108 / 122
108 想起した 2
しおりを挟む
そう言えば、と思い出す。
『昨日から、南の侯爵伯爵領に異変が起きている話題が出ていたね。王子殿下はそのことについても気に病まれているようだ。これも、できれば正確な情報を伝えた方がいいと思う。続報について調べることはできないだろうか』
『ああ、何点か昨夜と今朝に連絡が入っていましたね。何とか沈静したというものもあるようです』
『そうなのか』
『時期的にいちばん先だったと思われるのは半月ほど前、ティルピッツ侯爵領の南部でゴブリンの大群が目撃されたという件なのですが』
『ほう』
『何しろけっこうな遠方なので、大群が発見された、放置するといくつもの村が壊滅されるかもしれないという報告が王宮に入ったのが、三日ほど前でした。それが昨夜の続報では、何とか最初の村が総出でゴブリンの集落を攻撃し、根絶やしに成功したと。百匹以上の魔物に対して十数名の農民が殲滅を果たしたなどなかなか聞かない話ですが、遅れて現場に入った領兵たちが多量の死骸を確認したということです。半月ほど前に起きたことですが、その確認と領主への報告に時間がかかったため、こちらへの報告は昨日になったということのようですね。事の次第によっては国軍を動かすことも検討していた上層部は、とりあえずこの件については一安心、できればもっと早く続報を寄越してほしかった、と話題にしているようです』
『……ほう』
半月ほど前――。
ゴブリン百匹以上――。
何となく何処かで聞いた話、に思えるんだけど。
あたしにとってはもう済んだ、ずっと以前の出来事っていう感覚なんだけど、考えてみればそうなんだ。
――この世界の情報伝達速度、実感として捉えていなかった。
つい少し前にも、聞いた。
ここでの通信速度、最も速いのは鳥型魔獣を調教して飛ばす伝書鳥や、見た目犬に近い魔獣グーズを走らせる便だという。人の脚より速いし、ミーマより長距離に使えるとのこと。
しかしこれらは運べる情報料に限りがあるし高価な上、やはり許容距離や行く先に制限があるようだ。
そうするとやはり、ふつうの情報運搬手段は人の脚ということになる。まあ日本でいう飛脚だな。
それと比べるなら、あのゴブリン征伐の後あたしは、一つの村で一日動けなくなった他はおそらく、休憩時間が少なく済む点を考え合わせて飛脚と遜色のない速度で移動してきている。しかも最後の二日はミーマを使って。
つまり、かの侯爵領からの報告があたしの王宮到着とさほど変わらなくて、何の不思議もないんだ。
『南の領に異変という点で、時系列的に次に来るのは魔物ではないんですが六日ほど前、キュンツェル伯爵領の南部複数の村で呪いが広がっているという騒ぎが起きたようでして。これも今朝、続報が入りました。どうも呪いの正体は感染系の病だったようなのですが、幸い一つの村である程度治療に成功して、他の村々にもその情報が伝えられているということのようです』
『…………』
『これも放っておいたらもっと広範囲に被害が広がりかねず、小麦生産地の中央付近ですから呪いのかかった麦だなどといって収穫前に焼き払うなどすることになったら、国全体への大打撃になりかねないところでした』
『……へええ……』
『その後続けざまのように起きたのが、キュンツェル伯爵領の東部に地面龍が出現したという件ですね。これはハル殿から聞いた話の方が早かったわけですが、伯爵領から龍の目撃に関する一報が伝書鳥で届いています。とにかくそれがまちがいなく地面龍なら伯爵領から王領まで蹂躙されて不思議はない。その被害もまた広大な小麦畑に及び、収穫に大打撃をもたらしかねない、というわけです』
『……ああ』
『この件はとにかく、ハル殿から即伝えられて助かりました。あの後すぐ王宮から調査の兵を出して、伯爵領からの報告に先んじています。間もなく現地に入って、その報告がもたらされると思います』
『なるほど』
『ハル殿が征伐してくれたということで、被害の広がりを案じる必要はなくなりました。問題はこの件に王太子殿下が巻き込まれていないかどうか、ということになります』
『そうだね』
『昨日から、南の侯爵伯爵領に異変が起きている話題が出ていたね。王子殿下はそのことについても気に病まれているようだ。これも、できれば正確な情報を伝えた方がいいと思う。続報について調べることはできないだろうか』
『ああ、何点か昨夜と今朝に連絡が入っていましたね。何とか沈静したというものもあるようです』
『そうなのか』
『時期的にいちばん先だったと思われるのは半月ほど前、ティルピッツ侯爵領の南部でゴブリンの大群が目撃されたという件なのですが』
『ほう』
『何しろけっこうな遠方なので、大群が発見された、放置するといくつもの村が壊滅されるかもしれないという報告が王宮に入ったのが、三日ほど前でした。それが昨夜の続報では、何とか最初の村が総出でゴブリンの集落を攻撃し、根絶やしに成功したと。百匹以上の魔物に対して十数名の農民が殲滅を果たしたなどなかなか聞かない話ですが、遅れて現場に入った領兵たちが多量の死骸を確認したということです。半月ほど前に起きたことですが、その確認と領主への報告に時間がかかったため、こちらへの報告は昨日になったということのようですね。事の次第によっては国軍を動かすことも検討していた上層部は、とりあえずこの件については一安心、できればもっと早く続報を寄越してほしかった、と話題にしているようです』
『……ほう』
半月ほど前――。
ゴブリン百匹以上――。
何となく何処かで聞いた話、に思えるんだけど。
あたしにとってはもう済んだ、ずっと以前の出来事っていう感覚なんだけど、考えてみればそうなんだ。
――この世界の情報伝達速度、実感として捉えていなかった。
つい少し前にも、聞いた。
ここでの通信速度、最も速いのは鳥型魔獣を調教して飛ばす伝書鳥や、見た目犬に近い魔獣グーズを走らせる便だという。人の脚より速いし、ミーマより長距離に使えるとのこと。
しかしこれらは運べる情報料に限りがあるし高価な上、やはり許容距離や行く先に制限があるようだ。
そうするとやはり、ふつうの情報運搬手段は人の脚ということになる。まあ日本でいう飛脚だな。
それと比べるなら、あのゴブリン征伐の後あたしは、一つの村で一日動けなくなった他はおそらく、休憩時間が少なく済む点を考え合わせて飛脚と遜色のない速度で移動してきている。しかも最後の二日はミーマを使って。
つまり、かの侯爵領からの報告があたしの王宮到着とさほど変わらなくて、何の不思議もないんだ。
『南の領に異変という点で、時系列的に次に来るのは魔物ではないんですが六日ほど前、キュンツェル伯爵領の南部複数の村で呪いが広がっているという騒ぎが起きたようでして。これも今朝、続報が入りました。どうも呪いの正体は感染系の病だったようなのですが、幸い一つの村である程度治療に成功して、他の村々にもその情報が伝えられているということのようです』
『…………』
『これも放っておいたらもっと広範囲に被害が広がりかねず、小麦生産地の中央付近ですから呪いのかかった麦だなどといって収穫前に焼き払うなどすることになったら、国全体への大打撃になりかねないところでした』
『……へええ……』
『その後続けざまのように起きたのが、キュンツェル伯爵領の東部に地面龍が出現したという件ですね。これはハル殿から聞いた話の方が早かったわけですが、伯爵領から龍の目撃に関する一報が伝書鳥で届いています。とにかくそれがまちがいなく地面龍なら伯爵領から王領まで蹂躙されて不思議はない。その被害もまた広大な小麦畑に及び、収穫に大打撃をもたらしかねない、というわけです』
『……ああ』
『この件はとにかく、ハル殿から即伝えられて助かりました。あの後すぐ王宮から調査の兵を出して、伯爵領からの報告に先んじています。間もなく現地に入って、その報告がもたらされると思います』
『なるほど』
『ハル殿が征伐してくれたということで、被害の広がりを案じる必要はなくなりました。問題はこの件に王太子殿下が巻き込まれていないかどうか、ということになります』
『そうだね』
2
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
婚約破棄されて森に捨てられた悪役令嬢を救ったら〜〜名もなき平民の世直し戦記〜〜
naturalsoft
ファンタジー
アヴァロン王国は現国王が病に倒れて、第一王子が摂政に就いてから変わってしまった。度重なる重税と徴収に国民は我慢の限界にきていた。国を守るはずの騎士達が民衆から略奪するような徴収に、とある街の若者が立ち上がった。さらに森で捨てられた悪役令嬢を拾ったことで物語は進展する。
※一部有料のイラスト素材を利用しています。【無断転載禁止】です。
素材利用
・森の奥の隠里様
・みにくる様
最底辺の転生者──2匹の捨て子を育む赤ん坊!?の異世界修行の旅
散歩道 猫ノ子
ファンタジー
捨てられてしまった2匹の神獣と育む異世界育成ファンタジー
2匹のねこのこを育む、ほのぼの育成異世界生活です。
人間の汚さを知る主人公が、動物のように純粋で無垢な女の子2人に振り回されつつ、振り回すそんな物語です。
主人公は最強ですが、基本的に最強しませんのでご了承くださいm(*_ _)m
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
指令を受けた末っ子は望外の活躍をしてしまう?
秋野 木星
ファンタジー
隣国の貴族学院へ使命を帯びて留学することになったトティ。入国しようとした船上で拾い物をする。それがトティの人生を大きく変えていく。
※「飯屋の娘は魔法を使いたくない?」のよもやま話のリクエストをよくいただくので、主人公や年代を変えスピンオフの話を書くことにしました。
※ この作品は、小説家になろうからの転記掲載です。
異世界に落ちたら若返りました。
アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。
夫との2人暮らし。
何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。
そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー
気がついたら知らない場所!?
しかもなんかやたらと若返ってない!?
なんで!?
そんなおばあちゃんのお話です。
更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。
異世界の片隅で引き篭りたい少女。
月芝
ファンタジー
玄関開けたら一分で異世界!
見知らぬオッサンに雑に扱われただけでも腹立たしいのに
初っ端から詰んでいる状況下に放り出されて、
さすがにこれは無理じゃないかな? という出オチ感漂う能力で過ごす新生活。
生態系の最下層から成り上がらずに、こっそりと世界の片隅で心穏やかに過ごしたい。
世界が私を見捨てるのならば、私も世界を見捨ててやろうと森の奥に引き篭った少女。
なのに世界が私を放っておいてくれない。
自分にかまうな、近寄るな、勝手に幻想を押しつけるな。
それから私を聖女と呼ぶんじゃねぇ!
己の平穏のために、ふざけた能力でわりと真面目に頑張る少女の物語。
※本作主人公は極端に他者との関わりを避けます。あとトキメキLOVEもハーレムもありません。
ですので濃厚なヒューマンドラマとか、心の葛藤とか、胸の成長なんかは期待しないで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる