チョーゴーキン! ――車両模型に転生したアラサー女子、異世界の街道をひた走る

eggy

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108 想起した 2

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 そう言えば、と思い出す。

『昨日から、南の侯爵伯爵領に異変が起きている話題が出ていたね。王子殿下はそのことについても気に病まれているようだ。これも、できれば正確な情報を伝えた方がいいと思う。続報について調べることはできないだろうか』
『ああ、何点か昨夜と今朝に連絡が入っていましたね。何とか沈静したというものもあるようです』
『そうなのか』
『時期的にいちばん先だったと思われるのは半月ほど前、ティルピッツ侯爵領の南部でゴブリンの大群が目撃されたという件なのですが』
『ほう』
『何しろけっこうな遠方なので、大群が発見された、放置するといくつもの村が壊滅されるかもしれないという報告が王宮に入ったのが、三日ほど前でした。それが昨夜の続報では、何とか最初の村が総出でゴブリンの集落を攻撃し、根絶やしに成功したと。百匹以上の魔物に対して十数名の農民が殲滅を果たしたなどなかなか聞かない話ですが、遅れて現場に入った領兵たちが多量の死骸を確認したということです。半月ほど前に起きたことですが、その確認と領主への報告に時間がかかったため、こちらへの報告は昨日になったということのようですね。事の次第によっては国軍を動かすことも検討していた上層部は、とりあえずこの件については一安心、できればもっと早く続報を寄越してほしかった、と話題にしているようです』
『……ほう』

 半月ほど前――。
 ゴブリン百匹以上――。
 何となく何処かで聞いた話、に思えるんだけど。
 あたしにとってはもう済んだ、ずっと以前の出来事っていう感覚なんだけど、考えてみればそうなんだ。

――この世界の情報伝達速度、実感として捉えていなかった。

 つい少し前にも、聞いた。
 ここでの通信速度、最も速いのは鳥型魔獣を調教して飛ばす伝書鳥や、見た目犬に近い魔獣グーズを走らせる便だという。人の脚より速いし、ミーマより長距離に使えるとのこと。
 しかしこれらは運べる情報料に限りがあるし高価な上、やはり許容距離や行く先に制限があるようだ。
 そうするとやはり、ふつうの情報運搬手段は人の脚ということになる。まあ日本でいう飛脚だな。
 それと比べるなら、あのゴブリン征伐の後あたしは、一つの村で一日動けなくなった他はおそらく、休憩時間が少なく済む点を考え合わせて飛脚と遜色のない速度で移動してきている。しかも最後の二日はミーマを使って。
 つまり、かの侯爵領からの報告があたしの王宮到着とさほど変わらなくて、何の不思議もないんだ。

『南の領に異変という点で、時系列的に次に来るのは魔物ではないんですが六日ほど前、キュンツェル伯爵領の南部複数の村で呪いが広がっているという騒ぎが起きたようでして。これも今朝、続報が入りました。どうも呪いの正体は感染系の病だったようなのですが、幸い一つの村である程度治療に成功して、他の村々にもその情報が伝えられているということのようです』
『…………』
『これも放っておいたらもっと広範囲に被害が広がりかねず、小麦生産地の中央付近ですから呪いのかかった麦だなどといって収穫前に焼き払うなどすることになったら、国全体への大打撃になりかねないところでした』
『……へええ……』
『その後続けざまのように起きたのが、キュンツェル伯爵領の東部に地面龍アースドラゴンが出現したという件ですね。これはハル殿から聞いた話の方が早かったわけですが、伯爵領から龍の目撃に関する一報が伝書鳥で届いています。とにかくそれがまちがいなく地面龍なら伯爵領から王領まで蹂躙されて不思議はない。その被害もまた広大な小麦畑に及び、収穫に大打撃をもたらしかねない、というわけです』
『……ああ』
『この件はとにかく、ハル殿から即伝えられて助かりました。あの後すぐ王宮から調査の兵を出して、伯爵領からの報告に先んじています。間もなく現地に入って、その報告がもたらされると思います』
『なるほど』
『ハル殿が征伐してくれたということで、被害の広がりを案じる必要はなくなりました。問題はこの件に王太子殿下が巻き込まれていないかどうか、ということになります』
『そうだね』

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