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42 通信した 2
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昨夜までの四夜も、エトヴィンにというよりたまたま近くに人間がいて通じることはないか、と試してみたものだ。
『私たちは昨日森を出て、伯爵領で護衛を追加して王都へ向け旅立ったところです。予定していたように、ヘルビヒはミーマで一人先行させました』
『そうか、そちらは予定通りか。よかった』
『ハル殿は今どちらに? 暴風鷲からは逃れられたのですか』
『ああ。逃れることはできたが、森の中に落下して場所が分からずにいるところだ。そちらからはかなり南方に来ていると思われるので、とりあえず西へ向かって森を出ることを目指している』
『ああ、確とは言えませんが、それがいいと思われます。森の西へ出て街道を見つけて北へ向かえば、王都に通じるはずです』
『その径路で、王都を目指そうと思う』
『ぜひ、そうしてください。何も助力はできませんが、王都でお待ちできればと思います』
『こうして話ができて、何か情報がもらえればありがたい』
『そういうことでしたら、何なりと。しかし今、何故こうして話ができているのでしょう』
『まったく、訳が分からない。昨夜までは何度試してもうまくいかなかった』
『今現在、私たちはおそらく数百ケター(キロメートル)離れているはずなんですよね。以前の実験では一ケター(キロメートル)程度が限界だったはずで』
『そうだったな』
『前回話してから五日ですか。もしかしてこうして五日程度の間を空ければ、遠距離でも可能だとか?』
『ああ――以前話したことのある相手限定で、とかか。まったく分からないが、可能性としてはあるかもしれない』
とにかくこの夢の中での会話機能、詳細についてはまったく分からない。これを搭載してくれたのが神なのか他のものなのかも一切分からず、説明もなければ、いわゆるラノベみたいなのに前例も思いつかない。結局、一つ一つ機能を試していくだけだ。
その意味では不満もないではないけど、他に意思疎通の手段を持たない身としては、この上なくありがたいということになる。
――いや、もし神様がこの能力を授けてくれたんだとしたら、何でスピーカーとか搭載してふつうに会話できるようにしてくんなかったの、と一言言いたくもなるけどね。
それでもこうして何百キロ離れて通信ができることを知ると、ありがたいなんてもんじゃない。全能ヒャッハー主人公にもなかなかできることじゃなかんべ、と自慢したくなる。
まあその辺は、置いといて。
当面気になる薬草運搬について、突っ込んで訊いておくことにする。
エトヴィンたち一行は、薬草を十枚ずつ六つに分けて運ぶことにしていた。
先日の鷲魔獣の襲来で、背負い袋に入れていたその二つ分を奪われた。あの鷲野郎の種族は、そうした人間の荷物を奪う習性があるんだそうな。
もしかすると鷲の二度目の攻撃は残ったもう一つの背負い袋を狙ったのかもしれないけど、何の弾みかまちがいか、あたしがその爪に捕まってしまったことになる。
結果エトヴィンたちは、薬草十枚組四つを携えて森を出た。
そのうちの二つをヘルビヒに持たせてミーマで先行させ、護衛を増やしたエトヴィンが二つを所持して徒歩で王都に向かう途中、というわけだ。
王都まで徒歩で半月程度。およその目安で、その四つのうち一つでもひと月以内に運搬できれば、病気の少年を救うことができるという見当だ。
かなり状況は楽観できる見通しになったけれど、これまでの彼らの異常な不運さを思えば、まだまだ安心できない。
とは言え数百キロ離れたあたしとしては、無事その使命が完遂されることを祈るしかできない。
『無事を祈っている』
『ええ、ありがとうございます。ハル殿も是非無事にその森を抜け、王都に到着できますように』
ということで、こちらの行く末に関しても情報を得ておくことにする。
もちろん正確な場所は分かっていないのだけど、およそ中ツ森の南西部一帯には、大きな川や深い谷などの存在は知られていない。何にせよまだ人に知られていないところの多い秘境なのだから確かなことは言えないが、ある程度平地を辿って西へ抜けられる公算が高いということだ。
西側で森に接する領地は、南からティルピッツ侯爵領、キュンツェル伯爵領となっていて、その北は森から離れて王都のある王領に至る。もしティルピッツ侯爵領の中央部付近で森を出たとしたら、王都まで徒歩で二十日程度の道のりか。
その侯爵と伯爵の領はどちらも国内有数の小麦の生産地で、農村が多い。森に近い辺りの街道を辿る限り、大きな町に寄ることなくいくつかの農村を抜けるだけで北上できるだろう。
そういった現状これ以上望むべくもないな情報をもらい、頭に焼き付けておくことにする。
『私たちは昨日森を出て、伯爵領で護衛を追加して王都へ向け旅立ったところです。予定していたように、ヘルビヒはミーマで一人先行させました』
『そうか、そちらは予定通りか。よかった』
『ハル殿は今どちらに? 暴風鷲からは逃れられたのですか』
『ああ。逃れることはできたが、森の中に落下して場所が分からずにいるところだ。そちらからはかなり南方に来ていると思われるので、とりあえず西へ向かって森を出ることを目指している』
『ああ、確とは言えませんが、それがいいと思われます。森の西へ出て街道を見つけて北へ向かえば、王都に通じるはずです』
『その径路で、王都を目指そうと思う』
『ぜひ、そうしてください。何も助力はできませんが、王都でお待ちできればと思います』
『こうして話ができて、何か情報がもらえればありがたい』
『そういうことでしたら、何なりと。しかし今、何故こうして話ができているのでしょう』
『まったく、訳が分からない。昨夜までは何度試してもうまくいかなかった』
『今現在、私たちはおそらく数百ケター(キロメートル)離れているはずなんですよね。以前の実験では一ケター(キロメートル)程度が限界だったはずで』
『そうだったな』
『前回話してから五日ですか。もしかしてこうして五日程度の間を空ければ、遠距離でも可能だとか?』
『ああ――以前話したことのある相手限定で、とかか。まったく分からないが、可能性としてはあるかもしれない』
とにかくこの夢の中での会話機能、詳細についてはまったく分からない。これを搭載してくれたのが神なのか他のものなのかも一切分からず、説明もなければ、いわゆるラノベみたいなのに前例も思いつかない。結局、一つ一つ機能を試していくだけだ。
その意味では不満もないではないけど、他に意思疎通の手段を持たない身としては、この上なくありがたいということになる。
――いや、もし神様がこの能力を授けてくれたんだとしたら、何でスピーカーとか搭載してふつうに会話できるようにしてくんなかったの、と一言言いたくもなるけどね。
それでもこうして何百キロ離れて通信ができることを知ると、ありがたいなんてもんじゃない。全能ヒャッハー主人公にもなかなかできることじゃなかんべ、と自慢したくなる。
まあその辺は、置いといて。
当面気になる薬草運搬について、突っ込んで訊いておくことにする。
エトヴィンたち一行は、薬草を十枚ずつ六つに分けて運ぶことにしていた。
先日の鷲魔獣の襲来で、背負い袋に入れていたその二つ分を奪われた。あの鷲野郎の種族は、そうした人間の荷物を奪う習性があるんだそうな。
もしかすると鷲の二度目の攻撃は残ったもう一つの背負い袋を狙ったのかもしれないけど、何の弾みかまちがいか、あたしがその爪に捕まってしまったことになる。
結果エトヴィンたちは、薬草十枚組四つを携えて森を出た。
そのうちの二つをヘルビヒに持たせてミーマで先行させ、護衛を増やしたエトヴィンが二つを所持して徒歩で王都に向かう途中、というわけだ。
王都まで徒歩で半月程度。およその目安で、その四つのうち一つでもひと月以内に運搬できれば、病気の少年を救うことができるという見当だ。
かなり状況は楽観できる見通しになったけれど、これまでの彼らの異常な不運さを思えば、まだまだ安心できない。
とは言え数百キロ離れたあたしとしては、無事その使命が完遂されることを祈るしかできない。
『無事を祈っている』
『ええ、ありがとうございます。ハル殿も是非無事にその森を抜け、王都に到着できますように』
ということで、こちらの行く末に関しても情報を得ておくことにする。
もちろん正確な場所は分かっていないのだけど、およそ中ツ森の南西部一帯には、大きな川や深い谷などの存在は知られていない。何にせよまだ人に知られていないところの多い秘境なのだから確かなことは言えないが、ある程度平地を辿って西へ抜けられる公算が高いということだ。
西側で森に接する領地は、南からティルピッツ侯爵領、キュンツェル伯爵領となっていて、その北は森から離れて王都のある王領に至る。もしティルピッツ侯爵領の中央部付近で森を出たとしたら、王都まで徒歩で二十日程度の道のりか。
その侯爵と伯爵の領はどちらも国内有数の小麦の生産地で、農村が多い。森に近い辺りの街道を辿る限り、大きな町に寄ることなくいくつかの農村を抜けるだけで北上できるだろう。
そういった現状これ以上望むべくもないな情報をもらい、頭に焼き付けておくことにする。
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