<第一部 完結> お前がなれるわけがない!

mokono

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第1部 第55話

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一足先に、トウの中心部に帰って来ていたロビンは、ケーシー達の様子を見る為に、日が沈み掛ける最中、例のカフェテリアに向かう事を決め、町を歩いていると。



何やら、紙がひらりと目の前に舞い降りてきた。



ロビンは無意識に、その紙を手にしてみる。



『とある集落にて!!「平民議員」立候補のケーシー氏!ハロルド商会販売の茶と菓子を握りしめながら、聴衆から逃亡!

町民A談:茶と菓子を握りしめたまま、ケーシー氏が逃げてましたね。よっぽど、奪われたくなかったのでしょうね。

町民B談:町民だけに配ってる事に怒っているようでした。彼も食べたかったのでしょうかね?

ケーシー陣営談:うっまそう!

そんな「平民議員」立候補のケーシー氏も気になる!茶と菓子はトウの町の中心部にあるハロルド商会運営の店で販売中!』



紙を読んだロビンは、目を見開いた。



そして、周囲を見渡すと、同じように紙を手にする人があちこちにいる・・・



『うゲッ!コーヒー飲んでる暇はないかも!』と思い直してから、ロビンは慌てて、カフェテリアから、目的地を変えて足早に掛けていく。



そんな、ロビンが向かったのは、自分の実家が営むハロルド商会。ついでに言うが、ロビンも一応、家族なんで社員の一人です。



慌てて、商会へ駆け込み、いつものように、兄のいる執務室へ向かおうかと思っていると、ちょうど、カルロが自分に与えられている秘書室から出てきた。



「おっ!ロビン、どうした?ん?」



ロビンはカルロの顔を見て、一度立ち止まる。



その行動を見てから、カルロは改めてロビンの行く先変更の為、再び、言葉を掛けた。



「奥、執務室へ行ったら、ジェームスの親父さんがいるぞ」



その言葉に、ロビンはハッ!として、少し顔を曇らせる。



「そうだった!!兄さんは留守だった・・」



ロビンの曇り顔を覗き込みながら、カルロが自室への入室を促した。



ロビンもすんなりとそれを受け入れて、部屋に入ることにしたのだった。



「で、どうした?あの後、出かけたんだろ?」



カルロは笑顔を向けながら問い掛ける。



「あっ、うん、出かけたよ。何故か、今日は、ケーシーたちと被ったんだけどね・・」



ロビンは、そう報告しながら、じとりとカルロを見やる。



「うん?何かついてるか?」



カルロは尚も笑顔を向けて聞いてくる。



「顔には何にもついてないけども、恐ろしい耳はあるようだね?」



ロビンは、そう言いながら、さっき手にした紙を見せる。



「うん?」



ロビンから貰った紙をカルロは「へー」とか「うおっ!」とか言いながら如何にも読んでいる風を装っている。



「これ!カルロでしょ?」



ロビンがカルロの顔をじろっと見ながら問い詰めた。



「あれれ?ロビンはまた賢くなったね?まあ、正確に言えば、ハロルド商会の者が見ていたんだよ。で、面白いネタだと思ってね!ホラッ!うちの会頭はさ、商売にはお金に糸目をつけないとこあるだろう?そこを真似て、活用したんだよねぇ」



フフフ・・と笑うカルロに、ロビンが怪訝な目で見やる。



「大丈夫なのかよ?こんな、ケーシーを貶すようなこと書いてさ」



そう言って、ロビンは心配な顔を見せていく。



「貶してた?事実と聞いたけども。うん?違うのか?まぁでも、これは商品宣伝としたものだから、問題ないでしょう?」



「事実とはちょっとかけ離れているんじゃないかな?」



ロビンは、眉間に皺を寄せて、先程のケーシーたちを思い起こす。



かなり改竄されて脚色されていますよね?・・・やりすぎじゃね?



「そう?でも、逆にこれでいいはずだよ。お互いにね!」



カルロはニヤリと笑い、ロビンはそれを見て、何故か、背中がゾクリとした。



「で、話はこれだけか?」



「まあ、そうだけども・・」



ロビンはまだ納得いかないような雰囲気であるが、追及は諦めることにしたようだ。



そんな姿を見つつ、カルロは再び尋ねる。



「これ?アッシュも見た?」



ロビンはカルロの言葉に、ため息を吐いてから「見てないよ」と告げる。



「そうかっ」



「だって、ラドと、ホラッ!前にあった牧草地での馬車の車輪が壊された事件?あれの示談に向けて行ったんだよ。だから、街頭演説先で別れたんだ・・」



「へー、で、ロビンは付いて行かず?」



何だか、含みのあるカルロの言葉に、ロビンは嫌そうな顔を向ける。



「馬で行くって、ラドが言うからさ!ラドとの乗馬はしたことないけども。たぶん、きっと・・・」



ロビンが途中で口ごもるのを見て、カルロがクスクスと笑いだす。



「ご名答!いやぁ、ロビンの成長には感動するわ!」



その言葉に、ロビンは肩を落とした。



「お義兄さん、死んでないよな?」



そう、ロビンは知っていたのだ。



ハロルド商会の人間の馬の乗り方を!



「時は金也!」と、どこぞの世界の言葉?そんな言葉、誰から聞いたの?なんて言いたい、その名言。



ハロルド商会では、この言葉を信念に、時間により金は増えもするし減るもしていくのだ、と。有意義に使うべし!とのことで、馬に乗れば、如何に、時間を無駄にせずに突き進むかと言わんばかりの勢いで駆け抜ける。



乗馬は嫌いじゃないが、ハロルド商会の人間の乗り方は正直、無理だ!アホだ!クソだ!



何度、お口からキラキラしたものが出た事か・・・



父も兄も、そして、カルロも尋常じゃない速さで掛ける。



「無理。僕には無理です」



目に涙を溜めて訴えた日のことが甦るロビンである。



『やっぱり!ラドもそうだったのか!だと思った』



安堵のため息が零れたロビン。



「まあ、けど、ラドも押さえてるんじゃないか?アッシュは慣れてないしさ?」



たぶんだけども・・・なんて、言いながら、微笑む、カルロである。



「あんな乗り方して、よく落馬しないで生きてるわ!戦場じゃないんだぞ!」



ロビンは想像してしまい、体をブルッと震わせる。



「きっと、兄さんとジルもバカみたいに王都まで飛ばしているんだろうな・・」



怖すぎる!と、再び、ブルっとロビンは震わせた。



『まあ、あいつらなら、下手したら、もうとっくに王都には着いてそうだなぁ』



ロビンの怖がる姿を見つめながら、カルロは王都に向かったエディとジルを思い起こすのだった。
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