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二人の旅立ち
5-5 それぞれの思い
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「感謝します。薬師殿。
時に、つまらない事を言いますが」
「何じゃ?」
「俺は、この国の人間では無いのです。
ハルヴェリア教国で、戦争に加わわっていました。
そのような人間でも、治療をしてくれて感謝します」
ふむ、と薬師の老人は、改めてバロウを見た。
その目には、殆ど感情らしき物は見られなかった。
ただ、達観した深い湖の底のような色があった。
「今となっては戦争は終わっておる。
それに、もし戦時中であったとしても、ワシは
薬師として怪我をした人々を助けるのが務めじゃ。
ツジヤ人であろうと、ハルヴェリア人であろうと関係が無い。
ワシが、お主に治療を施すのを拒む理由は、何処にも無い」
てきぱきとバロウの肩に包帯を巻いて行く。
バロウは、ただ薬師に対し深く頭を下げて礼をしていた。
教国の者だから、助けないのでは無い。
同じ人間であるから、助けるのだと。
どうやらツジヤにも、出来た人間は居たらしい。
まるでこの薬師は妻のラピのような思考をする人間だ、と
バロウは思った。
治療室から、待合室まで移動するとワダツミとアミルア達が
そこで待っていた。
「無事、治療は済んだ。
今日は、この施療施設に泊めて貰って明日の朝一番に
王に挨拶に行くのはどうか」
バロウの提案に、ワダツミは頷きを返す。
それから受付で助手に、交渉をする。
「それでは、こちらのお部屋へ」
薬師の助手の女性が、リリシ達とは別の仮眠室に
6人を案内する。
通された部屋は、十分に広くそして休むには打ってつけの
静かな環境だった。
「男性の方は、向こうの部屋へ」
最初の部屋には、ワダツミとアミルアが
残された。
「あの、ワダツミさん。ありがとうございますわ。
貴女の助けが無ければ、リリシは守れなかったのです」
「我が王の命令は絶体だ。私は自分の任務を果たしただけだ。
礼には及ばない。それよりアミルア殿。疲れただろう。
今夜は、しっかりと休まれよ」
「ええ、そのつもりですわ。
ワダツミさん、貴女だけに話しますけれど……
実は私は、獣人の里に居たんです」
「どう言う事だ? 獣人の里とは一体」
この大陸では、獣人達の存在は知られていない。
アミルアは、おおまかに自分の体験について
語ってみせた。
「そうだったのか……では、その不思議な笛も」
「ええ、獣人の技術からなる物です。
獣人は、その存在を人間に知られる事は避けて
いました。おそらく、異種族だと知られれば人間が
何らかのアクションを起こすのだと……はっきりと言うと
土地に攻め込まれると信じていたようです。
そして、私は獣人の内の一人との結婚を約束しています」
「アミルア殿は、それで良いのか?」
「約束は、破りませんわ。私とリリシは、彼らに
助けられたのですから。
だけど、里に戻る前に誰かに話しておきたかった……。
忘れないでくださいな。私が、ここに在った事。
そして一緒に戦った事を」
時に、つまらない事を言いますが」
「何じゃ?」
「俺は、この国の人間では無いのです。
ハルヴェリア教国で、戦争に加わわっていました。
そのような人間でも、治療をしてくれて感謝します」
ふむ、と薬師の老人は、改めてバロウを見た。
その目には、殆ど感情らしき物は見られなかった。
ただ、達観した深い湖の底のような色があった。
「今となっては戦争は終わっておる。
それに、もし戦時中であったとしても、ワシは
薬師として怪我をした人々を助けるのが務めじゃ。
ツジヤ人であろうと、ハルヴェリア人であろうと関係が無い。
ワシが、お主に治療を施すのを拒む理由は、何処にも無い」
てきぱきとバロウの肩に包帯を巻いて行く。
バロウは、ただ薬師に対し深く頭を下げて礼をしていた。
教国の者だから、助けないのでは無い。
同じ人間であるから、助けるのだと。
どうやらツジヤにも、出来た人間は居たらしい。
まるでこの薬師は妻のラピのような思考をする人間だ、と
バロウは思った。
治療室から、待合室まで移動するとワダツミとアミルア達が
そこで待っていた。
「無事、治療は済んだ。
今日は、この施療施設に泊めて貰って明日の朝一番に
王に挨拶に行くのはどうか」
バロウの提案に、ワダツミは頷きを返す。
それから受付で助手に、交渉をする。
「それでは、こちらのお部屋へ」
薬師の助手の女性が、リリシ達とは別の仮眠室に
6人を案内する。
通された部屋は、十分に広くそして休むには打ってつけの
静かな環境だった。
「男性の方は、向こうの部屋へ」
最初の部屋には、ワダツミとアミルアが
残された。
「あの、ワダツミさん。ありがとうございますわ。
貴女の助けが無ければ、リリシは守れなかったのです」
「我が王の命令は絶体だ。私は自分の任務を果たしただけだ。
礼には及ばない。それよりアミルア殿。疲れただろう。
今夜は、しっかりと休まれよ」
「ええ、そのつもりですわ。
ワダツミさん、貴女だけに話しますけれど……
実は私は、獣人の里に居たんです」
「どう言う事だ? 獣人の里とは一体」
この大陸では、獣人達の存在は知られていない。
アミルアは、おおまかに自分の体験について
語ってみせた。
「そうだったのか……では、その不思議な笛も」
「ええ、獣人の技術からなる物です。
獣人は、その存在を人間に知られる事は避けて
いました。おそらく、異種族だと知られれば人間が
何らかのアクションを起こすのだと……はっきりと言うと
土地に攻め込まれると信じていたようです。
そして、私は獣人の内の一人との結婚を約束しています」
「アミルア殿は、それで良いのか?」
「約束は、破りませんわ。私とリリシは、彼らに
助けられたのですから。
だけど、里に戻る前に誰かに話しておきたかった……。
忘れないでくださいな。私が、ここに在った事。
そして一緒に戦った事を」
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