チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

文字の大きさ
73 / 122

73 検討した 1

しおりを挟む
『ハル殿は、街道を真っ直ぐ北上しているのですね。明日の朝すぐ、カルステンに命じてミーマで迎えに走らせましょう。ミーマは人の足の倍以上の速度が出るわけなので、単純計算でハル殿と出会うまでの時間は三分の一以下になります。そこからハル殿を背負って戻ることにしてさらに三分の一、合わせて三分の二以下の時間で王都に着くことになります』
『なるほど』
『往きのカルステンは王領内で途中ミーマを交換する場所があるので、ほぼ休みなく走らせることができます。伯爵領に入るとそうした場所がなく、伯爵にもできるだけこの騒動は知られたくないので秘密裏に事を運ぶことにして、ハル殿を拾った帰り道では一泊野宿で休むことになります。それでもその後またミーマを交換しながら走り続け、三日後には王城に戻る算段が立つと思われます』
『なるほど、了解した』
『ハル殿は他の通行人に見つからないように進行しているのでしたね。カルステンと出会うのは、二日後になると思います。ミーマの首と本人の頭に赤い布を巻かせて目印にしたいと思いますので、それを見て合図をしてください』
『分かった』

 エトヴィンはあらん限りの知恵を絞って遺漏なく事を運ぼうと、腕組みで唸っている。まずまちがいなく、これが王子を救う最後の希望なのだなら、当然だ。
 とにかくこれまでの経過を振り返ると、この薬草を王宮に持ち帰るに当たって、どんな妨害が起きるか予想もつかない。その妨害が人間の意思によるものか天災や偶然に過ぎないのかさえ判断がつかないのだから、ほとんど予防のしようもないんだ。
 この件についてはできるだけ知る者が少ないようにしよう、カルステン一人にだけ内密に伝え、本人の出立も自宅に帰る装いで人の注意を惹かないようにしよう、と打ち合わせる。
 これ以上気の回しようはないだろうというまで検討を加え、一息つく。
 話題を変えて、あたしは問いかけた。

『ところで昨日森の中で、地面龍アースドラゴンと呼ばれる巨大トカゲに多数の兵士が襲われているのを見たんだが、何か情報はあるのだろうか』
『はあ、地面龍アースドラゴンですか? どういう事態ですか、それは』

 一通りの顛末を話すと、エトヴィンはうーーんと考え込んでしまった。
 そうしてから、躊躇い混じりの口調で唸り声を漏らす。

『ハル殿……これも、くれぐれも他言無用でお願いしたいのですが……』
『例によってそれは、私にとって誓うまでもないことだが。どういうことだろう』
『現在、我が国の王太子殿下が行方不明なのです』
『何だって?』

 いきなり、とんでもなく重大な話が出てきた。
 王宮内でも箝口令が敷かれている案件だということで、もちろんあたしのような部外者にたやすく明かせることじゃない。しかしある程度情報を伝えてでも詳細を知るのは、急務だということのようだ。

『その兵士らしき者たち、カルステンたちと似た装備だということですね?』
『ああ。私はそうしたものに詳しくないが、かなり似た格好に見えた』
『カルステンたちは我がラングハンス伯爵領兵の装備を基本にした身なりでしたが、王宮の近衛兵のものはかなりそれと似ているのです。その現場はキュンツェル伯爵領内ということでしょうが、そちらの伯爵領兵のものは青色が基調で、かなり見かけが異なります』
『ということは、私が見たのは近衛兵である可能性が高い、と』
『はい。そして王太子殿下は、近衛兵十名余りを伴って誰にも知れず王都を出たらしい、ということです』
『その理由に、誰も見当がつかないわけか』
『はい。国王陛下も、王太子妃殿下も、何も聞いていないと』
『理由は分からないが、王太子殿下が兵を連れてあの森に現れる可能性はある、ということになるんだろうか』
『少なくとも、時間の点では整合しますね。私たちが王宮に戻った時点で、五日前から殿下の行方が分からないという話でしたから。その森の惨事まで六日ということになります。徒歩移動でも可能でしょう』
『ふうん』

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~

eggy
ファンタジー
 もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。  村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。  ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。  しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。  まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。  幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜

naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。 ※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。 素材利用 ・森の奥の隠里様 ・みにくる様

最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅

散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー 2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。 人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。 主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?

秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。 ※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。 ※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

異世界の片隅で引き篭りたい少女。

月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!  見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに 初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、 さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。 生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。 世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。 なのに世界が私を放っておいてくれない。 自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。 それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ! 己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。 ※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。 ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。  

処理中です...