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『今挙げたギルドの例は、神さんにとっても人間にとってもたいした影響の起きる問題じゃないから、それほど拘らなかったのかもしれないけどね。もっと大きな影響を持つ話でさ、その〈テンテンテン〉ってノベル、他の数多の作品に倣って、おそらく貴族学校みたいなのが登場していたんじゃない?』
『ああ、あったね。そこに留学で来ていた隣国の王女とこちらの第二王子が、貴族学院で出会って意気投合するんだ』
『でも、実際にこの国には、そんな学院はない』
『そうだね』
『これ、不思議な話だと思わない? ラノベに近づけることに熱意を持っていると思われる神さんが、学校がないままで放置するなんて。冒険者ギルドと貴族学校は、ある意味ラノベに不可欠な二大要素だよ。圧倒的多数の諸作品に、みんな同じく当然のように設定されている。まるでこの二つがなければまともなラノベと認定されないんじゃないかってくらいに。これを神さんが見落とすはずがないと思う』
『だねえ』
『でね、あたしはエトヴィンから聞いたんだけど、知ってるかな。三十年以上前にこの国でも、貴族の子女対象の学校を作ろうという提案が持ち上がったことがあるんだって』
『それは、知らなかった』
『政権上層部の重鎮の一人が言い出して、他のお歴々も一度は承認の方向に動き出していた。それがしばらくして反対意見が増えて、没案になったんだって』
『へええ。どうしてなのかな』
『まあ考えてみれば分かる、こんな話が承認されるわけがないんだ』
『えーー、だってノベルではふつうに何処でも存在するものなんだよ』
『ノベルではどういう理由で設立されたのか知らないけどね、おそらくこちらの現実であっちと異なるのは、こっちの王族貴族が自分の地位と血統を存続させたい意思を持っているってことだと思う』
『…………』
『――――』
『……えーと、それって現実でもフィクションでも、至極当然のことじゃないのかな』
『常識的にはそう思うけどね、フィクションの中のことはよく知らない。とにかく考えてみればさ、政権を担う王族とその周辺にとって絶対避けたいのは、政権に反抗する勢力が力をつけることと、そんな複数の勢力が手を結ぶことだよ。この世界、火薬や銃が開発されていないことや他の点を見て、前世日本に当てはめるとムロマチから戦国時代に近い感じがするよね。地方の領地では小競り合いや領土の取り合いなんかも時々起きているらしいけど、中央の指導がある程度届いているみたいだから、ムロマチ時代とエド時代の中間みたいなイメージかな。だから分かりやすいところでエドのトクガワ幕府を例にとると、トクガワの将軍さんがまず気を入れたのはその、いわゆる外様大名が力をつけることと複数のそんな藩が協力し合うことが、絶対起きないようにする体制作りだったはずだ』
『うん、そんな感じのこと、本で読んだ』
『細かいこととかいろいろ言ったらキリがないけどさ、そんな施策がある程度功を奏して、エド幕府は二百年以上も続いたと言われる。その末にこれもいろいろあるけど、一つの要因として外様であるサツマ藩とかチョーシュー藩とかが手を組んだ結果、幕府に反旗を翻して将軍位返上に到ったわけだよね。もの凄く単純に言うと、二百年間この外様対策を徹底してきたから幕府を継続できた、その対策が続かなくなって幕府は滅びた。しつこいけれどこれだけが要因じゃない、いろいろ挙げたらキリがないんだろうけどね』
『そんなのも読んだな』
『本当に古今東西、異世界まで含めてさまざまな王家の事情とか知り尽くすことはできないけどさ、まずまちがいなくこの外様大名対策みたいなのは、どの政権でも多かれ少なかれ頭にあったと思うよ。そんな政権が、全貴族の子女対象の学校なんて、思いつくはずもないし設立に到るはずもない』
『ああ』
『簡単に言って、エド幕府がサツマの跡取りに実力をつけさせるための機構を作ろうと思うか? サツマとチョーシューの後継者同士が意気投合するかもしれない機会を提供するか? そういう話だよね。教育は力だって言われるけどさ、この時代の上の人たちにとって国全体の力を向上させることより、自分の家を守る、対抗勢力に力をつけさせないっていう方が圧倒的に重要のはずだよ』
『だ……ね』
『もっと言えば、男女共学なんてお花畑思考、絶対生まれるはずがない。ノベルではよく貴族当主が、我が子には政略結婚を強いなければいけないが恋愛の機会も持たせてやりたい、なんて言ってるけどさ、そんなお気楽な考えでお家の継続なんてできるはずがない。婚姻は親の意思以外でさせられるわけもないさ。それにもまして政権にとって、貴族たちに勝手に婚姻関係を結んで勢力拡大なんかされるのは、脅威でしかない。エド幕府は大名たちのそんな婚姻を管理したはずだし、それこそサツマの息子とチョーシューの娘とかが勝手にくっついたりしないように、最大限目を光らせていたはずだよ』
『だろうねえ』
『ああ、あったね。そこに留学で来ていた隣国の王女とこちらの第二王子が、貴族学院で出会って意気投合するんだ』
『でも、実際にこの国には、そんな学院はない』
『そうだね』
『これ、不思議な話だと思わない? ラノベに近づけることに熱意を持っていると思われる神さんが、学校がないままで放置するなんて。冒険者ギルドと貴族学校は、ある意味ラノベに不可欠な二大要素だよ。圧倒的多数の諸作品に、みんな同じく当然のように設定されている。まるでこの二つがなければまともなラノベと認定されないんじゃないかってくらいに。これを神さんが見落とすはずがないと思う』
『だねえ』
『でね、あたしはエトヴィンから聞いたんだけど、知ってるかな。三十年以上前にこの国でも、貴族の子女対象の学校を作ろうという提案が持ち上がったことがあるんだって』
『それは、知らなかった』
『政権上層部の重鎮の一人が言い出して、他のお歴々も一度は承認の方向に動き出していた。それがしばらくして反対意見が増えて、没案になったんだって』
『へええ。どうしてなのかな』
『まあ考えてみれば分かる、こんな話が承認されるわけがないんだ』
『えーー、だってノベルではふつうに何処でも存在するものなんだよ』
『ノベルではどういう理由で設立されたのか知らないけどね、おそらくこちらの現実であっちと異なるのは、こっちの王族貴族が自分の地位と血統を存続させたい意思を持っているってことだと思う』
『…………』
『――――』
『……えーと、それって現実でもフィクションでも、至極当然のことじゃないのかな』
『常識的にはそう思うけどね、フィクションの中のことはよく知らない。とにかく考えてみればさ、政権を担う王族とその周辺にとって絶対避けたいのは、政権に反抗する勢力が力をつけることと、そんな複数の勢力が手を結ぶことだよ。この世界、火薬や銃が開発されていないことや他の点を見て、前世日本に当てはめるとムロマチから戦国時代に近い感じがするよね。地方の領地では小競り合いや領土の取り合いなんかも時々起きているらしいけど、中央の指導がある程度届いているみたいだから、ムロマチ時代とエド時代の中間みたいなイメージかな。だから分かりやすいところでエドのトクガワ幕府を例にとると、トクガワの将軍さんがまず気を入れたのはその、いわゆる外様大名が力をつけることと複数のそんな藩が協力し合うことが、絶対起きないようにする体制作りだったはずだ』
『うん、そんな感じのこと、本で読んだ』
『細かいこととかいろいろ言ったらキリがないけどさ、そんな施策がある程度功を奏して、エド幕府は二百年以上も続いたと言われる。その末にこれもいろいろあるけど、一つの要因として外様であるサツマ藩とかチョーシュー藩とかが手を組んだ結果、幕府に反旗を翻して将軍位返上に到ったわけだよね。もの凄く単純に言うと、二百年間この外様対策を徹底してきたから幕府を継続できた、その対策が続かなくなって幕府は滅びた。しつこいけれどこれだけが要因じゃない、いろいろ挙げたらキリがないんだろうけどね』
『そんなのも読んだな』
『本当に古今東西、異世界まで含めてさまざまな王家の事情とか知り尽くすことはできないけどさ、まずまちがいなくこの外様大名対策みたいなのは、どの政権でも多かれ少なかれ頭にあったと思うよ。そんな政権が、全貴族の子女対象の学校なんて、思いつくはずもないし設立に到るはずもない』
『ああ』
『簡単に言って、エド幕府がサツマの跡取りに実力をつけさせるための機構を作ろうと思うか? サツマとチョーシューの後継者同士が意気投合するかもしれない機会を提供するか? そういう話だよね。教育は力だって言われるけどさ、この時代の上の人たちにとって国全体の力を向上させることより、自分の家を守る、対抗勢力に力をつけさせないっていう方が圧倒的に重要のはずだよ』
『だ……ね』
『もっと言えば、男女共学なんてお花畑思考、絶対生まれるはずがない。ノベルではよく貴族当主が、我が子には政略結婚を強いなければいけないが恋愛の機会も持たせてやりたい、なんて言ってるけどさ、そんなお気楽な考えでお家の継続なんてできるはずがない。婚姻は親の意思以外でさせられるわけもないさ。それにもまして政権にとって、貴族たちに勝手に婚姻関係を結んで勢力拡大なんかされるのは、脅威でしかない。エド幕府は大名たちのそんな婚姻を管理したはずだし、それこそサツマの息子とチョーシューの娘とかが勝手にくっついたりしないように、最大限目を光らせていたはずだよ』
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