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しかしそれでも。狭い島国の日本とは、やっぱりわけが違うみたいだ。人の速歩程度の速度で半日以上歩き続けても、まったく人間らしい姿と出会わない。森の中と違って鼠や兎とさえ遭わないので、何となく孤独感を噛みしめる道行きになった。
日が暮れて夜間歩行になっても山中より障害物の心配が少ないのは、ありがたい。
時刻が21時を過ぎたところで道を逸れ、近くの林に入って休憩することにした。調べながら移動したところ、やっぱり木の近くの方が充電に適しているみたいなんだ。
0時を機に、進行再開。やっぱり街道は歩きやすい、と実感する。
ようやく人の姿を見たのは、翌日の午過ぎになってからだった。ただ、姿を見かけたなどという平和な感覚じゃない。
「わああーー!」
「急げーー!」
「止まるなーー」
数十メートルほど右手前方に、いきなり絶叫めいた音声が上がった。何だと思う暇もなく、声とともに三人の男の姿が右から左へ街道を横切り全速で駆けていく。
――何だ何だ?
当然、右手の森の方に何か恐怖に駆られるみたいなものがあったのだろう。
そのまま前進して右手を見やる、と。
何とも奇天烈な、しかし何処かでビジュアルを見たことがあるみたいな、そんなものが駆け出してきていた。
おそらく、ふつうの人間の大人よりはかなり小柄。頭髪体毛はほとんどなく、全身緑の肌。腹がぽっこり出て、腰蓑を纏った二足歩行。手に太めの木の棒を握ったそんなのが、五体ほど。
ギャギャギャ、などと甲高い奇声を上げている。
――現実にお目にかかったことはないけど、マンガやイラストで嫌というほど見たような。
まさかまさかね、と思いながら『鑑定』してみると。
【ゴブリンと呼ばれる魔物。雑食で人肉を食らう。人間と一対一では脅威は少ないが、大きな集団になると人の集落を滅ぼす例もある。人間女性を攫い繁殖の苗床にする。人の持つ道具等に興味を示し、集める習性がある。】
――…………。
いや、ここに来てゴブリンの登場?
その種のゲームやラノベに必ず登場すると言っていい、あれ?
まあ確かに、鑑定結果はラノベ等のものと比較してほぼ差異がない。
しかし何だって、森を出た今になってこんな異世界定番の存在と出くわすんだ? 今まで遭った魔獣はこんなポピュラーな名称でなく、妙な漢字の組み合わせみたいに翻訳されていたものばかりだったのに。
――などと。のんびり考察している暇はないことに気がついた。
今の『鑑定』様のご教示は、いつになく詳細だったけど。おそらく最後の一文は、今のあたしに必要な情報だという理由からだったらしい。
かなりの速度で駆け、街道を横切ろうとしたゴブリン五人衆は、数メートル手前まで近づいていたあたしを見つけ、足を急停止したんだ。
――人の持つ道具――傍目、あたしはそう目に映るだろうなあ。
たった今まで人間三人を追っていたのは「人肉を食らう」という理由からだろう。一方あたしを見て足を止めたのは、「道具等に興味」の故か。
――いやふつうそういうとき、餌の方への興味が勝つもんじゃないかい。
などと文句を言っても仕方ない。
五人衆は顔を見合わせ、ギャギャギャと声を交わし、こちらへ歩み寄ってくる。
人間道具コレクションにあたしを加える決断をした、ということか。
こいつらに捕まっておそらく破壊とか傷つけられる心配はないだろうけど、蔵みたいなところに密閉されるなどしたら面倒でしかない。ここは、逃げる一手だろう。
急いであたしは、横手の草叢に駆け込んだ。
草をかき分け踏みしめ、奥へと逃げる。
後方から、ギャギャギャという金切り声が近づいてくる。
日が暮れて夜間歩行になっても山中より障害物の心配が少ないのは、ありがたい。
時刻が21時を過ぎたところで道を逸れ、近くの林に入って休憩することにした。調べながら移動したところ、やっぱり木の近くの方が充電に適しているみたいなんだ。
0時を機に、進行再開。やっぱり街道は歩きやすい、と実感する。
ようやく人の姿を見たのは、翌日の午過ぎになってからだった。ただ、姿を見かけたなどという平和な感覚じゃない。
「わああーー!」
「急げーー!」
「止まるなーー」
数十メートルほど右手前方に、いきなり絶叫めいた音声が上がった。何だと思う暇もなく、声とともに三人の男の姿が右から左へ街道を横切り全速で駆けていく。
――何だ何だ?
当然、右手の森の方に何か恐怖に駆られるみたいなものがあったのだろう。
そのまま前進して右手を見やる、と。
何とも奇天烈な、しかし何処かでビジュアルを見たことがあるみたいな、そんなものが駆け出してきていた。
おそらく、ふつうの人間の大人よりはかなり小柄。頭髪体毛はほとんどなく、全身緑の肌。腹がぽっこり出て、腰蓑を纏った二足歩行。手に太めの木の棒を握ったそんなのが、五体ほど。
ギャギャギャ、などと甲高い奇声を上げている。
――現実にお目にかかったことはないけど、マンガやイラストで嫌というほど見たような。
まさかまさかね、と思いながら『鑑定』してみると。
【ゴブリンと呼ばれる魔物。雑食で人肉を食らう。人間と一対一では脅威は少ないが、大きな集団になると人の集落を滅ぼす例もある。人間女性を攫い繁殖の苗床にする。人の持つ道具等に興味を示し、集める習性がある。】
――…………。
いや、ここに来てゴブリンの登場?
その種のゲームやラノベに必ず登場すると言っていい、あれ?
まあ確かに、鑑定結果はラノベ等のものと比較してほぼ差異がない。
しかし何だって、森を出た今になってこんな異世界定番の存在と出くわすんだ? 今まで遭った魔獣はこんなポピュラーな名称でなく、妙な漢字の組み合わせみたいに翻訳されていたものばかりだったのに。
――などと。のんびり考察している暇はないことに気がついた。
今の『鑑定』様のご教示は、いつになく詳細だったけど。おそらく最後の一文は、今のあたしに必要な情報だという理由からだったらしい。
かなりの速度で駆け、街道を横切ろうとしたゴブリン五人衆は、数メートル手前まで近づいていたあたしを見つけ、足を急停止したんだ。
――人の持つ道具――傍目、あたしはそう目に映るだろうなあ。
たった今まで人間三人を追っていたのは「人肉を食らう」という理由からだろう。一方あたしを見て足を止めたのは、「道具等に興味」の故か。
――いやふつうそういうとき、餌の方への興味が勝つもんじゃないかい。
などと文句を言っても仕方ない。
五人衆は顔を見合わせ、ギャギャギャと声を交わし、こちらへ歩み寄ってくる。
人間道具コレクションにあたしを加える決断をした、ということか。
こいつらに捕まっておそらく破壊とか傷つけられる心配はないだろうけど、蔵みたいなところに密閉されるなどしたら面倒でしかない。ここは、逃げる一手だろう。
急いであたしは、横手の草叢に駆け込んだ。
草をかき分け踏みしめ、奥へと逃げる。
後方から、ギャギャギャという金切り声が近づいてくる。
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