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天女編
第五十六話 不祥事
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「え、えぇと神谷さんこちらの方は?」
困惑した様子で神谷に話しかける桜。目の前にはいつもと変わりない神谷と、青ざめた表情の青年がいた。走ってきたのか、大量の汗をかいている。
「あ、この子ね、鑑識課の根本くんね!警察学校卒業して鑑識課に配属された直後に、大学時代の仲間と行った飲み会で酔った女の子強引にホテルに連れ込もうとしてるところを俺がぶっとばして以来、目を覚ませてくれた恩を返したいって俺の仕事手伝ってくれてるのよ」
「いやそれ恩を返してもらってんじゃなくて恐かt…」
「さぁて根本くん、俺のお手伝いしてくれるよね!」
「は、はいぃ!喜んで!」
なるべくつっこまないようにしようとはるかは悟った。
「さてじゃあ俺たちはガ○トでお茶でもしにいこうか!」
「いや行かねぇよ!つーかなんで夜の9時過ぎにタバコくせぇおっさんとお茶しにいかなきゃ行けねぇんだよ!」
「あ、お二人は是非どこかで休んでてください…」
「ほら!根本くんもああ言ってくれてるし!」
「いや行かねぇよ」
根本が黙々と作業を進めるなか、神谷と桜が夫婦漫才を繰り広げるのであった。
………
「はるか!久しぶり!」
「あ、ママ!」
はるかの母のぞみは音楽家としての仕事が忙しく、はるかの事件後の事情聴取以降、はるかとなかなか会えていなかった。ただでさえ忙しい上に夫による娘への虐待と、それによる夫の逮捕も重なってか痩せ細っていた。
「ママ、大丈夫?最近疲れてない?」
「なに言ってるのよ!はるかこそ大丈夫?学校の友達とは連絡とってる?アイドルの仕事は続けることにしたみたいだけど本当に大丈夫?」
のぞみははるかに質問するばかりだった。おそらく彼女自信も今回の件で相当疲弊しているだろう。しかしそれ以上に娘のことを気にしていた。
「本当にごめんなさい…私があの人と再婚したせいで…」
「ううん…ママは何も悪くないよ」
涙ながらに謝罪するのぞみ。彼がはるかを傷つけるきっかけを作ったのは自分だと、心の中でずっと自分を責め続けていたようだ。
「あなたの本当のお父さん、直也さんを亡くして、失望してるときにあの人は私のもとに現れたの。出会ったときは…いえ、ついこの間まで、私の前でだけは本当に優しく振る舞う人だったのね。逮捕されたことを聞いたとき驚いたわ。まさかあの人が…って。この前面会で会ったらまるで別人のような言動だった。本当に悪魔のような人…」
「ママ…」
はるかとのぞみは泣きながら肩を抱きあった。今の彼女たちの心を癒す手段は、ただ泣くことだけであった。
困惑した様子で神谷に話しかける桜。目の前にはいつもと変わりない神谷と、青ざめた表情の青年がいた。走ってきたのか、大量の汗をかいている。
「あ、この子ね、鑑識課の根本くんね!警察学校卒業して鑑識課に配属された直後に、大学時代の仲間と行った飲み会で酔った女の子強引にホテルに連れ込もうとしてるところを俺がぶっとばして以来、目を覚ませてくれた恩を返したいって俺の仕事手伝ってくれてるのよ」
「いやそれ恩を返してもらってんじゃなくて恐かt…」
「さぁて根本くん、俺のお手伝いしてくれるよね!」
「は、はいぃ!喜んで!」
なるべくつっこまないようにしようとはるかは悟った。
「さてじゃあ俺たちはガ○トでお茶でもしにいこうか!」
「いや行かねぇよ!つーかなんで夜の9時過ぎにタバコくせぇおっさんとお茶しにいかなきゃ行けねぇんだよ!」
「あ、お二人は是非どこかで休んでてください…」
「ほら!根本くんもああ言ってくれてるし!」
「いや行かねぇよ」
根本が黙々と作業を進めるなか、神谷と桜が夫婦漫才を繰り広げるのであった。
………
「はるか!久しぶり!」
「あ、ママ!」
はるかの母のぞみは音楽家としての仕事が忙しく、はるかの事件後の事情聴取以降、はるかとなかなか会えていなかった。ただでさえ忙しい上に夫による娘への虐待と、それによる夫の逮捕も重なってか痩せ細っていた。
「ママ、大丈夫?最近疲れてない?」
「なに言ってるのよ!はるかこそ大丈夫?学校の友達とは連絡とってる?アイドルの仕事は続けることにしたみたいだけど本当に大丈夫?」
のぞみははるかに質問するばかりだった。おそらく彼女自信も今回の件で相当疲弊しているだろう。しかしそれ以上に娘のことを気にしていた。
「本当にごめんなさい…私があの人と再婚したせいで…」
「ううん…ママは何も悪くないよ」
涙ながらに謝罪するのぞみ。彼がはるかを傷つけるきっかけを作ったのは自分だと、心の中でずっと自分を責め続けていたようだ。
「あなたの本当のお父さん、直也さんを亡くして、失望してるときにあの人は私のもとに現れたの。出会ったときは…いえ、ついこの間まで、私の前でだけは本当に優しく振る舞う人だったのね。逮捕されたことを聞いたとき驚いたわ。まさかあの人が…って。この前面会で会ったらまるで別人のような言動だった。本当に悪魔のような人…」
「ママ…」
はるかとのぞみは泣きながら肩を抱きあった。今の彼女たちの心を癒す手段は、ただ泣くことだけであった。
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