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83 安堵された 1
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すべて、エトヴィンと打ち合わせた通りだった。
カルステンは極力誰にも知られず行動するけど、今までの例を見て何が起こっても不思議ない。兵士の修業を積んでいて監視の目などには敏感だとは言え、最悪離れた観察はあるかもしれないと覚悟しておく。
なので、あたしを見つけた際にも一切会話などはせず、何か落とし物を拾った程度にしか見えないように努める。
白夢草は、中ツ森の西での自生の例は見つかっていない。
カルステンはここで人と会ったわけでもないのだから、離れて観察されていたとしても、まず薬草入手に成功したとは思われないだろう。
とにかくも後は、ひたすら帰路を急ぐ。
あたしはただただ、護衛兵士の背で揺られるだけ。
リュックサックのようなしっかり両肩で固定された袋の中らしいけど、とにかくものすごい揺れは切れ目なく続いているはずだ。そういう感覚を感じとる機能はないので、何となくそう思っているだけなんだけど。
まあそんなのを感じることができていたら、たちまち乗り物酔いやあちこち打ちつけられる痛みで耐えられなくなっていただろうね。
ただただ、単調に揺れ続ける暗い視界を甘受する。
することもなく、ただ考えるしかできない。
そんな状態でもかすか程度には充電ができるみたいなので、その態勢に徹しておく。
そうして、五時間余りが経過。
ミーマの駆け足が緩み、道を逸れたみたいだ。
しばらく進んで、カルステンは下馬。
あたしの入った袋は荷物として、地上に降ろされた。
さらにややしばらく、作業が続く。
やがて。
「ご不自由をかけました、ハル殿」
横倒しになった袋の口が、緩められた。
かけてきたカルステンの声は、ほとんど囁きに近い。
これも、エトヴィンと打ち合わせたことだ。
移動中カルステンは、事実上あたしと会話はしない。
ほぼ数メートル以内に耳があるのでない限り聞きとれない、小声をかける程度に抑える。
カルステン自身も声を出すとき。別の作業を行う手つきで視線もこちらに向けていないはずだ。
つまりは、この兵士が気配を感じとれない距離から窺う限りで、絶対に話しかけの様は見てとれないようにする。
会話が成立するような、要するに何らかの情報を得られるような対象物を運んでいるとは、決して他人に悟られないように配慮するということだ。
これでカルステンが察知できないほど離れた観察者からは、発声も何らかのやりとりも知られようがない。
盗聴器とか集音器とか、そんな魔道具みたいなもの――エトヴィンの知る限りこの世にそんなものは存在しないらしいけど――が使われているのでない限り、聞きとられることはないはずだ。
もし人に知られないそんな道具があったとしても国宝レベルの希少品のはずで、わざわざこんな護衛職の単独移動相手に使う気になるはずもない。
しかし一方で、望遠鏡に近い道具はこれもそこそこ希少ながら存在するそうで、あたしの存在は遠目にも見られないのが望ましい。
ということであたしは、緩めた袋の口からマジックハンドの先だけ覗かせて、小さく左右に振った。
「ここで、三アーダ(時間)ほど休憩をとります」
事前の打ち合わせでは一泊と聞いていたけど、そこまでの必要はないらしい。
カルステンの説明では、自分の睡眠は必要ない。ただ、ミーマが王領に入るまで駆け続けるための、体力回復を図る目的だという。あとは王領最初の町でミーマを交換し、王都まで休みなく駆け続ける予定だ。
なるほど、と頷きを返す。
袋からちらとだけ覗くと、近くに焚き火が点けられていた。
その脇に胡座で座り、カルステンは干し肉を囓っている。
少し離れた木に繋がれたミーマは、黙々と草を食んでいるようだ。
片やあたしはというと、布袋に合わせて横倒しの姿勢で落ち着いている。この格好だと潜望鏡やマジックハンドを傍目に気づかれず袋の口から覗かせるのに容易で、都合がいいんだ。
カルステンは極力誰にも知られず行動するけど、今までの例を見て何が起こっても不思議ない。兵士の修業を積んでいて監視の目などには敏感だとは言え、最悪離れた観察はあるかもしれないと覚悟しておく。
なので、あたしを見つけた際にも一切会話などはせず、何か落とし物を拾った程度にしか見えないように努める。
白夢草は、中ツ森の西での自生の例は見つかっていない。
カルステンはここで人と会ったわけでもないのだから、離れて観察されていたとしても、まず薬草入手に成功したとは思われないだろう。
とにかくも後は、ひたすら帰路を急ぐ。
あたしはただただ、護衛兵士の背で揺られるだけ。
リュックサックのようなしっかり両肩で固定された袋の中らしいけど、とにかくものすごい揺れは切れ目なく続いているはずだ。そういう感覚を感じとる機能はないので、何となくそう思っているだけなんだけど。
まあそんなのを感じることができていたら、たちまち乗り物酔いやあちこち打ちつけられる痛みで耐えられなくなっていただろうね。
ただただ、単調に揺れ続ける暗い視界を甘受する。
することもなく、ただ考えるしかできない。
そんな状態でもかすか程度には充電ができるみたいなので、その態勢に徹しておく。
そうして、五時間余りが経過。
ミーマの駆け足が緩み、道を逸れたみたいだ。
しばらく進んで、カルステンは下馬。
あたしの入った袋は荷物として、地上に降ろされた。
さらにややしばらく、作業が続く。
やがて。
「ご不自由をかけました、ハル殿」
横倒しになった袋の口が、緩められた。
かけてきたカルステンの声は、ほとんど囁きに近い。
これも、エトヴィンと打ち合わせたことだ。
移動中カルステンは、事実上あたしと会話はしない。
ほぼ数メートル以内に耳があるのでない限り聞きとれない、小声をかける程度に抑える。
カルステン自身も声を出すとき。別の作業を行う手つきで視線もこちらに向けていないはずだ。
つまりは、この兵士が気配を感じとれない距離から窺う限りで、絶対に話しかけの様は見てとれないようにする。
会話が成立するような、要するに何らかの情報を得られるような対象物を運んでいるとは、決して他人に悟られないように配慮するということだ。
これでカルステンが察知できないほど離れた観察者からは、発声も何らかのやりとりも知られようがない。
盗聴器とか集音器とか、そんな魔道具みたいなもの――エトヴィンの知る限りこの世にそんなものは存在しないらしいけど――が使われているのでない限り、聞きとられることはないはずだ。
もし人に知られないそんな道具があったとしても国宝レベルの希少品のはずで、わざわざこんな護衛職の単独移動相手に使う気になるはずもない。
しかし一方で、望遠鏡に近い道具はこれもそこそこ希少ながら存在するそうで、あたしの存在は遠目にも見られないのが望ましい。
ということであたしは、緩めた袋の口からマジックハンドの先だけ覗かせて、小さく左右に振った。
「ここで、三アーダ(時間)ほど休憩をとります」
事前の打ち合わせでは一泊と聞いていたけど、そこまでの必要はないらしい。
カルステンの説明では、自分の睡眠は必要ない。ただ、ミーマが王領に入るまで駆け続けるための、体力回復を図る目的だという。あとは王領最初の町でミーマを交換し、王都まで休みなく駆け続ける予定だ。
なるほど、と頷きを返す。
袋からちらとだけ覗くと、近くに焚き火が点けられていた。
その脇に胡座で座り、カルステンは干し肉を囓っている。
少し離れた木に繋がれたミーマは、黙々と草を食んでいるようだ。
片やあたしはというと、布袋に合わせて横倒しの姿勢で落ち着いている。この格好だと潜望鏡やマジックハンドを傍目に気づかれず袋の口から覗かせるのに容易で、都合がいいんだ。
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