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84 安堵された 2
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食事を続けたまま焚き火を見つめながら、カルステンは続けて囁きかけてきた。
「申し訳ないのですがハル殿、お持ちだという薬草を見せていただくことはできますか。決して、信用していないということではないのですが」
これは納得できる。
何しろこの護衛兵士の強行軍も主の焦燥も、すべてあたし所有の薬草が本物かどうかに懸かっているんだ。
頷いて、あたしは格納していた葉を五枚取り出し、袋の口からチラ見せした。
横目でしばし観察し、護衛は深く頷く。
「まちがいありませんね。我々が運んでいたのと、同じものです」
安堵した様子で息をつき、干し肉を口に運ぶ。
「それはそのまま、ハル殿にお持ちいただくのが最善でしょうね。王宮に着くまで、くれぐれもよろしくお願いします」
頷き、改めて薬草は収納する。
エトヴィンたちの帰路では、分割して肌身離さず持ち運ぶなどいろいろ工夫したようだけど。
この残り少ないものを分けて運搬しても、意味は少ない。
またこれまで彼らを襲った災難を思うと、あたしの中に格納しているのが最も安全だろう。大雨や川に落とされるなどという目に遭っても火に包まれても、まずまちがいなくこの中に被害は及ばない。
もし人混みで掏摸などに遭っても、この推定約三キログラムの重量を抱えて兵士で鍛えたカルステンから逃げ延びるのは至難。前例のように焼身自殺を図られても、まず薬草は助かる。
ということで、大事に保管させていただく。
「早く帰還して、エトヴィン様に安心していただきたいものです」
あまり声を発しない方がいいはずだけど。思いの丈を吐き出さずにいられないという声音で、カルステンは囁きを続けた。
干し肉を噛みながらその顔は俯けられて、見た目にもまず発声しているとは認知されないだろう。
「王宮に戻られて薬草の消失を知ってから、エトヴィン様の悲嘆ぶりは見るに忍びないものでした。その後二日ほどは、夜も眠らず打開策を求めて回っていたものです」
なるほど、と頷く。
あのエトヴィンの薬草入手への入れ揚げぶりを思うと、無理もないと頷かれるよね。
王子の治療への情熱。
それに加え、一ヶ月以上にわたって再三難関に挑んだ上で入手した、何にも代えがたい薬草なんだ。
それが、何度も盗難などの被害に遭ったことにも増して、ようやく最低限の量を王宮に持ち帰ることができたと安堵した直後、失われていたことを知ったという経緯らしい。
その落胆の思い、いかばかりのものだったか。
ずっと傍についていたこの護衛にとっても、同様に身を引き裂かれる思いだったに違いないよなあ。
「二日過ぎたところで、眠らなければハル殿と連絡がつけられない、と言上してお休みいただきました。その夜は、朝まで安眠されたようで。伺いますと、ハル殿が薬草をお持ちだと聞き、地獄に仏とばかりに安堵されたようです」
さもあらん、だね。
それにしてもあの男、当日夜更かししたとは言ってたけど、それまで二日間完徹だったのか。
「とにかくハル殿には、いくら感謝してもしきれません。森の中では主ともども何度も命を救われ、ここに来て王子殿下の命と主の心が救われる希望をもたらしていただき、本当にどうしたらこのご恩に報いられるか」
感極まったという表情で、それでもこちらに目を向けることだけは堪えたらしく、カルステンは焚き火の炎に向けて頭を垂れた。
――いやいや、感謝を総括するのは早いんでないかい。まだ王宮まで一日かかるというのに。
こんなところでのこうした台詞は悪いフラグになるのがお約束だぞ、などと伝えるすべはないんだけどさ。
もう話はやめにしよう、と軽くハンドを上下させて袋の中に引っ込める。
潜望鏡の先っちょだけ傍目に気づかれない程度に覗かせ、それ以上動きは止めて充電態勢に移る。まあこの日の後半はほとんど動くことなく魔法も使っていないので、ほとんど魔素の減りはないんだけどね。
「申し訳ないのですがハル殿、お持ちだという薬草を見せていただくことはできますか。決して、信用していないということではないのですが」
これは納得できる。
何しろこの護衛兵士の強行軍も主の焦燥も、すべてあたし所有の薬草が本物かどうかに懸かっているんだ。
頷いて、あたしは格納していた葉を五枚取り出し、袋の口からチラ見せした。
横目でしばし観察し、護衛は深く頷く。
「まちがいありませんね。我々が運んでいたのと、同じものです」
安堵した様子で息をつき、干し肉を口に運ぶ。
「それはそのまま、ハル殿にお持ちいただくのが最善でしょうね。王宮に着くまで、くれぐれもよろしくお願いします」
頷き、改めて薬草は収納する。
エトヴィンたちの帰路では、分割して肌身離さず持ち運ぶなどいろいろ工夫したようだけど。
この残り少ないものを分けて運搬しても、意味は少ない。
またこれまで彼らを襲った災難を思うと、あたしの中に格納しているのが最も安全だろう。大雨や川に落とされるなどという目に遭っても火に包まれても、まずまちがいなくこの中に被害は及ばない。
もし人混みで掏摸などに遭っても、この推定約三キログラムの重量を抱えて兵士で鍛えたカルステンから逃げ延びるのは至難。前例のように焼身自殺を図られても、まず薬草は助かる。
ということで、大事に保管させていただく。
「早く帰還して、エトヴィン様に安心していただきたいものです」
あまり声を発しない方がいいはずだけど。思いの丈を吐き出さずにいられないという声音で、カルステンは囁きを続けた。
干し肉を噛みながらその顔は俯けられて、見た目にもまず発声しているとは認知されないだろう。
「王宮に戻られて薬草の消失を知ってから、エトヴィン様の悲嘆ぶりは見るに忍びないものでした。その後二日ほどは、夜も眠らず打開策を求めて回っていたものです」
なるほど、と頷く。
あのエトヴィンの薬草入手への入れ揚げぶりを思うと、無理もないと頷かれるよね。
王子の治療への情熱。
それに加え、一ヶ月以上にわたって再三難関に挑んだ上で入手した、何にも代えがたい薬草なんだ。
それが、何度も盗難などの被害に遭ったことにも増して、ようやく最低限の量を王宮に持ち帰ることができたと安堵した直後、失われていたことを知ったという経緯らしい。
その落胆の思い、いかばかりのものだったか。
ずっと傍についていたこの護衛にとっても、同様に身を引き裂かれる思いだったに違いないよなあ。
「二日過ぎたところで、眠らなければハル殿と連絡がつけられない、と言上してお休みいただきました。その夜は、朝まで安眠されたようで。伺いますと、ハル殿が薬草をお持ちだと聞き、地獄に仏とばかりに安堵されたようです」
さもあらん、だね。
それにしてもあの男、当日夜更かししたとは言ってたけど、それまで二日間完徹だったのか。
「とにかくハル殿には、いくら感謝してもしきれません。森の中では主ともども何度も命を救われ、ここに来て王子殿下の命と主の心が救われる希望をもたらしていただき、本当にどうしたらこのご恩に報いられるか」
感極まったという表情で、それでもこちらに目を向けることだけは堪えたらしく、カルステンは焚き火の炎に向けて頭を垂れた。
――いやいや、感謝を総括するのは早いんでないかい。まだ王宮まで一日かかるというのに。
こんなところでのこうした台詞は悪いフラグになるのがお約束だぞ、などと伝えるすべはないんだけどさ。
もう話はやめにしよう、と軽くハンドを上下させて袋の中に引っ込める。
潜望鏡の先っちょだけ傍目に気づかれない程度に覗かせ、それ以上動きは止めて充電態勢に移る。まあこの日の後半はほとんど動くことなく魔法も使っていないので、ほとんど魔素の減りはないんだけどね。
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