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装甲車模型。
颯人が、いろいろ解説していたな。ほとんどこちらの耳をすり抜けていたけど。
キャタピラで動く。
水陸両用、湖の底を走ることもある、だったか。
今真上からではよく見えないけど、上面長方形の下に、キャタピラ付きの車輪があるんだろうか。
――それを動かせば、水底も走れるのか。
思っていると。
ギギ。
――動いた。
何となくだけど、自分の身体が移動しているという感覚がある。
下方で車輪とキャタピラが回転しているのも、何となく分かる。
体感とか触覚からではないけれど、本当に何となくだ。
下はかなり軟らかい土らしいけど、キャタピラが滑ることなく踏みしめているようだ。
ゆっくりゆっくり移動する。水面から突き出した視界の風景も、ゆっくり後ろへ過ぎていく。
水底から岸へとなだらかな斜面があったようで、それを登ることができた。上昇に合わせて潜望鏡も縮め、やがて全身が水から上がっていた。
岸辺の草地に上がり、あまり広くないけど明らかな平地で一息をつく。
――息苦しくなかったとはいえ、やっぱり陸地が落ち着くねえ。
それにしても。
おかしい、とあたしは思案し始めていた。
この身体、助手席で颯人が抱えていた模型そのものだと思ったけれど、違うみたいだ。
あたしがプレゼントしたあの模型には、モーターなど動力はついていなかった。
それに、映画の中での本物の装備には、潜望鏡、レーザー砲、簡易なマジックハンドなどがあって上面の円形スライド窓から出し入れできるという設定だけど、模型にはレーザー砲だけしかついていないと颯人が悔しがっていた。つまり模型に潜望鏡は付属していないのだ。
つまりこの身体、あの模型そのものではない。
大きさは実物より小さい模型サイズだけれど、装備としては模型にない本物に近いものがついている、ということになりそうだ。
――さすがは夢の中、ご都合主義。
ますます「夢の中説」が信憑性を増す。
一方でそれに反して、見えるものはいっそう現実感満載だ。
周囲は鬱蒼とした林、密生する草々。今さっきまで潜っていた、静かに佇む池。
相変わらず、手にとれそうなほどに鮮明だ。
それも、木や草にしてもこれまで見たことのない、種類の名前も浮かばない外観のようだ。それがずっと、夢の中定番のようにぼやけたり消えたりすることなく、ずっと変わらず鎮座している。
さらに。水から上がって、気がついた。
周囲に、音がある。
さわさわと木の梢や草々が風にそよぐ。遠く、鳥が鳴いている。
ポチャリ、と池に魚が跳ねる。
見事なまでに違和感のない、自然の中、森の水辺の音声だ。
ただそう思わされているだけかもしれないけど。
――何とも見事な、現実と違和感のない夢の中。
それでも何処となく安心して、あたしは寛ぎの気分になっていた。
今のところ周囲に、身の危険を感じる類いのものはなさそうだ。
ここは一度落ち着いて、現状を考えてみるべきではないか。
十中八九、これは夢の中だと思うんだけど。もし万が一現実だとしたら、今後の行動方針を検討しなければならない。
――現状を、整理してみよう。
あたしは、宮嶋悠姫、32歳女性、独身。
地球の島国、日本国の地方都市在住、現在の職業はローカルタウン誌のフリーライター。地域のいろいろな職業や趣味講座などの、突撃体験レポート記事連載を抱えている。
1LDKのアパートに独り暮らし、比較的近所に住む姉夫婦と甥の家族とはかなり頻繁に交流。
こんな事態に至る直前の記憶は、甥の小鹿原颯人12歳と入学祝いを買いに隣市へ赴き、帰りの運転時に対向車がすぐ前に迫ってきた光景だ。
――うん、記憶に障害はなさそうだ。
颯人が、いろいろ解説していたな。ほとんどこちらの耳をすり抜けていたけど。
キャタピラで動く。
水陸両用、湖の底を走ることもある、だったか。
今真上からではよく見えないけど、上面長方形の下に、キャタピラ付きの車輪があるんだろうか。
――それを動かせば、水底も走れるのか。
思っていると。
ギギ。
――動いた。
何となくだけど、自分の身体が移動しているという感覚がある。
下方で車輪とキャタピラが回転しているのも、何となく分かる。
体感とか触覚からではないけれど、本当に何となくだ。
下はかなり軟らかい土らしいけど、キャタピラが滑ることなく踏みしめているようだ。
ゆっくりゆっくり移動する。水面から突き出した視界の風景も、ゆっくり後ろへ過ぎていく。
水底から岸へとなだらかな斜面があったようで、それを登ることができた。上昇に合わせて潜望鏡も縮め、やがて全身が水から上がっていた。
岸辺の草地に上がり、あまり広くないけど明らかな平地で一息をつく。
――息苦しくなかったとはいえ、やっぱり陸地が落ち着くねえ。
それにしても。
おかしい、とあたしは思案し始めていた。
この身体、助手席で颯人が抱えていた模型そのものだと思ったけれど、違うみたいだ。
あたしがプレゼントしたあの模型には、モーターなど動力はついていなかった。
それに、映画の中での本物の装備には、潜望鏡、レーザー砲、簡易なマジックハンドなどがあって上面の円形スライド窓から出し入れできるという設定だけど、模型にはレーザー砲だけしかついていないと颯人が悔しがっていた。つまり模型に潜望鏡は付属していないのだ。
つまりこの身体、あの模型そのものではない。
大きさは実物より小さい模型サイズだけれど、装備としては模型にない本物に近いものがついている、ということになりそうだ。
――さすがは夢の中、ご都合主義。
ますます「夢の中説」が信憑性を増す。
一方でそれに反して、見えるものはいっそう現実感満載だ。
周囲は鬱蒼とした林、密生する草々。今さっきまで潜っていた、静かに佇む池。
相変わらず、手にとれそうなほどに鮮明だ。
それも、木や草にしてもこれまで見たことのない、種類の名前も浮かばない外観のようだ。それがずっと、夢の中定番のようにぼやけたり消えたりすることなく、ずっと変わらず鎮座している。
さらに。水から上がって、気がついた。
周囲に、音がある。
さわさわと木の梢や草々が風にそよぐ。遠く、鳥が鳴いている。
ポチャリ、と池に魚が跳ねる。
見事なまでに違和感のない、自然の中、森の水辺の音声だ。
ただそう思わされているだけかもしれないけど。
――何とも見事な、現実と違和感のない夢の中。
それでも何処となく安心して、あたしは寛ぎの気分になっていた。
今のところ周囲に、身の危険を感じる類いのものはなさそうだ。
ここは一度落ち着いて、現状を考えてみるべきではないか。
十中八九、これは夢の中だと思うんだけど。もし万が一現実だとしたら、今後の行動方針を検討しなければならない。
――現状を、整理してみよう。
あたしは、宮嶋悠姫、32歳女性、独身。
地球の島国、日本国の地方都市在住、現在の職業はローカルタウン誌のフリーライター。地域のいろいろな職業や趣味講座などの、突撃体験レポート記事連載を抱えている。
1LDKのアパートに独り暮らし、比較的近所に住む姉夫婦と甥の家族とはかなり頻繁に交流。
こんな事態に至る直前の記憶は、甥の小鹿原颯人12歳と入学祝いを買いに隣市へ赴き、帰りの運転時に対向車がすぐ前に迫ってきた光景だ。
――うん、記憶に障害はなさそうだ。
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