創成魔法の使い手の巫女は、対の存在に気が付きました

二人の旅立ち

5-6 朝の時間

「私は、アミルア殿の事を忘れない。
例え、遠く異国の地に居たとしても。
そして、獣人の事は他言しないと約束しよう」

　ワダツミは、静かにそう告げた。
その言葉にアミルアは、ふっと肩の力を抜く。

「ありがとうですわ。ワダツミさん。
今日は、もう寝ましょう。お疲れ様でした」

　それぞれの布団に潜り込み、目を瞑ると健やかな眠気が
襲って来る。
二人は、朝まで一度も目を覚まさず熟睡していた。

　屋根と寝る所がある環境は、良い物だ。
ぐっすりと眠れた事で、元気を取り戻したリリシが
仮眠室で目を覚ます。

　同じ部屋では、カグヅチが別の布団で寝ていた。
先に目を覚ましたリリシには、気が付いた様子が無く
尚も寝ている。
彼を起こさないように、そっと布団から離れると
部屋のドアを開ける。
　眠る前の記憶が、あまり無い。
確か、妖怪の森で、結界が成功して。それから。
それから？
　ここは、何処だろう。と戸惑っていると向こうから
一人の老人が歩いて来た。

「起きなさったかね。ここは、ワシの施療院じゃ。
どうじゃ？体の具合は」

　穏やかそうな老人は、自分は薬師だと言う。

「うん、ちょっとダルいけど昨日よりはマシかな。
健康だよっ」
「ふぉふぉふぉ。それでは、特製の薬湯をお持ちしよう。
効能は、残った疲労の回復と滋養強壮。
今、助手が朝餉あさげの準備をしておるからの。
お嬢ちゃん、薬湯を飲んだらお仲間達を起こしに行っては
くれぬか？」
「うん、そうするね、えっと、あなたの名前は……」
「ワシの名前は、アオキじゃ。
薬師をやっておる。よろしくじゃ」

　待合室に置かれた椅子の上にちょこんと座る。
程無くして、アオキが持って来てくれた湯気の立つ
薬湯の入ったコップを受け取った。

　緑のどろどろとした液体は、何か不思議な香りがする。
キャベツと菜っ葉を混ぜたような草の匂い。
リリシは、そっとコップに口を付ける。

　青臭いけど、嫌な味では無い。
こくこくと飲むと体がポカポカと暖まった。
途端に、お腹がぐーっと鳴り。

「腹が減るのは善きことじゃ。それでは、ワシは、調合をして来るからの。
後は、助手のニッカに聞いておくれ」
「ありがとう、アオキさん」

　アオキと入れ替わりに、ニッカがやって来た。
黒の長髪と、白い看護用の着物を着た女性である。

「お部屋までご案内します」

　ニッカに付いて行き、まずはワダツミとアミルアの居る部屋の
ドアをノックする。
　中で、気配がありアミルアが顔を覗かせる。

「リリシ、起きたのですわね。どうですの？」
「休んだから体は、平気！　朝ご飯があるみたいだからワダツミさんを
起こしてあげて」