ONE

四百珊瑚

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天女編

第五十五話 傷

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 神谷ははるかの入院している診療所を出た直後、末永たちの通っている高校に向かった。そして、教師たちから末永と仲のいい生徒たちの情報を聞き出し、その生徒たちのもとへ向かった。たまたま学校に残っていた生徒の一人に、あの日末永たちと一緒に例の廃ビルに行った生徒を見つけた。末永と彰悟の喧嘩の一部始終については深く聞かず、ビルの場所だけ聞き出した。どうやらビルは末永の父親が所有しているものらしい。特に何の理由らしい理由もなく、警察官が息子たちが喧嘩していた場所を見せてくれと言われて、見せる父親もいないだろう、神谷と桜は例のごとく独断捜査をするに至った。

 「もぉー、今年入って許可の無い捜査やるの何回目ですか?」

 「んー、何回目だろうねー」

 「いい加減にしてくださいよね、付き合うこっちの身にもなってください」

 「でも大体俺のやることっていい線いってんじゃん?だから桜ちゃんもついてくるんでしょ?」

 「…」

 そうこうするうちに彰悟と末永が争い、怪物が現れた部屋についた。

 「これは…」

 「んまぁどう見ても高校生が喧嘩しただけじゃこうはならないわな」

 廃ビルとはいえ、全体的にはあまり劣化していない。しかし、ビルの一室だけ、明らかに壁や床が傷ついていた。壁や床には大きな刀で切ったような無数の傷があり、そこらじゅうに瓦礫が転がっていた。

 「ちょっと鑑識呼ぶか」

 「え?そんなことしたら私たち問題にされちゃいますよ?!」

 「いや、がある」

 「?」

 この時桜は嫌な予感がしていた。

………

 翌日、末永が学校に登校すると、久々に少し前まで付き合っていたがらの悪い生徒に声をかけられた。彰悟との件で末永を見捨てて逃げ出した以来、末永の子分たちはもう一度末永に歩み寄るでも責めるでもなく、さけていたが突然声をかけてきたので少し驚いた。

 「どうした急に?」

 「末永、お前さすがにヤバくないか?」

 「え?」

 「昨日の放課後、警察が来てさ、お前と矢本との喧嘩のことについて聞かれたんだよ?」

 「…」

 「あんまり深くは言わなかった、だけどあの場所とか、そこで喧嘩したとかは話しちまった…お前警察はヤバくないか?」

 「おいどうした?」

 末永たちのところに丁度登校してきた彰悟がやって来た。

 「なぁ彰悟、俺、逮捕されるかも…」

 「はぁ?」

 「こいつが警察…多分神谷さんたちだ、神谷さんたちに俺たちの喧嘩のこと聞かれたって…」

 「え?そうなの?まぁでも大丈夫じゃね?被害にあった俺は末永のこと許してるし…あ、でもお前らからは謝られてないな」

 末永の昔の仲間ににらみをきかせる彰悟。

 「あ、ご、ごめん…でも一番悪いのは末永なんだからな!じ、じゃあ…」

 そう言って逃げるようにその場をあとにした。

 「なぁ、神谷さんたちはどこまで知ったって?」

 「え、あ、あんま深くは話してないらしいけど、俺たちがあの場所で喧嘩したことを知られたらしい…どこまで知ってるなはわからないけど、そこまで深くは話してないって…」

 「そうか…」

 場所を知られたのはまずいな…多分怪物と戦った痕跡が残ってるはず…彰悟は思った。
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