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そうしているうちに、扉にノックがした。
「オーラフです。エトヴィン様はいらっしゃいますか」
「ああ、入っていいよ」
「失礼いたします」
入ってきたのは、使用人らしい若い男だ。もしかするとまだ十代といったところかもしれない。
エトヴィンとカルステンとは、顔見知りのようだ。
「どうした? 殿下に何かあったのか」
「いえ、殿下は今日はお加減もよさそうで机に向かっていらっしゃいます」
「そうか。この後、報告に伺おうと思っていたのだが」
「はい、お待ちになっています。それとですが、エトヴィン様が何か珍しいものを手に入れたと聞いた、見せてもらえないか、という仰せです」
「ほう」ちらちら、とエトヴィンは机のあたしと隣の護衛を順に見た。「何とも、耳が早くていらっしゃる」
「そうですね」
「まあとにかく、伺う予定だったのだ。仰せに従おう」
あたしがこっそり頷きを見せたので、すぐに承諾の返答をする。
さすがに焼け焦げ汚れた布に包まれたまま、というわけにはいかない。エトヴィンはあたしの表面を布で拭い、新しい布で包み込んだ。
両手で捧げ持つ格好で、部屋を出る。
怪しく思われないように潜望鏡などは収納したままなので、布の隙間からほとんど何も見えない。なかなか豪奢な廊下を通行しているらしい、という程度だ。
確かに、目的の部屋までは短い距離だった。
「殿下、エトヴィン様です」
「入って」
入った部屋は、エトヴィンの執務室よりさらに広いようだ。
いかにも王族仕様といった豪奢な設え。すぐ目につくところでは、応接用らしいソファとテーブル、少し離れて学習机めいた――当然ながら前世庶民のものとは比べものにならない見た目だけど――ものが置かれている。
脇の別室に繋がるらしいドアの横に、侍女らしい若い女性と今同道してきたオーラフという青年が立つ。
ソファに座る少年が、この部屋の主らしい。
――わお、王子様!
思わず感嘆の声を張り上げてしまいそうな、絵に描いたような王子様の像が、そこに御座した。
少し青みがかり、やや長く伸ばした薄色の金髪。生まれてこの方、陽に当たったことがないかのような白い肌。碧色に金が差したような、輝く大きな瞳。前世の女性たちなら例外なく憧れそうな、小顔。
正装のようなものじゃないんだろうけど、白を基調とした上品な身繕い。
それらがすべて、絶妙に調和して。
――控えめに言って、紛れもなくイケメン、つーか、美少年!
元の我が一族のDNA、明らかにカケラも混じっていないね。
生前の颯人にしてもそれなりに整った顔立ちで、何より知的な色が醸し出されて人目を引く外見――親族贔屓目あり――だったけどさ。
そんな比べものになるもんじゃないのよ、これ。
よく聞く王族ブリーダーの見事な手腕、というのを信じざるを得ない、と言うか。
「殿下、ご機嫌麗しゅう」
「うん、ありがとう。それからカルステン、たいへんな遠出をしてくれたんだってね。ご苦労様」
「恐縮です」
――ふむ。
護衛の勤務に対しても労りを口にできる、なかなかに気配りのある王子らしい。ただ前生の感覚を残して、王族頭になりきれていないだけかもしれないけどね、
王子に招かれてエトヴィンは向かいのソファに座り、カルステンはその背後に立つ。
あたしは包んだ布ごと、テーブルの上に置かれた。
奥から、侍女がティーカップを運んできた。
「まず、ご報告します。何とか薬草が手に入り、加工の工程に入ったところです。何事もなければ、明日には完成品をお持ちできるはずです」
「うん、よかった」
「オーラフです。エトヴィン様はいらっしゃいますか」
「ああ、入っていいよ」
「失礼いたします」
入ってきたのは、使用人らしい若い男だ。もしかするとまだ十代といったところかもしれない。
エトヴィンとカルステンとは、顔見知りのようだ。
「どうした? 殿下に何かあったのか」
「いえ、殿下は今日はお加減もよさそうで机に向かっていらっしゃいます」
「そうか。この後、報告に伺おうと思っていたのだが」
「はい、お待ちになっています。それとですが、エトヴィン様が何か珍しいものを手に入れたと聞いた、見せてもらえないか、という仰せです」
「ほう」ちらちら、とエトヴィンは机のあたしと隣の護衛を順に見た。「何とも、耳が早くていらっしゃる」
「そうですね」
「まあとにかく、伺う予定だったのだ。仰せに従おう」
あたしがこっそり頷きを見せたので、すぐに承諾の返答をする。
さすがに焼け焦げ汚れた布に包まれたまま、というわけにはいかない。エトヴィンはあたしの表面を布で拭い、新しい布で包み込んだ。
両手で捧げ持つ格好で、部屋を出る。
怪しく思われないように潜望鏡などは収納したままなので、布の隙間からほとんど何も見えない。なかなか豪奢な廊下を通行しているらしい、という程度だ。
確かに、目的の部屋までは短い距離だった。
「殿下、エトヴィン様です」
「入って」
入った部屋は、エトヴィンの執務室よりさらに広いようだ。
いかにも王族仕様といった豪奢な設え。すぐ目につくところでは、応接用らしいソファとテーブル、少し離れて学習机めいた――当然ながら前世庶民のものとは比べものにならない見た目だけど――ものが置かれている。
脇の別室に繋がるらしいドアの横に、侍女らしい若い女性と今同道してきたオーラフという青年が立つ。
ソファに座る少年が、この部屋の主らしい。
――わお、王子様!
思わず感嘆の声を張り上げてしまいそうな、絵に描いたような王子様の像が、そこに御座した。
少し青みがかり、やや長く伸ばした薄色の金髪。生まれてこの方、陽に当たったことがないかのような白い肌。碧色に金が差したような、輝く大きな瞳。前世の女性たちなら例外なく憧れそうな、小顔。
正装のようなものじゃないんだろうけど、白を基調とした上品な身繕い。
それらがすべて、絶妙に調和して。
――控えめに言って、紛れもなくイケメン、つーか、美少年!
元の我が一族のDNA、明らかにカケラも混じっていないね。
生前の颯人にしてもそれなりに整った顔立ちで、何より知的な色が醸し出されて人目を引く外見――親族贔屓目あり――だったけどさ。
そんな比べものになるもんじゃないのよ、これ。
よく聞く王族ブリーダーの見事な手腕、というのを信じざるを得ない、と言うか。
「殿下、ご機嫌麗しゅう」
「うん、ありがとう。それからカルステン、たいへんな遠出をしてくれたんだってね。ご苦労様」
「恐縮です」
――ふむ。
護衛の勤務に対しても労りを口にできる、なかなかに気配りのある王子らしい。ただ前生の感覚を残して、王族頭になりきれていないだけかもしれないけどね、
王子に招かれてエトヴィンは向かいのソファに座り、カルステンはその背後に立つ。
あたしは包んだ布ごと、テーブルの上に置かれた。
奥から、侍女がティーカップを運んできた。
「まず、ご報告します。何とか薬草が手に入り、加工の工程に入ったところです。何事もなければ、明日には完成品をお持ちできるはずです」
「うん、よかった」
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