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『それにしても、殿下の行動理由が分からない上に、地面龍ですか。ふつう地上では見られることのない、ダンジョンの中にしか棲息しないはずの魔物です』
『そんなものが、いるはずのない森の中に現れた?』
『その事実だけでも、国の存亡が揺るがされかねない重大事です。ハル殿がそれを征伐したというのも理解を超えていますが、知られている限りでどんな武器も通じないと言われ、通常の兵力何百何千をもってしても傷つけることが適うものか疑わしい、ダンジョンの中でもほぼ最強と位置づけられる存在なのです。そのままにしていたら町がいくつも、へたをすると国の大半が滅ぼされても不思議ではない』
『何とも』
こちらとしては端から強力な武器など持ち合わせていないので、体内の水分を奪うという禁じ手のような対処をするしかなかったわけだけど。
確かにあれに真っ向からぶつかったら、どれだけ兵力を投入しても無駄かもしれない。
『この件については国軍に情報を回して、即刻調査をさせましょう。王太子殿下の行方を追うこととその地面龍の実際について、どちらも急を要す案件です』
『そうしてくれ』
『それにしても、十名以上が惨殺、二名が重傷だが命はあるかもしれない、ということですか。その二名のどちらかが王太子殿下である可能性はあるでしょうか』
『顔も服装も私に知識がないのだから、何とも言えない。ただその二人に身分の上下差はあったように思う』
『希望は持てるかもしれませんね』
よくあるフィクションの中のように、大勢が命を失ったうちでたまたま重要人物だけが生き延びる、という偶然が起きていればということになるか。
これがもし、相手が邪悪な魔人や悪魔などで、人間をいたぶる目的で重要人物を後回しにした、ということなら話も分かるけど。それほど知恵を持ち合わせていないらしき魔物では、それも期待できないんじゃないか。
まあ、兵士たちが一致団結して王太子の命だけは護ろうと行動した結果、という可能性ならあるだろうか。
『キュンツェル伯爵領でその事実を把握しているか、というのも重大なところですが。かの伯爵は派閥的には中立なのですが、その分時勢の流れ次第で王太子殿下や王子殿下の死を願う方に与しないとも言い切れないので、慎重な対処が必要なのです』
『まあしかし、そちらを当たらないわけにもいかないだろう。あの二名が生き延びていたとして、その伯爵に保護されている可能性もある』
『そうですね、そこも慎重に当たることになると思います。とは言え私の立場として第三王子殿下の周辺ではある程度意見が通りますが、王太子殿下の方や軍関係とはほとんど繋がりがありません。今の件も情報を伝えるだけですね』
『そうなんだ』
『とにかくハル殿には、その薬草の運搬、くれぐれもよろしくお願いいたします』
『分かった』
ともかくも国にとって重大なのは王太子の行方なのだろうけど、我々にとって最優先は第三王子の治療だ。もしあたしが所持している薬草が失われる事態になったら、その希望が潰えることになってしまう。
カルステンが迎えに来る件について細々と打ち合わせをくり返すうち、この夜の通信は途絶えた。
充電満タンを確認して、あたしは夜の森から走り出した。
日付が変わって、カルステンと出会う予定は翌日ということになる。それまでにできるだけ王都に近づいておきたい。
その日一日中、休むことなく街道をひた走った。
ただ、道を行く人に見咎められないことだけに留意して。
領都が近いせいだろう、数日前までよりかなり街道は人通りが絶えない。しかしそれも遠ざかるにつけ、少しずつ疎らになっていくようだ。
陽が暮れる頃、街道は一つの村の中央を抜けるらしい様相になった。
それほど人口が多いようではないけど。暮れ始めた中に何やら喧噪が満ちて聞こえる。
『そんなものが、いるはずのない森の中に現れた?』
『その事実だけでも、国の存亡が揺るがされかねない重大事です。ハル殿がそれを征伐したというのも理解を超えていますが、知られている限りでどんな武器も通じないと言われ、通常の兵力何百何千をもってしても傷つけることが適うものか疑わしい、ダンジョンの中でもほぼ最強と位置づけられる存在なのです。そのままにしていたら町がいくつも、へたをすると国の大半が滅ぼされても不思議ではない』
『何とも』
こちらとしては端から強力な武器など持ち合わせていないので、体内の水分を奪うという禁じ手のような対処をするしかなかったわけだけど。
確かにあれに真っ向からぶつかったら、どれだけ兵力を投入しても無駄かもしれない。
『この件については国軍に情報を回して、即刻調査をさせましょう。王太子殿下の行方を追うこととその地面龍の実際について、どちらも急を要す案件です』
『そうしてくれ』
『それにしても、十名以上が惨殺、二名が重傷だが命はあるかもしれない、ということですか。その二名のどちらかが王太子殿下である可能性はあるでしょうか』
『顔も服装も私に知識がないのだから、何とも言えない。ただその二人に身分の上下差はあったように思う』
『希望は持てるかもしれませんね』
よくあるフィクションの中のように、大勢が命を失ったうちでたまたま重要人物だけが生き延びる、という偶然が起きていればということになるか。
これがもし、相手が邪悪な魔人や悪魔などで、人間をいたぶる目的で重要人物を後回しにした、ということなら話も分かるけど。それほど知恵を持ち合わせていないらしき魔物では、それも期待できないんじゃないか。
まあ、兵士たちが一致団結して王太子の命だけは護ろうと行動した結果、という可能性ならあるだろうか。
『キュンツェル伯爵領でその事実を把握しているか、というのも重大なところですが。かの伯爵は派閥的には中立なのですが、その分時勢の流れ次第で王太子殿下や王子殿下の死を願う方に与しないとも言い切れないので、慎重な対処が必要なのです』
『まあしかし、そちらを当たらないわけにもいかないだろう。あの二名が生き延びていたとして、その伯爵に保護されている可能性もある』
『そうですね、そこも慎重に当たることになると思います。とは言え私の立場として第三王子殿下の周辺ではある程度意見が通りますが、王太子殿下の方や軍関係とはほとんど繋がりがありません。今の件も情報を伝えるだけですね』
『そうなんだ』
『とにかくハル殿には、その薬草の運搬、くれぐれもよろしくお願いいたします』
『分かった』
ともかくも国にとって重大なのは王太子の行方なのだろうけど、我々にとって最優先は第三王子の治療だ。もしあたしが所持している薬草が失われる事態になったら、その希望が潰えることになってしまう。
カルステンが迎えに来る件について細々と打ち合わせをくり返すうち、この夜の通信は途絶えた。
充電満タンを確認して、あたしは夜の森から走り出した。
日付が変わって、カルステンと出会う予定は翌日ということになる。それまでにできるだけ王都に近づいておきたい。
その日一日中、休むことなく街道をひた走った。
ただ、道を行く人に見咎められないことだけに留意して。
領都が近いせいだろう、数日前までよりかなり街道は人通りが絶えない。しかしそれも遠ざかるにつけ、少しずつ疎らになっていくようだ。
陽が暮れる頃、街道は一つの村の中央を抜けるらしい様相になった。
それほど人口が多いようではないけど。暮れ始めた中に何やら喧噪が満ちて聞こえる。
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