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かなり詳細な叙説になったものの。
薬草亡失の件に比べて、焦茶色物体(あたしや)にまつわる部分が言葉を濁した言い回しで、しっくり受け止められない感覚だ。
特に「キュンツェル伯爵領で薬草入手の当て」の説明は、詳細が加わらなければ到底納得しようもない。まあ作り話なんだから、無理もないんだけど。
当然、テオバルト王子は難しい顔で眉を寄せている、けど。
『深く突っ込まないであげて。後で説明するから』
『……分かった』
無音の声をかけてやると、小さく頷いている。
そうしてさらに数度頷いて、向かいの男の顔を見直した。
「本当に、たいへんだったんだね。こんな不運が重なるなんて、到底現実にあり得ないんじゃないかっていうくらい」
「御意、です。誰か人間の仕業による妨害かと疑ってもみたのですが、それも考えられないほどです」
「大雨は偶然としても、暴風鷲って――。僕は見たことないけど、そうそう出遭うことのない凶暴な魔獣なんだろう?」
「ええ。人が飼い馴らして命に従わせるなど、聞いた試しがありません」
「それに、護衛兵が護衛対象を攻撃した?」
「本来ならあり得るはずもないことです。本人が失踪しているので、理由などは不明ですが」
「さらには今日になっても、掏摸に火魔法攻撃にって――」
「これはどちらも、実行犯を捕らえています。明らかに平民の身分の者が騎士階級の者に不逞を働いたということで、本来ならその場で手討ちになっても不思議はないのですが。王都警備隊にも王宮庁にも遣いを送って、徹底的に背後を洗うように指示しています。今のところは双方とも、何故こんな行動をしてしまったか分からない、正気を失っていたとしか思えない、と証言しているそうですが」
「いろいろな意味で、あり得るはずのないことが続いているわけだ」
「然様です」
固い顔で、エトヴィンは頷く。
それから主の気を和らげるためだろう、やや表情を緩めて膝の上に拳を握った。
「それでも遂に薬草を手に入れ、加工に入ることができました。最後まで油断はできませんが必ずや仕上げ、殿下のもとにお持ちしますので。明日には出来上がり次第お持ちし、服用いただきます。そのつもりでお待ちください」
「うん、よろしく頼む」
頭を軽く下げ、改めて口元を引き締めている。
それに頷き返し、王子はテーブルの上に目を転じた。
「で、話は変わるけど、これがその森の中に落下してきた物体なんだね?」
「はい。これまでに見たことのない形状、材質のもので、どうも自然の産物とも思えません。できればこちらで調べてみたいものと思っています。ただ薬の調合が最優先で、しばらくそうした時間はとれないでしょうが」
「それなら、しばらく僕が預かってもいいかな。確かに興味深いので、いろいろ見てみたい。もちろん、壊したりしないように気をつけるから」
「ああ――はい。殿下の気晴らしになるようでしたら、そうなさってください。無事薬をお飲みいただけるまでは、落ち着かれないでしょうから」
「うん、ありがとう」
エトヴィンがややためらいの口ぶりになったのは、あたしの正体について打ち明けるかどうか迷ったせいだろう。しかし睡眠に入るまであたしと打ち合わせができないので、とにかくこの場では触れないことにしたようだ。
あたしもまだ踏ん切りをつける当てがつかないので、この時点ではただの物体に徹することにする。
「ただ、殿下もくれぐれも身体に無理がかからないようにお気をつけください。薬をお飲みいただく際にも、体調の善し悪しが効き目に影響するかと思われます」
「うん、分かった。と言うか、エトヴィンの方こそ何だか顔色が悪くて疲れて見えるよ。調合にかかる前に、十分休息をとっておいてよ」
「はい、明日の早朝から取りかかるつもりですので、今夜は早く休もうと思います」
「うん、よろしく」
王子に返答しながら、エトヴィンの視線がちらりとこちらに流れた。つまりは早めに就寝するので、そうしたら会話が可能になるという伝達の意味だろう。
薬草亡失の件に比べて、焦茶色物体(あたしや)にまつわる部分が言葉を濁した言い回しで、しっくり受け止められない感覚だ。
特に「キュンツェル伯爵領で薬草入手の当て」の説明は、詳細が加わらなければ到底納得しようもない。まあ作り話なんだから、無理もないんだけど。
当然、テオバルト王子は難しい顔で眉を寄せている、けど。
『深く突っ込まないであげて。後で説明するから』
『……分かった』
無音の声をかけてやると、小さく頷いている。
そうしてさらに数度頷いて、向かいの男の顔を見直した。
「本当に、たいへんだったんだね。こんな不運が重なるなんて、到底現実にあり得ないんじゃないかっていうくらい」
「御意、です。誰か人間の仕業による妨害かと疑ってもみたのですが、それも考えられないほどです」
「大雨は偶然としても、暴風鷲って――。僕は見たことないけど、そうそう出遭うことのない凶暴な魔獣なんだろう?」
「ええ。人が飼い馴らして命に従わせるなど、聞いた試しがありません」
「それに、護衛兵が護衛対象を攻撃した?」
「本来ならあり得るはずもないことです。本人が失踪しているので、理由などは不明ですが」
「さらには今日になっても、掏摸に火魔法攻撃にって――」
「これはどちらも、実行犯を捕らえています。明らかに平民の身分の者が騎士階級の者に不逞を働いたということで、本来ならその場で手討ちになっても不思議はないのですが。王都警備隊にも王宮庁にも遣いを送って、徹底的に背後を洗うように指示しています。今のところは双方とも、何故こんな行動をしてしまったか分からない、正気を失っていたとしか思えない、と証言しているそうですが」
「いろいろな意味で、あり得るはずのないことが続いているわけだ」
「然様です」
固い顔で、エトヴィンは頷く。
それから主の気を和らげるためだろう、やや表情を緩めて膝の上に拳を握った。
「それでも遂に薬草を手に入れ、加工に入ることができました。最後まで油断はできませんが必ずや仕上げ、殿下のもとにお持ちしますので。明日には出来上がり次第お持ちし、服用いただきます。そのつもりでお待ちください」
「うん、よろしく頼む」
頭を軽く下げ、改めて口元を引き締めている。
それに頷き返し、王子はテーブルの上に目を転じた。
「で、話は変わるけど、これがその森の中に落下してきた物体なんだね?」
「はい。これまでに見たことのない形状、材質のもので、どうも自然の産物とも思えません。できればこちらで調べてみたいものと思っています。ただ薬の調合が最優先で、しばらくそうした時間はとれないでしょうが」
「それなら、しばらく僕が預かってもいいかな。確かに興味深いので、いろいろ見てみたい。もちろん、壊したりしないように気をつけるから」
「ああ――はい。殿下の気晴らしになるようでしたら、そうなさってください。無事薬をお飲みいただけるまでは、落ち着かれないでしょうから」
「うん、ありがとう」
エトヴィンがややためらいの口ぶりになったのは、あたしの正体について打ち明けるかどうか迷ったせいだろう。しかし睡眠に入るまであたしと打ち合わせができないので、とにかくこの場では触れないことにしたようだ。
あたしもまだ踏ん切りをつける当てがつかないので、この時点ではただの物体に徹することにする。
「ただ、殿下もくれぐれも身体に無理がかからないようにお気をつけください。薬をお飲みいただく際にも、体調の善し悪しが効き目に影響するかと思われます」
「うん、分かった。と言うか、エトヴィンの方こそ何だか顔色が悪くて疲れて見えるよ。調合にかかる前に、十分休息をとっておいてよ」
「はい、明日の早朝から取りかかるつもりですので、今夜は早く休もうと思います」
「うん、よろしく」
王子に返答しながら、エトヴィンの視線がちらりとこちらに流れた。つまりは早めに就寝するので、そうしたら会話が可能になるという伝達の意味だろう。
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