チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

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 明日にはカルステンと合流の予定でできるだけ早く王都に着きたいのだから、こんなところで無駄な時間を使いたくはない。
 それでも今行っている充電はあと一時間ほどで終了し、日付が変わるまでに二時間ほどの余裕がある。この時間内に事を終えるなら、ほとんど時間のロスとはならないだろう。
 考えたように、この付近の村々はもちろん王都の方まで被害拡大の恐れがあるのなら、できることならしておきたい。

――ただ、本当にあたしに何かできるか、だよね。

 魔物の征伐みたいなことは、これまで何度かしてきたわけだけど。まあ幸運と言うか何と言うか、ある程度は成果を上げてきたわけだけど。
 改めて見直して、あたしのできることは限られているんだよなあ。
 水鉄砲。
 風刃。
 水魔法で水分を奪う。
 とまあ、この程度だ。
 あとまあ今回の場合、土魔法でバケツ一杯分くらいの土を移動できる、という能力は使えるかもしれない。
 それでも一つ一つ検証してみると。
 水鉄砲――もともと魔物相手には目にぶつけるくらいしか効果が生まれないんだけど。デカモグラ魔物は目があるやらないやら、あっても小さく、開いている保証はないようだ。
 風刃――敵の表皮は硬く、剣も槍も通らない由。まずこないだのトカゲ相手の場合と同様、蚊に刺された程度の刺激しか与えられないんじゃないか。
 水分を奪う――これを実現するには、相手の口がそこそこ大きく開いている必要がある。前回はトカゲが火を噴く準備のために口を開き続けていたのでうまくいったんだけど、そんな幸運がくり返されるものか。
 そもそもこれらを使う前に、相手を土の中から掘り出してやる必要があるようだ。これが、土魔法でうまくいくものか。
 やってみなければ、何とも分からない。
 また、モグラの群れは三十匹程度と言っていたか。動きが遅いというのは救いだけど、一撃必殺という技を持たない身で、何処まで対処できるだろうか。時間はどれだけかかるか。魔力は保つものだろうか。
 どれもこれも、やってみなけりゃ分からない。
 例によってまあ、こちらが反撃を受けて傷つく心配はまずなさそうで、試してみる分にはためらいは少ない。

――とにかくまあ、やってみるだけか。

 やってみて、難しいとなったらすたこら撤退。何もなかった顔をして、王都への進路に戻るさ。
 やるぞと意気込んでみせて逃げるなんて、男らしくない? あたしゃ女じゃ!
 有言実行? 何それ、美味しいの? そもそもあたし、誰に対しても「やる」なんて言ってないもんね。

――こんなところ、異世界転生者と推定される身とは言っても冒険物語の主人公には相応しくない存在だなあ、とつくづく思うね、我ながら。

 わくわく物語を愛好する読者様には、聞かせられない独り言だね。
 とか何とか、思いながら。
 やがて、充電は終了した。
 やっぱり、午前0時まで二時間以上の余裕がある。
 のそのそ動き出そうとしていると。
 ワン、ワン。
 比較的近場から、犬の鳴き声らしきものが聞こえてきた。
 今まで遭遇していなかったけど、犬みたいな動物はいるのかもしれない。
 思いながら、家並みの外れまで出て周囲を見回す。
 ジャイアントモールなる奴ら、西の方から近づいていると言っていたけど。えーと、だいたいあちらの見当だろうか。
 考えていると、さっきの犬らしき鳴き声が寄ってきていた。どうも、人声も伴っているようだ。
 闇を透かすと、若い男が二人それぞれ両手に松明たいまつくわを持ち、二頭の犬を引き連れている。
 何だか楽しそうに、犬が交互に吠えている。見るからに大型犬の外観だ。
『鑑定』してみると、

【犬。地球の犬とほぼ変わらない。ほとんどは大型で、成獣の体長は一~二メートルになる。人間によく懐く。】

 ということだ。元の呼び名はこちらの言葉で表現されているけど、『犬』に直訳して支障はないということらしい。
 確かに二人の男によく懐いているらしく、引き綱もなく従順に同道しているようだ。こんな夜中にもかかわらず、散歩に出るのが楽しいという様子に見える。
 ひときわ高い吠え声を上げた一頭に、男が軽くたしなめの声をかけた。

「こら、大きな声を出すと他の連中が起きる」
「もう少し村を離れたら、好きにしていいからな」

 これも注意を理解したようで、犬は声を低めた。
 男たちは散歩などという気安い様子ではなく、足を急がせている。

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