チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

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 森の中を歩き出して――五日が過ぎた。
 いきなり時間をすっ飛ばして申し訳ない――誰に謝ってる?――のだけれど、仕方ない。何しろ特筆すべきことがないというか、何日過ぎても代わり映えがしないというか。

――本当に先へ進んでいるのかどうかさえ、確信が持てないんだよね。

 何か森の魔女とか狐狸の類いとかに化かされて同じところをぐるぐる回っているのだとしても、自覚できないんじゃないか。一応少しずつ、周囲の景色は変わっているんだけどさ。
 それにしたって、子どもより低い目線からの観察で、どうにもしっくりこない。
 ずっと、木々と草の茂みばかりが続く。
 何となく地球の日本で入ったことのある森林とそれほど違和感がないので、南へ来たとは言っても熱帯のジャングルとかじゃなく温帯のそれじゃないかという見当。とは言え『鑑定』してみても、覚える気も起きないカタカナ名称とともに【雑木】【雑草】と出るばかりなんだもの。本当に、何の興味も向けようがない。
 たまに【食用可】という表示の出る木の実なんかが見えることもあるけど、あたしには関係ないしね。ラノベに頻出の着の身着のまま森に追放された主人公なんかだったら、食料発見と狂喜乱舞するとこなんだろうけど。

――飲食不要ってのはメチャクチャ助かるけど、物足りなくもあるよねえ。

 森でのサバイバル定番、木の実やキノコを見つけたり、獣を狩ったりの冒険が必要ないわけだ。ついでに言うと、寝床や雨よけの場所の確保も必要ない。その辺の点だけなら、万能魔法使い手でヒャッハーする主人公に負けていないかも。
 また今までのところ、凶暴な魔獣などにも遭遇していない。
 小さな鼠や兎みたいなのとは、時たま出くわす。それでもこちらが停止していれば、何の関心も見せずに通り過ぎていく。
 一度だけやや大きな直角兎が立ち止まって、こちらをつついてきた。前の兎野郎といいこいつといい、餌にもならない物体に興味を示す種族なんだろうか。
 前回の忌々しさもあったので、いきなり水鉄砲を顔にお見舞いしてやると、キャンキャン尻尾を巻いて逃げ出していった。いや、犬に喩える見てくれじゃないんだけどさ。
 その他今のところ、進行を妨げられる出来事はない。ただただ草木の茂る低地をひた走るばかり。一回出くわした川はそれほど大きくもなく、水中走行でことなく渡河できた。
 この潜望鏡なのか何とかスコープなんて命名されるかもしれない機能のせいなのか、人間の肉眼より暗闇での視認度は高く、場合によって火魔法で照明を作れるので、夜間走行もあまり不自由がない。

――気をつけるのは、方向をまちがわないことと、充電不足に陥らないこと、かな。

 それだって、たいして悩むこともない。
 以前から試してきたように、充電満タンで二十時間超走行を続けられる。そこから二~三時間の充電で満タンに戻る。森の中であれば強弱の差はあれ、どこでも充電は可能なようだ。
 ということであたしは、ほぼぎりぎり充電切れまで動いた後、うまく身を隠す場所を見つけて充電することにしている。そうして毎日、午前0時を目処めどに走行再開する。たいした理由はないけど、一日の区切りを曖昧にしたくないからね。
 そうして今夜も、21時過ぎに充電に入った。
 この時間は大人しく動かず、ぼうっと考えごとをするだけ。
 あの鷲野郎の誘拐に遭うまでの数日の習慣で、ぼんやり念じてはみる。
 これまでの四夜は、何も起きなかったんだけど。この夜は――驚いた。
 周囲が、馴染みのぼんやり薄闇空間に変わったんだ。
 見ると、こちらも見覚えのあるローブ姿の男が座っている。

『エトヴィンさんか?』
『おお、ハル殿。無事でしたか?』
『まあ、身体は無事だが。あんた今、何処にいるんだ?』

 こればかりは、不思議でならない。
 今までのこの夢会話は、近くでないと成立しなかったんだ。一度、やっぱりそうした実験の好きなエトヴィンの協力で離れて試してみたんだけど、推定一キロメートルほど距離をとると念じても通じなかった。

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