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怖い夢
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瑞波は、雀の声を聞いて朝になったことを知った。気づけば、部屋に朝日が忍び込んでいた。
向かい側のベッドは、空になっていた。
「え…、深苑?どこに?」
慌てて身を起こすと、ドアが閉じられる音がした。
見れば、洗いたての髪をタオルで拭いながら、深苑が部屋に戻って来たところだった。
「瑞波、起きたの?」
「深苑、あ…、シャワー浴びたの」
「うん…」
深苑はクローゼットを開け、制服を取り出し着替え始めた。瑞波はなるべく見ないようにしたが、目の端に、深苑のスリップの裾が映った。
白いレースが、深苑の細い腰に揺れる。
白い指先が撫でる度に、しなやかなに仰け反っていた腰。
糸を辿るように脳裏に浮かんだのは、深苑と鬼の密事だった。
「!」
瑞波は、耳が熱くなるのを感じた。思わず、耳たぶに触れる。
目を閉じ、息を整えようと大きく息を吸った。
「どうかした?」
傍で声がして、目を開けば、目の前に首を傾げた深苑が覗き込んでいた。
乾きかけた髪が、白いセーラー襟にかかっていた。
白い頬に黒目がちの大きな瞳が、心配そうに覗き込む。
白いセーラー服を身に纏った深苑は、どこから見ても清純で、美しい。
「だ、大丈夫。風邪ひいちゃうよ、深苑」
「え、でも、大丈夫?瑞波」
「うん。ちょっと、変な夢を見たみたい」
「夢…?」
夢、という言葉に反応したのか、深苑は一瞬眉を寄せた。
「あ…、深苑?」
こちらを見上げる瞳が、一瞬潤んだように見えた。
一度口元を指で抑えたまま顔を伏せると、もう一度、深苑は瑞波を見た。その瞳は、にっこりと微笑んでいた。
「早く、支度してご飯たべにいこう、瑞波」
深苑は立ち上がると、瑞波の手を握り、引いた。目の前に翻るそのスカートに、瑞波は光る何かを見た。
「うん…あれ?深苑?まって…」
「なあに?」
指先にそっと摘めば、それは蜘蛛の糸様な、白く長い、絹糸の様な美しい髪だった。
「髪…?白い…」
白い、と口にした時には遅かった。深苑の顔を見れば、目元を赤く染めて、口元を押さえていた。
大きな瞳が、涙を浮かべたまま小さく震えている。
「深苑…?」
「瑞波、わたし…」
小さな唇を震わせ、深苑は呟いた。
「わたし、鬼に…犯されているの」
大きな瞳から涙を零し、深苑は自らを抱きしめた。
「昨日みたいに、月の無い、真っ暗な夜は…いつも」
瑞波は、言葉を失って見惚れた。
透明な雫が、きらきらと頬を伝って落ちていく様を。
「…瑞波、わたし、汚れてしまっている?わたし、もう…」
汚い?深苑の唇が、そう声もなく動いた。
その唇を見つめたまま、瑞波は動いていた。
「!」
細い肩を抱きしめ、耳元に顔を埋めるようにして瑞波は言った。
「そんなこと無い!」
腕の中で、ぴくりと深苑は動いた。
「あなたは、美しかった。まるで白い花が紅く染まっていくように。色付くように…。ほんとよ、深苑」
「瑞波…」
「わたし、見惚れて、あなたを起こすことが出来なかった。それどころか、もっと見ていたいって、思っていたわ。汚れているのは、私よ」
懺悔を口にするように、瑞波は言葉を紡いだ。
瑞波の腕の中で、その胸に顔を埋めた深苑は、小さくなっていた。
「…瑞波…でも、ただ与えられる快楽なんて、ただの、罪だわ」
その声は、瑞波の耳に届くことはなかった。
向かい側のベッドは、空になっていた。
「え…、深苑?どこに?」
慌てて身を起こすと、ドアが閉じられる音がした。
見れば、洗いたての髪をタオルで拭いながら、深苑が部屋に戻って来たところだった。
「瑞波、起きたの?」
「深苑、あ…、シャワー浴びたの」
「うん…」
深苑はクローゼットを開け、制服を取り出し着替え始めた。瑞波はなるべく見ないようにしたが、目の端に、深苑のスリップの裾が映った。
白いレースが、深苑の細い腰に揺れる。
白い指先が撫でる度に、しなやかなに仰け反っていた腰。
糸を辿るように脳裏に浮かんだのは、深苑と鬼の密事だった。
「!」
瑞波は、耳が熱くなるのを感じた。思わず、耳たぶに触れる。
目を閉じ、息を整えようと大きく息を吸った。
「どうかした?」
傍で声がして、目を開けば、目の前に首を傾げた深苑が覗き込んでいた。
乾きかけた髪が、白いセーラー襟にかかっていた。
白い頬に黒目がちの大きな瞳が、心配そうに覗き込む。
白いセーラー服を身に纏った深苑は、どこから見ても清純で、美しい。
「だ、大丈夫。風邪ひいちゃうよ、深苑」
「え、でも、大丈夫?瑞波」
「うん。ちょっと、変な夢を見たみたい」
「夢…?」
夢、という言葉に反応したのか、深苑は一瞬眉を寄せた。
「あ…、深苑?」
こちらを見上げる瞳が、一瞬潤んだように見えた。
一度口元を指で抑えたまま顔を伏せると、もう一度、深苑は瑞波を見た。その瞳は、にっこりと微笑んでいた。
「早く、支度してご飯たべにいこう、瑞波」
深苑は立ち上がると、瑞波の手を握り、引いた。目の前に翻るそのスカートに、瑞波は光る何かを見た。
「うん…あれ?深苑?まって…」
「なあに?」
指先にそっと摘めば、それは蜘蛛の糸様な、白く長い、絹糸の様な美しい髪だった。
「髪…?白い…」
白い、と口にした時には遅かった。深苑の顔を見れば、目元を赤く染めて、口元を押さえていた。
大きな瞳が、涙を浮かべたまま小さく震えている。
「深苑…?」
「瑞波、わたし…」
小さな唇を震わせ、深苑は呟いた。
「わたし、鬼に…犯されているの」
大きな瞳から涙を零し、深苑は自らを抱きしめた。
「昨日みたいに、月の無い、真っ暗な夜は…いつも」
瑞波は、言葉を失って見惚れた。
透明な雫が、きらきらと頬を伝って落ちていく様を。
「…瑞波、わたし、汚れてしまっている?わたし、もう…」
汚い?深苑の唇が、そう声もなく動いた。
その唇を見つめたまま、瑞波は動いていた。
「!」
細い肩を抱きしめ、耳元に顔を埋めるようにして瑞波は言った。
「そんなこと無い!」
腕の中で、ぴくりと深苑は動いた。
「あなたは、美しかった。まるで白い花が紅く染まっていくように。色付くように…。ほんとよ、深苑」
「瑞波…」
「わたし、見惚れて、あなたを起こすことが出来なかった。それどころか、もっと見ていたいって、思っていたわ。汚れているのは、私よ」
懺悔を口にするように、瑞波は言葉を紡いだ。
瑞波の腕の中で、その胸に顔を埋めた深苑は、小さくなっていた。
「…瑞波…でも、ただ与えられる快楽なんて、ただの、罪だわ」
その声は、瑞波の耳に届くことはなかった。
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