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高速で、犬たちの前足が動く。ぼろぼろと、硬い土が崩れていく。
男たちは鍬でその土を除けながら、作業を見守っている。
「もう少しで、魔物が出てくるぞ」
「魔物が顔を出したらお前ら、すぐにその首に噛みつくんだぞ」
わん、と声が返る。
本当に、予想以上に人間の指示が理解されているのかもしれない。
やがて、ぼろ、とひとかたまりの土が崩れ。
その下の、空洞が覗いたようだ。
「うわん!」
掘っていた一頭の、声が変わった。
中へ、鼻先を突っ込もうと――。
次の瞬間。
「キャワン!」
声を上げて、犬が仰け反った。
見ると、その首筋に黒っぽいものがへばりついている。
血飛沫が上がる。ところを見ると、黒い生き物に噛みつかれた、ということらしい。
仰け反り、倒れる。その動きに引かれるように、ずるずると大きなものが姿を現した。体長二メートル近い大型犬を、上回るほどの大きさだ。
「うわ!」
「何だ、こいつ?」
鍬を構えたまま、男たちが後ずさる。
小山の向かいで穴掘りをしていたもう一頭の犬が、キャン、と吠えて後方へ飛び退る。
恐怖に駆られて、すぐに逃げ出しそうな動き。
その刹那。
最初の一頭に噛みついていた黒い動物が、跳ねた。
たちまち、逃げ出しかけていた犬の首から、血飛沫が上がる。
「何だ、速え!」
「動きはのろいんじゃなかったのか?」
張り上げかけた嘆声を必死に押し殺した、という様子で男二人は言葉を交わした。
あたしは素速く、『鑑定』をかけてみる。
【ジャイアントモール。モグラ型の魔物。成獣の体長は二メートル程度になる。通常は地中数十センチの辺りに棲息する。視力は弱く、嗅覚と聴覚が優れる。雑食。農作物を好んで食するが、動物の肉なども食らう。通常は地中を人間の歩行より遅く移動する。地上で危機を覚えた場合などには、持久力に劣るが瞬間高速の跳躍を見せる。】
つまり。ふだんは農作物などを地中から狙うので、移動が速い必要はない。地上で危機に瀕した場合には、素速い跳躍をするということのようだ。
事前の情報で、この高速跳躍に関しての詳細はなかったわけだけど。
――そんな脅威もなく、軍がお手上げ状態になるわけはないわなあ。
地上に跳び出たジャイアントモール一匹は、かなり濃い焦茶色のようで、やっぱり見直しても体長は二メートル程度になりそうだ。
犬二頭の息の根を止め、前足と頭をもたげてじっと周囲を窺う様子になっている。本来なら獲物を食らう作業に移りそうなものだけど、この二頭以外の敵の存在を直感し、食事は後回しにしたんだろう。
見回すという動きでなくどちらかと言うと耳を澄ますという仕草に見えるのは、やはり視力がほとんどないという理由か。
ひく、ひく、と鼻も動く。
でもおそらく犬の血が流れた匂いが強いだろうから、鼻よりは耳頼りになるんじゃないか。それを承知してか男二人は声を殺し、脚を震わせて立ちすくんでいる。
さっきの跳躍力からすると、男たちの立ち位置が知れたら瞬く間の二跳び程度であの牙の餌食になりそうだ。
ゆっくり、鼻を蠢かせ。
耳朶は見えないものの、澄まし巡らせ。
見えない相手に威嚇とばかり、何度も鋭い牙を口元に覗かせ。
そうして、ひくと鼻先を向けたのは、正しく人間二人の向きだった。
ひ、と男の口に息が震える。
たちまち獣の四肢が屈まれ、跳ね出した。
獲物まで、二跳ねの距離。まず元の小山脇に着地、すぐに続けて後ろ足が伸縮。
――拙い!
男たちは鍬でその土を除けながら、作業を見守っている。
「もう少しで、魔物が出てくるぞ」
「魔物が顔を出したらお前ら、すぐにその首に噛みつくんだぞ」
わん、と声が返る。
本当に、予想以上に人間の指示が理解されているのかもしれない。
やがて、ぼろ、とひとかたまりの土が崩れ。
その下の、空洞が覗いたようだ。
「うわん!」
掘っていた一頭の、声が変わった。
中へ、鼻先を突っ込もうと――。
次の瞬間。
「キャワン!」
声を上げて、犬が仰け反った。
見ると、その首筋に黒っぽいものがへばりついている。
血飛沫が上がる。ところを見ると、黒い生き物に噛みつかれた、ということらしい。
仰け反り、倒れる。その動きに引かれるように、ずるずると大きなものが姿を現した。体長二メートル近い大型犬を、上回るほどの大きさだ。
「うわ!」
「何だ、こいつ?」
鍬を構えたまま、男たちが後ずさる。
小山の向かいで穴掘りをしていたもう一頭の犬が、キャン、と吠えて後方へ飛び退る。
恐怖に駆られて、すぐに逃げ出しそうな動き。
その刹那。
最初の一頭に噛みついていた黒い動物が、跳ねた。
たちまち、逃げ出しかけていた犬の首から、血飛沫が上がる。
「何だ、速え!」
「動きはのろいんじゃなかったのか?」
張り上げかけた嘆声を必死に押し殺した、という様子で男二人は言葉を交わした。
あたしは素速く、『鑑定』をかけてみる。
【ジャイアントモール。モグラ型の魔物。成獣の体長は二メートル程度になる。通常は地中数十センチの辺りに棲息する。視力は弱く、嗅覚と聴覚が優れる。雑食。農作物を好んで食するが、動物の肉なども食らう。通常は地中を人間の歩行より遅く移動する。地上で危機を覚えた場合などには、持久力に劣るが瞬間高速の跳躍を見せる。】
つまり。ふだんは農作物などを地中から狙うので、移動が速い必要はない。地上で危機に瀕した場合には、素速い跳躍をするということのようだ。
事前の情報で、この高速跳躍に関しての詳細はなかったわけだけど。
――そんな脅威もなく、軍がお手上げ状態になるわけはないわなあ。
地上に跳び出たジャイアントモール一匹は、かなり濃い焦茶色のようで、やっぱり見直しても体長は二メートル程度になりそうだ。
犬二頭の息の根を止め、前足と頭をもたげてじっと周囲を窺う様子になっている。本来なら獲物を食らう作業に移りそうなものだけど、この二頭以外の敵の存在を直感し、食事は後回しにしたんだろう。
見回すという動きでなくどちらかと言うと耳を澄ますという仕草に見えるのは、やはり視力がほとんどないという理由か。
ひく、ひく、と鼻も動く。
でもおそらく犬の血が流れた匂いが強いだろうから、鼻よりは耳頼りになるんじゃないか。それを承知してか男二人は声を殺し、脚を震わせて立ちすくんでいる。
さっきの跳躍力からすると、男たちの立ち位置が知れたら瞬く間の二跳び程度であの牙の餌食になりそうだ。
ゆっくり、鼻を蠢かせ。
耳朶は見えないものの、澄まし巡らせ。
見えない相手に威嚇とばかり、何度も鋭い牙を口元に覗かせ。
そうして、ひくと鼻先を向けたのは、正しく人間二人の向きだった。
ひ、と男の口に息が震える。
たちまち獣の四肢が屈まれ、跳ね出した。
獲物まで、二跳ねの距離。まず元の小山脇に着地、すぐに続けて後ろ足が伸縮。
――拙い!
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