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『まあ前世のラノベの記述自体は、どうでもいいわさ。とにかくこちらの世界では、そんな疑問が生じても不思議じゃない名称が、こっちの人々には意味が分からないままに名づけられ使われているってことなんだ。カルステンも、ギルドとかクエストとかってどっから来た言葉なのか知らないって言ってたよ。まずまちがいなく神さん個人の拘りで、その当時の責任者あたりに否応なく押しつけたって感じなのかな。押しつけられた本人にその自覚はないかもしれないけどさ』
『ああ……』
『だからまず一つ言えるのは、こちらの我らが神さん、自分の拘り実現のためには手段を選ばず、現地人が疑問を持とうがどうだろうが構わず、無理矢理押し通しているって感じなわけだね』
『まあ、そういうことになるか』
『この辺はまあ、責任者トップの一人か二人でも操って決定させれば実現する話だしね。他の人たちは訳分からなくても、名称程度は何であれ慣れてしまえば実害がないから、そのまま定着するってことじゃないか』
『だね』
『ただそのあたり微妙な件もあるみたいでね。さっきも挙げたギルドの受け付け、当初は制服を着た女性が担当していた』
『うん』
『こんな商会とかみたいな大きな組織に女性の職員が雇用されるなんて、この時代この世界では珍しいわけだけど、まあそこは他から文句をつける筋合いでもない。全員同じ制服着用なんてまったく他では見られない習慣だけど、悪いことってわけじゃない。どうも世間一般からかけ離れた、もしかしてあたしたちの目から見ても垢抜けて見えるかもしれないレベルの、見慣れないデザイン――さすがにミニスカートじゃなかったらしい――だったみたいだけどさ。そんなんで最初は、雇用された女性たちも喜んで勤務していたらしいね。でもさ、冒険者相手の受付だよ。気の荒い体力持て余したみたいな連中がぞろぞろやってくるわけだ。気に入らないことがあったら沸点低くすぐに叫き出す。この辺はノベルを参照するまでもなく、容易に想像される話だよね』
『だね』
『ノベルだとここに、一家に一人という感じで必ず、屈強な冒険者を怒鳴りつけて黙らせる頼れる姉御さんが配置されてるわけだけど、現実にそんなのゴロゴロいる訳もない。当然のごとく、怯えた女性職員は職を離れていく。一年もしないうちに、受付の女性は壊滅したらしい』
『ああ、そうなんだ』
『それから別件。ギルドでは当初、冒険者に対するクエストを紙に書いて壁に貼り出す方法をとっていた。でもさ、この世界の識字率は貴族を含めても十パーセントいくかどうかみたいだよ。冒険者になるような層の人間が、そうそうそんな貼り紙なんて読めるはずがない。人に読んでもらうのも限界がある。そうでなくても紙は高価なんだ、そんな読んでもらえるかどうか分からない貼り出しに毎日取り替えるなんて使い方、もったいないだけだろうさ。早々にそんなやり方は改められて、受付の職員に話を聞く方法に落ち着いたみたいだ。貼り紙なんて方法を最初に誰がどういう理由で言い出したのか、今となっては謎らしい』
『へええ』
『こんなの調べたら他にもいろいろあるのかもしれないけどね。おそらく何処ぞの神さんが、自分の拘り追求のために誰かを操ってやり方を決めた。しかし現地の実状に合わずに継続できなかったってことなんだろうと思うね。でもさ、本当に全知全能の神だったら、そんな現地の実状まで改変して無理矢理やり通すことだってできそうじゃない。神さんの能力の限界か自己ルールみたいなものの結果かで、そこまではできなかったわけだ。つまりこの神さんはこの世界で、ある意味全知全能の力を使い放題しているわけじゃないってことになりそうだ』
『ああ』
『具体的に見えるところでは、必要があれば一人や数人の人間を操ることはできるけど、もっと多数の人間を操って社会の常識や人間の本能みたいなところまで変えることはできない、あるいはしない、ってことじゃないかな』
『そう――なりそうだね』
長椅子に仰臥した少年は、何度も小さく頷いている。
一度周囲に耳を澄まし、まだ王宮内に王子に向けて何らかの動きはないみたいなので、会話を続けることにする。
『ああ……』
『だからまず一つ言えるのは、こちらの我らが神さん、自分の拘り実現のためには手段を選ばず、現地人が疑問を持とうがどうだろうが構わず、無理矢理押し通しているって感じなわけだね』
『まあ、そういうことになるか』
『この辺はまあ、責任者トップの一人か二人でも操って決定させれば実現する話だしね。他の人たちは訳分からなくても、名称程度は何であれ慣れてしまえば実害がないから、そのまま定着するってことじゃないか』
『だね』
『ただそのあたり微妙な件もあるみたいでね。さっきも挙げたギルドの受け付け、当初は制服を着た女性が担当していた』
『うん』
『こんな商会とかみたいな大きな組織に女性の職員が雇用されるなんて、この時代この世界では珍しいわけだけど、まあそこは他から文句をつける筋合いでもない。全員同じ制服着用なんてまったく他では見られない習慣だけど、悪いことってわけじゃない。どうも世間一般からかけ離れた、もしかしてあたしたちの目から見ても垢抜けて見えるかもしれないレベルの、見慣れないデザイン――さすがにミニスカートじゃなかったらしい――だったみたいだけどさ。そんなんで最初は、雇用された女性たちも喜んで勤務していたらしいね。でもさ、冒険者相手の受付だよ。気の荒い体力持て余したみたいな連中がぞろぞろやってくるわけだ。気に入らないことがあったら沸点低くすぐに叫き出す。この辺はノベルを参照するまでもなく、容易に想像される話だよね』
『だね』
『ノベルだとここに、一家に一人という感じで必ず、屈強な冒険者を怒鳴りつけて黙らせる頼れる姉御さんが配置されてるわけだけど、現実にそんなのゴロゴロいる訳もない。当然のごとく、怯えた女性職員は職を離れていく。一年もしないうちに、受付の女性は壊滅したらしい』
『ああ、そうなんだ』
『それから別件。ギルドでは当初、冒険者に対するクエストを紙に書いて壁に貼り出す方法をとっていた。でもさ、この世界の識字率は貴族を含めても十パーセントいくかどうかみたいだよ。冒険者になるような層の人間が、そうそうそんな貼り紙なんて読めるはずがない。人に読んでもらうのも限界がある。そうでなくても紙は高価なんだ、そんな読んでもらえるかどうか分からない貼り出しに毎日取り替えるなんて使い方、もったいないだけだろうさ。早々にそんなやり方は改められて、受付の職員に話を聞く方法に落ち着いたみたいだ。貼り紙なんて方法を最初に誰がどういう理由で言い出したのか、今となっては謎らしい』
『へええ』
『こんなの調べたら他にもいろいろあるのかもしれないけどね。おそらく何処ぞの神さんが、自分の拘り追求のために誰かを操ってやり方を決めた。しかし現地の実状に合わずに継続できなかったってことなんだろうと思うね。でもさ、本当に全知全能の神だったら、そんな現地の実状まで改変して無理矢理やり通すことだってできそうじゃない。神さんの能力の限界か自己ルールみたいなものの結果かで、そこまではできなかったわけだ。つまりこの神さんはこの世界で、ある意味全知全能の力を使い放題しているわけじゃないってことになりそうだ』
『ああ』
『具体的に見えるところでは、必要があれば一人や数人の人間を操ることはできるけど、もっと多数の人間を操って社会の常識や人間の本能みたいなところまで変えることはできない、あるいはしない、ってことじゃないかな』
『そう――なりそうだね』
長椅子に仰臥した少年は、何度も小さく頷いている。
一度周囲に耳を澄まし、まだ王宮内に王子に向けて何らかの動きはないみたいなので、会話を続けることにする。
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