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第1部 第65話
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選挙も残りの日にちを数えて僅かとなる中、ケーシーの耳に思わぬ、対抗馬の不祥事の噂が入って来た。
それは、アッシュの役場での不正、横領疑惑だ!
これまで、ほんとうに噂ではあるが、幾度となく父ウラスや叔父などの不正、横領疑惑はケーシーも耳にはしてきたことがある。
しかし、父ウラスも、叔父のジムラルも素知らぬ顔で過ごしていたので、「違うんだな・・・」と思い込むようにしてきた。
そうしなければ、自分の身内が犯罪者となってしまう。
きっと、妬みや僻みから、根も葉もない噂が立てられてきたんだと思うようにしていた。
いや、実際、子どものときは何度か父や母、叔父にも聞いてはみたが、答えは同じで「くだらん話だ!」と言われて終わった。
うん、何だか少し矛盾してはいるが、うちの場合は、本当に噂で流れていただけで、今、耳にするアッシュの話はどうやら噂で終わらないような勢いらしい。
本来ならこんな時期に、対抗馬の奇跡的な悪事に諸手を挙げて喜びそうなケーシーなのだが、何故か、すっきりしない。
そんな訳で、ケーシーは、珍しくある人物を呼び出したのである。
「なんだよ。俺は、今、超忙しいんだぞ!セフィに頼まれて、所長代理の代理をしていて大変なんだ!」
フン!と、鼻を鳴らして、ケーシーの事務所に夜遅くに現れたのは、従兄弟のケントである。
ケーシーの父とケントの母が姉弟という間柄で、幼い頃からよく共にいる仲であった。
「悪いな。ちょっと聞きたい事があって」
まあ、座れよと、ケントへ事務所にあるソファーに腰かける様に勧めてから、ケーシーもケントの向かいへ座った。
「な、なんだよ。珍しく呼び出してよ」
ケーシーは自分に少し似た顔立ちの従兄弟の顔をじっと眺める。
「よ、用件を言えよ。俺は忙しいんだからな!」
そんなケーシーの視線に、何か隠し事がある時に見せるケントの挙動不審なソワソワした動きが現れだす。
「何か悪い事しているんだろう?」
ケーシーの言葉に、ケントは、思わず息を詰まらせる。
「うっ・・・」
「お前、昔から、俺にはわかりやすい行動するよな?」
ケーシーが、目を細めて見つめ、ケントを追い込んでいく。
「な、何のことだ!」
たじろぎながらも、ケントは何とか誤魔化そうとしているが、ケーシーには、返って解りやすい反応に見えるのだった。
「アッシュの、横領疑惑が噂にある」
ケーシーがそう口にすると、何故か、ケントは落ち着きを見せたのである。
「なんだ、その事か?噂のまんま、あれはほぼ事実だ!」
呼び出されて事務所に来た時とは違い、ケントは落ち着きを払い、逆に余裕な態度をみせだし、小柄ななりの癖に足を組んで態度をデカくみせだす。
「事実とは!じゃぁ、本当にアッシュは横領していたのか!」
落ち着いたケントとは違い、今度は、ケーシーが動揺しだし、ケントに向けて大きな声を出していた。
「そ、そうだよ。よ、よくわからないが、書類が出たらしい」
ケーシーの威圧的な声に怯みながらも、ケントなりに言葉を絞り出す。
「よくわからないって。お前、自分の職場だろう?しかも、代理の立場なんだよな?」
呆気に取られて、ケーシーは従兄弟の顔を見つめる。
「な、なんだよ。俺は指示通りにやったんだ!お、お前の為にだな・・」
再び目を泳がし、ケントがそう呟く。
「どういう事だ!」
ケントの呟きを耳にしたケーシーが、顔を顰めながらケントに問い掛ける。
「マ、ママが、このままだと、お、お前が選挙に負けるから、何とかしないとって」
ケーシーの勢いに圧されて、ケントはポロリと隠し事を零した。
「ママって?叔母さんの指示か!」
ケーシーの大声に、ケントは首を横に何度も振り、否定を訴える。
「ママじゃない。お前の親父が、セ、セフィへ、そのいつものように動かしたんだよ」
不貞腐れた様にケントが話をし出していく。
「っていうか、お前だって、薄々はわかっていたんだろう?町での噂が本当だって?」
何かが吹っ切れたのか、ケントは、今まで見せていた態度から様変わりして、ニタニタと悪い顔を見せだした。
「俺達一族が生き抜く為には、この町の協力が必要なんだって。ママがさ、「平民議員」は町の代表でとっても偉いっていつも俺に話してくれていたんだ。ママが女じゃなかったら、ママが「平民議員」になっていたんだよな?そんなママの息子の俺も「平民議員」と変わらない立場なんだって。ママが言ってた」
ずっと、出来が悪いと密かに思っていた従兄弟は、相当、頭も性格も悪く育ったようだと、ケーシーはうっとりしながら話し込むケントを睨みつける。
ケントの母である叔母は、一人息子のケントをこの上ない位に溺愛している。
どれ程、溺愛していたかと言えば、例えば、ケントは町にある学校に通っていたが、成績も一番底辺を這う始末で、はっきり言って、役場勤めなんて逆立ちしても無理なのに、そこは叔母が、自分の叔父であるジムラルに頼み込み、裏から手を回して役場の採用を手にさせたりと、まあ、それが町中に広まり、ケントは見ず知らずの人からも「あれが縁故採用のケント」と指差して呼ばれる有様だ。
だが、ケントはそんなことには気にもしていない、こちらもマザコン炸裂な為に、愛するママの言葉には妄信的で他者の意見なんて、耳にすら入らない質の悪い輩であって、「縁故採用のケント」の言葉に怒りすらわかないようだ。
そんなケントの母である叔母は、ケーシーの父ウラスにも長子としての権限からか、絶対服従させる傍若無人ぷりで、普段、偉そうな態度である父が叔母には逆らえない姿を何度も見たくらいだ。
どうやら、幼い頃はそうでもなかったらしいが、どうも叔母が変わったのは、偏に、このケーシーの目の前にいるケントの馬鹿の行動からのようで、身内でも困惑を露わにしている。
「ママ、ママって、どんんだけママを出すんだ!」と、ケーシーは呆れてケントを見やる。
そんな出来が悪いケントを使ってまで、事を起こしている父の姿に、心底呆れてきた。
ずっと、良くないことしているんだろうなとは、思っていたが。
親や周りが、「平民議員」なんだからって言葉で済ませることで、自分もそれが「平民議員」なんだと思い込もうとしていた。
実際は違っていたんだ。いや、もう随分前から知っていた。
でも、自分はこの家に生まれたからには、この道しかなくて、これにしがみ付かないといけないんだと、思わないと生きていられない。
「今更、お前、自分は関係ないとか思うなよ。皆、ママや俺やお前の親も、お前が「平民議員」になる為に手を尽くしているんだからな!」
ケントが、フンと顎を上げてから、ケーシーを睨みつける。
「全ては、お前の勝利の為だよ。アッシュの事なんか気にするな。だいたい、俺は、役場に就職した時点であいつは大嫌いだったんだ!何が、学校の成績が優秀だ!役場の入試も満点だ!はァんっ!「平民議員」一族の方が偉いのに、偉そうにしやがって!」
ケントは、思い出したかのように、アッシュへの暴言を口にし出している。
「いい機会だ!二度と立ち上がれないくらいに、叩き落してやる!」
ケントは握った拳をパシッと自らの掌へ叩きつけて、口角を上げてみせた。
その姿をケーシーは、複雑な面持ちで見つめてしまう。
もう、引き戻れない、前に進むしかないのか、俺は・・・
ケーシーはぎゅっと唇を噛みしめながら、そう思ったのだった。
それは、アッシュの役場での不正、横領疑惑だ!
これまで、ほんとうに噂ではあるが、幾度となく父ウラスや叔父などの不正、横領疑惑はケーシーも耳にはしてきたことがある。
しかし、父ウラスも、叔父のジムラルも素知らぬ顔で過ごしていたので、「違うんだな・・・」と思い込むようにしてきた。
そうしなければ、自分の身内が犯罪者となってしまう。
きっと、妬みや僻みから、根も葉もない噂が立てられてきたんだと思うようにしていた。
いや、実際、子どものときは何度か父や母、叔父にも聞いてはみたが、答えは同じで「くだらん話だ!」と言われて終わった。
うん、何だか少し矛盾してはいるが、うちの場合は、本当に噂で流れていただけで、今、耳にするアッシュの話はどうやら噂で終わらないような勢いらしい。
本来ならこんな時期に、対抗馬の奇跡的な悪事に諸手を挙げて喜びそうなケーシーなのだが、何故か、すっきりしない。
そんな訳で、ケーシーは、珍しくある人物を呼び出したのである。
「なんだよ。俺は、今、超忙しいんだぞ!セフィに頼まれて、所長代理の代理をしていて大変なんだ!」
フン!と、鼻を鳴らして、ケーシーの事務所に夜遅くに現れたのは、従兄弟のケントである。
ケーシーの父とケントの母が姉弟という間柄で、幼い頃からよく共にいる仲であった。
「悪いな。ちょっと聞きたい事があって」
まあ、座れよと、ケントへ事務所にあるソファーに腰かける様に勧めてから、ケーシーもケントの向かいへ座った。
「な、なんだよ。珍しく呼び出してよ」
ケーシーは自分に少し似た顔立ちの従兄弟の顔をじっと眺める。
「よ、用件を言えよ。俺は忙しいんだからな!」
そんなケーシーの視線に、何か隠し事がある時に見せるケントの挙動不審なソワソワした動きが現れだす。
「何か悪い事しているんだろう?」
ケーシーの言葉に、ケントは、思わず息を詰まらせる。
「うっ・・・」
「お前、昔から、俺にはわかりやすい行動するよな?」
ケーシーが、目を細めて見つめ、ケントを追い込んでいく。
「な、何のことだ!」
たじろぎながらも、ケントは何とか誤魔化そうとしているが、ケーシーには、返って解りやすい反応に見えるのだった。
「アッシュの、横領疑惑が噂にある」
ケーシーがそう口にすると、何故か、ケントは落ち着きを見せたのである。
「なんだ、その事か?噂のまんま、あれはほぼ事実だ!」
呼び出されて事務所に来た時とは違い、ケントは落ち着きを払い、逆に余裕な態度をみせだし、小柄ななりの癖に足を組んで態度をデカくみせだす。
「事実とは!じゃぁ、本当にアッシュは横領していたのか!」
落ち着いたケントとは違い、今度は、ケーシーが動揺しだし、ケントに向けて大きな声を出していた。
「そ、そうだよ。よ、よくわからないが、書類が出たらしい」
ケーシーの威圧的な声に怯みながらも、ケントなりに言葉を絞り出す。
「よくわからないって。お前、自分の職場だろう?しかも、代理の立場なんだよな?」
呆気に取られて、ケーシーは従兄弟の顔を見つめる。
「な、なんだよ。俺は指示通りにやったんだ!お、お前の為にだな・・」
再び目を泳がし、ケントがそう呟く。
「どういう事だ!」
ケントの呟きを耳にしたケーシーが、顔を顰めながらケントに問い掛ける。
「マ、ママが、このままだと、お、お前が選挙に負けるから、何とかしないとって」
ケーシーの勢いに圧されて、ケントはポロリと隠し事を零した。
「ママって?叔母さんの指示か!」
ケーシーの大声に、ケントは首を横に何度も振り、否定を訴える。
「ママじゃない。お前の親父が、セ、セフィへ、そのいつものように動かしたんだよ」
不貞腐れた様にケントが話をし出していく。
「っていうか、お前だって、薄々はわかっていたんだろう?町での噂が本当だって?」
何かが吹っ切れたのか、ケントは、今まで見せていた態度から様変わりして、ニタニタと悪い顔を見せだした。
「俺達一族が生き抜く為には、この町の協力が必要なんだって。ママがさ、「平民議員」は町の代表でとっても偉いっていつも俺に話してくれていたんだ。ママが女じゃなかったら、ママが「平民議員」になっていたんだよな?そんなママの息子の俺も「平民議員」と変わらない立場なんだって。ママが言ってた」
ずっと、出来が悪いと密かに思っていた従兄弟は、相当、頭も性格も悪く育ったようだと、ケーシーはうっとりしながら話し込むケントを睨みつける。
ケントの母である叔母は、一人息子のケントをこの上ない位に溺愛している。
どれ程、溺愛していたかと言えば、例えば、ケントは町にある学校に通っていたが、成績も一番底辺を這う始末で、はっきり言って、役場勤めなんて逆立ちしても無理なのに、そこは叔母が、自分の叔父であるジムラルに頼み込み、裏から手を回して役場の採用を手にさせたりと、まあ、それが町中に広まり、ケントは見ず知らずの人からも「あれが縁故採用のケント」と指差して呼ばれる有様だ。
だが、ケントはそんなことには気にもしていない、こちらもマザコン炸裂な為に、愛するママの言葉には妄信的で他者の意見なんて、耳にすら入らない質の悪い輩であって、「縁故採用のケント」の言葉に怒りすらわかないようだ。
そんなケントの母である叔母は、ケーシーの父ウラスにも長子としての権限からか、絶対服従させる傍若無人ぷりで、普段、偉そうな態度である父が叔母には逆らえない姿を何度も見たくらいだ。
どうやら、幼い頃はそうでもなかったらしいが、どうも叔母が変わったのは、偏に、このケーシーの目の前にいるケントの馬鹿の行動からのようで、身内でも困惑を露わにしている。
「ママ、ママって、どんんだけママを出すんだ!」と、ケーシーは呆れてケントを見やる。
そんな出来が悪いケントを使ってまで、事を起こしている父の姿に、心底呆れてきた。
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実際は違っていたんだ。いや、もう随分前から知っていた。
でも、自分はこの家に生まれたからには、この道しかなくて、これにしがみ付かないといけないんだと、思わないと生きていられない。
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