チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

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 小麦不作による貴族間の力関係の変化、一地域侵攻の成功による隣国の王女輿入れの強行、第三王子の魔力爆発による国王夫妻の死亡。これらが折り重なって、国の破滅に到ることになる。
 一つ一つをとると何ともゴリ押しというか、ストーリー進行の都合で無理矢理実現しました、という出来事だけど。まあそこは、ライトなノベルならではのことなんだろう。
 特にこの、天候による小麦の不作っていうの。まだ春先の今、決定的な結論がすぐさま出るとも思えない。まだ秋までの間に、いろいろ対処の方法が見えてきそうな気もしないじゃないわけだけど。
 どうもノベルの中では、この時点で悲観の結論を下す決定的な条件があったということのようだ。

『ノベルの中の設定ではね、もともと小麦は連作などに弱いためいろいろ栽培の工夫をしてはいたんだけどさ。たまたまその侯爵領と伯爵領では長年にわたって続けていた輪作政策が不十分で、徐々に土地が弱ってきていた。それがこの年、春先からの低温で一気に打撃を受けて、凶作まちがいなしというのが早々はやばやと明らかになる』
『何とも、話としてはうまくできているというか』
『だから僕、この点でもラノベシナリオを確信する前から念のため調べていたんだ。現実でも王都のすぐ南にティルピッツ侯爵領とキュンツェル伯爵領というところがあって、小麦の大生産地で国の食糧庫と呼ばれている。そこでの小麦生産の実態を調べて、二年前から輪作の方法改革を進言していたんだ。前世のおぼろげな知識だけれど、少なくとも現状よりは改善されるんじゃないかってのを。具体的には、現状小麦と豆類を一年交替で栽培していたところを、三種か四種の作物で交替するように』
『ふうん』
『これを国王が取り上げて、侯爵領と伯爵領に連絡をとってくれた』

 現実にこのように中央政府から各領地に内政に関わる指示を送るなど、まずあり得ないことらしい。各爵領はかなりのところ独立した存在で経営は領主に任され、中央はそちらから税を徴収する程度にしか関わりを持たないのが常だ。むしろ、へたに何処かの領主が領政を好転させて力をつけることがあれば王政を脅かされない、という懸念を抱いてしまう。
 しかし事が小麦という全国の食糧事情に影響する重要なものだけに、国王はこれを有用と断を下したらしい。もしも実際に小麦生産量が低下することがあれば、王都にもすぐさま悪影響が直撃する問題だからね。
 二年前から新しい輪作を奨励したので、今年の小麦の大半は二年間別の作物を栽培した畑に植えられている。このため、春先の低温傾向にもそれほど大きな被害は見られていないという。
『よかったね』と相槌を打ちながら。

――あれれ?

 何やらあたしは頭の隅をくすぐるものを感じていた。
 何だか最近、この辺に絡む出来事を体験していなかったか?

『それが、なんだけどね。低温の影響はある程度抑えられたんだけど、そちらの二領で別の問題が起きているっていう報告が入ってきているんだ。あちら方面のあちこちに凶悪な魔物が出現して、小麦畑が荒らされる被害が起きているって』
『な?』
『二日くらい前に入ったばかりの情報なんだけどね。そちらの二領とも、てんやわんやの大騒ぎらしい。ノベルシナリオとの比較で考えると、もうこの数日で壊滅的な被害を受けたとしたら、そこにエクヴィルツ侯爵がその二領に取り引きを持ちかけて八日後の隣国王女訪問までに懐柔する、なんていうこともかなり慌ただしいけれど実現できてしまうかもしれない』
『強引極まりないけどね』
『その辺はまだ魔物出現の第一報が入ったばかりで、詳細は分からないんだけどね。改めてシナリオ強制力みたいなものを連想しないわけにいかないよ、僕としては』
『うーん何とも、だけど。あともう一つ重大事があったね。第一王子が行方不明?』
『うん、それも実際に起きてしまっているんだ。ノベルをなぞったみたいに』
『いやはや、何とも……』

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