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小さな気付き、転じる未来
1-5 気付いてしまった
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朝起きてから、背中が汗でべっとりとしていた。
お風呂に入りたい、とアミルアに言うと直ぐに湯浴みの準備を
してくれた。
着替えて朝食を早めに終わらせると、教団内の入浴施設に向かう。
中は、大理石で作られた広々とした浴槽が置かれてあった。
浴槽に湛えられたたっぷりとしたお湯が、丁度良い温度を保っていた。
「ふぅっ」
かけ湯をして、湯に浸かると大きくリリシは息を吐いた。
心地よい湯が、汗を流して行く。そして考えるのは、あの少年の事。
全くこちらの言葉が届いた様子が無いが、何故少年の助けを求める声は
あんなに鮮明だったのか。
たかが夢。されど夢。
思い出す度に、思考がぐるぐると堂々巡りをしていた。
「失礼しますわね」
薄衣一枚の姿で、アミルアが浴槽に入って来ると、
「後でお背中流しますね?」
その場で待機している。
「ねぇ、アミルア」
「はい、何ですか?」
「いいえ、やっぱり何でも無いの……」
夢の事を言おうかどうか逡巡する。
意見を聞いてみたい。でも、こんな事を言ってしまっていいのだろうか?
「リリシ、朝食の時から上の空でしたけど大丈夫ですか?
悩み事なら聞きましてよ?」
リリシは、ぎくっとして顔を強張らせた。
バレている! 彼女の勘の鋭さに吃驚しながらも何でも無いよ、と首を
緩く横に振った。そしてごぼっと一気に口元まで湯に浸かる。
湯の中に口から出た泡が、一つ。二つ。
程無くしてぷはっと水面に口を出すと、リリシは背中を洗って貰う為に
立ち上がった。
その後数日の間、リリシは全く同じ夢を見た。
よく目を凝らすと、少年の紅い瞳が見える。
待っていて、私。貴方を助けたい!と口に出すと少年の動きが
僅かに止まった。
そしてその紅い瞳が、こちらを見たような気がした。
相変わらず少年を包む炎の勢いは、止まる事は無い。
だが、その炎の質が激しい物から静かな灯に変わったのは
気のせいだろうか?
絶対に、貴方を助けるから。リリシは、心に誓った。
その日、起床後にリリシは決意の表情でアミルアとそしてラピに
夢の出来事を語るのだった。
これは、自分一人でどうこう出来る物では無い。周囲の人に打ち明けて
知恵を貸してもらうのだ。
「炎を纏う少年の夢……?」
ラピが、興味深そうにリリシの言葉を繰り返した。
「不思議な夢ですわね。しかも、おそらくリリシだけが見た夢でしょうね。
ラピ様、貴女はどう分析しますか?」
「炎と言うのは、その少年も創成魔法の使い手と
考えるのが自然ね。書物の中に、四大元素と言う概念があるのよ。
主に医療の分野に使われている概念ね。
炎と水。大地と空の風。互いに相容れる事はなくとも、対となる宿命を持った
要素よ」
お風呂に入りたい、とアミルアに言うと直ぐに湯浴みの準備を
してくれた。
着替えて朝食を早めに終わらせると、教団内の入浴施設に向かう。
中は、大理石で作られた広々とした浴槽が置かれてあった。
浴槽に湛えられたたっぷりとしたお湯が、丁度良い温度を保っていた。
「ふぅっ」
かけ湯をして、湯に浸かると大きくリリシは息を吐いた。
心地よい湯が、汗を流して行く。そして考えるのは、あの少年の事。
全くこちらの言葉が届いた様子が無いが、何故少年の助けを求める声は
あんなに鮮明だったのか。
たかが夢。されど夢。
思い出す度に、思考がぐるぐると堂々巡りをしていた。
「失礼しますわね」
薄衣一枚の姿で、アミルアが浴槽に入って来ると、
「後でお背中流しますね?」
その場で待機している。
「ねぇ、アミルア」
「はい、何ですか?」
「いいえ、やっぱり何でも無いの……」
夢の事を言おうかどうか逡巡する。
意見を聞いてみたい。でも、こんな事を言ってしまっていいのだろうか?
「リリシ、朝食の時から上の空でしたけど大丈夫ですか?
悩み事なら聞きましてよ?」
リリシは、ぎくっとして顔を強張らせた。
バレている! 彼女の勘の鋭さに吃驚しながらも何でも無いよ、と首を
緩く横に振った。そしてごぼっと一気に口元まで湯に浸かる。
湯の中に口から出た泡が、一つ。二つ。
程無くしてぷはっと水面に口を出すと、リリシは背中を洗って貰う為に
立ち上がった。
その後数日の間、リリシは全く同じ夢を見た。
よく目を凝らすと、少年の紅い瞳が見える。
待っていて、私。貴方を助けたい!と口に出すと少年の動きが
僅かに止まった。
そしてその紅い瞳が、こちらを見たような気がした。
相変わらず少年を包む炎の勢いは、止まる事は無い。
だが、その炎の質が激しい物から静かな灯に変わったのは
気のせいだろうか?
絶対に、貴方を助けるから。リリシは、心に誓った。
その日、起床後にリリシは決意の表情でアミルアとそしてラピに
夢の出来事を語るのだった。
これは、自分一人でどうこう出来る物では無い。周囲の人に打ち明けて
知恵を貸してもらうのだ。
「炎を纏う少年の夢……?」
ラピが、興味深そうにリリシの言葉を繰り返した。
「不思議な夢ですわね。しかも、おそらくリリシだけが見た夢でしょうね。
ラピ様、貴女はどう分析しますか?」
「炎と言うのは、その少年も創成魔法の使い手と
考えるのが自然ね。書物の中に、四大元素と言う概念があるのよ。
主に医療の分野に使われている概念ね。
炎と水。大地と空の風。互いに相容れる事はなくとも、対となる宿命を持った
要素よ」
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