ほんと、生きて帰れるか、不安だな‥』



その時、別れ際に見たロビンの仕草を思い起こしてしまい、アッシュは懸命にそれを振り払うように頭を横に振る。



『意識はラドに集中!』



そう思いながら、アッシュは馬を走らせていく。



そんな訳で、普通に掛かる移動時間を大幅に縮小して、アッシュとラドは、牧草地に着いた。



ラドは、美しい顔を爽やかなまま保ち、馬からひょいっと降り立つ。



一方のアッシュは馬上で項垂れたまま、降りれない。



しかも、口元は抑えて、顔色は青い・・・



「大丈夫か?」



ラドはにこりと笑いながら、一応、アッシュを気遣っている。



「・・・」



しかし、当のアッシュは顔すらも上げれず、黙り込んでいる。



「あぁ、無理そうだな。暫く、そのままでいろよ。飲み物買ってくるから」



ラドがそう言って、アッシュから離れた瞬間に、アッシュの「うっプッ・・・」と嫌な声が漏れ出たが、ラドは聞こえないふりして飲み物の購入を目指したのだった。



暫くして、冷たい炭酸水と水が入った二つの瓶を手にラドが戻って来た。アッシュも馬上から降りて、地面に座っている。



「口濯いで、それから炭酸水飲むと、すっきりするぞ」



アッシュは渡された瓶二つを手に、ラドを睨む。



「炭酸水って、胃が荒れてる時にはだな・・」



アッシュは口ごもりながらそう呟く。



「うん?胃荒れてるのか?」



ニヤリと笑いながらラドがいう。



こいつ、わざとだな!アッシュはそう思いながら、まずは、水で口を軽く2、3度濯ぎ、それから、躊躇いながらも炭酸水を口にした。すると、何故か少し口の中が爽やかになった。



「これレモン果汁?」



「うん。この地域ではレモンが採れるみたいだな、それと合わせて湧き水の炭酸水で作ってるようだ」



そう言いながら、ラドも炭酸水をクイッと口にする。



「それ飲めたら、酪農んとこいくぞ」



アッシュは、取り敢えず、小さく頷いたのだった。

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