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小さな気付き、転じる未来
1-11 悪意の檻
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リリシが、目を開けるとそこは薄暗い檻の中だった。
手足は、紐できつく縛られている。
どうして、こんな事に。
慎重に記憶を探ると、赤ら顔の店主のおじさんが勧めてくれた
ジュースを飲んだのが、覚えている最後だった。
少しばかり痛む頭に手を遣りながら、周囲を探ると直ぐ近くに
人の気配がある。
「リリシ、起きましたのね?」
心配そうに語るのは、同じく手足を縛られたアミルアだ。
途端にほっとしてしまって肩の力を僅かに抜く。
ゴト、ゴトと時折揺れる事で何らかの乗り物に乗っている事に
気が付くのだ。
「アミルア、ごめん。ごめんなさい……」
自分が、ちゃんと注意と警戒をして居れば。そしてあのおじさんに裏切られた事が
改めてショックだった。人間は、善意だけの生き物では無い。
それは、理屈では分かっていてもこの事態は防げなかった。
「大丈夫でしてよ。これから、どんな事が起こっても私が
守って見せますわ。そしてこちらこそごめんなさい。
私の不注意で……」
「アミルア。そんなに自分を責めないでよ。
ここ、何処だろう?何処へ向かっているんだろう?」
ゴト、ゴトと車輪が土の上を穿つ音と振動。
「馬車ですわね。何処が目的地が分かりませんけど、私が目を
覚ました時には半日近く経っていた筈……。
おそらくは、人身売買組織の犯行ですわね。私達は、商品として
運ばれ……リリシ、どうされましたの?」
「私、怖い。人間を商品にだなんて、そんなの許せないし
その考えが怖いよ」
「世の中は、醜い事と理不尽な事が溢れていますわ……。
それに負けず、リリシが輝いてくれるように私は尽力しましてよ。
隙を見て逃げ出しますから……」
そこでガタッと馬車が止まり、檻の前にある幌がめくられた。
初めて会う、眉間に傷が入ったゴロツキ風貌が、二人をじろっと睨んだ。
「ぶつぶつ言っても無駄だ! 丸聞こえだぞ! 言っとくがなぁ、
逃げようとしたら全力で痛めつけるからな。
それこそ、反抗する気も起きない程な。ま、お前らは商品だから
傷を付けるのは見えない箇所で勘弁してやるぜ。ゲハハハハ!」
許せない、とリリシは唇を噛んだ。涙は一滴も流れなかったが、
この悪党達の犯行を許さない、とひたすら思った。
隣のアミルアも、普段見た事も無いような険しい目つきでゴロツキ風貌を
下から睨みあげて居る。
「とりあえず、休憩だ。飯をやるから表に出ろ」
男が、檻を開けてリリシとアミルアの足の紐を外してやる。
二人は、手だけ縛られた状態で馬車の外に出た。
時刻は、夜。静けさ漂う森の近くの街道からやや離れた土地を
馬車はここまで走って来たのだ。
粗末な皿に申し訳程度に置かれた固いパンと、コップに入った水が
突き出され、それらを男の手が口元へ押し込む。
手が、扱えないのがこれ程もどかしいとは想像もつかなかった。
縛られた状態で、食事をさせられると言うのは屈辱でもあった。
咀嚼をしながら、リリシが悔しさを顔に滲ませるとアミルアが
近くまで寄って来て体を僅かに密着させる。
その暖かさに、安堵をしながらひたすら食事の時間を過ごしていた。
手足は、紐できつく縛られている。
どうして、こんな事に。
慎重に記憶を探ると、赤ら顔の店主のおじさんが勧めてくれた
ジュースを飲んだのが、覚えている最後だった。
少しばかり痛む頭に手を遣りながら、周囲を探ると直ぐ近くに
人の気配がある。
「リリシ、起きましたのね?」
心配そうに語るのは、同じく手足を縛られたアミルアだ。
途端にほっとしてしまって肩の力を僅かに抜く。
ゴト、ゴトと時折揺れる事で何らかの乗り物に乗っている事に
気が付くのだ。
「アミルア、ごめん。ごめんなさい……」
自分が、ちゃんと注意と警戒をして居れば。そしてあのおじさんに裏切られた事が
改めてショックだった。人間は、善意だけの生き物では無い。
それは、理屈では分かっていてもこの事態は防げなかった。
「大丈夫でしてよ。これから、どんな事が起こっても私が
守って見せますわ。そしてこちらこそごめんなさい。
私の不注意で……」
「アミルア。そんなに自分を責めないでよ。
ここ、何処だろう?何処へ向かっているんだろう?」
ゴト、ゴトと車輪が土の上を穿つ音と振動。
「馬車ですわね。何処が目的地が分かりませんけど、私が目を
覚ました時には半日近く経っていた筈……。
おそらくは、人身売買組織の犯行ですわね。私達は、商品として
運ばれ……リリシ、どうされましたの?」
「私、怖い。人間を商品にだなんて、そんなの許せないし
その考えが怖いよ」
「世の中は、醜い事と理不尽な事が溢れていますわ……。
それに負けず、リリシが輝いてくれるように私は尽力しましてよ。
隙を見て逃げ出しますから……」
そこでガタッと馬車が止まり、檻の前にある幌がめくられた。
初めて会う、眉間に傷が入ったゴロツキ風貌が、二人をじろっと睨んだ。
「ぶつぶつ言っても無駄だ! 丸聞こえだぞ! 言っとくがなぁ、
逃げようとしたら全力で痛めつけるからな。
それこそ、反抗する気も起きない程な。ま、お前らは商品だから
傷を付けるのは見えない箇所で勘弁してやるぜ。ゲハハハハ!」
許せない、とリリシは唇を噛んだ。涙は一滴も流れなかったが、
この悪党達の犯行を許さない、とひたすら思った。
隣のアミルアも、普段見た事も無いような険しい目つきでゴロツキ風貌を
下から睨みあげて居る。
「とりあえず、休憩だ。飯をやるから表に出ろ」
男が、檻を開けてリリシとアミルアの足の紐を外してやる。
二人は、手だけ縛られた状態で馬車の外に出た。
時刻は、夜。静けさ漂う森の近くの街道からやや離れた土地を
馬車はここまで走って来たのだ。
粗末な皿に申し訳程度に置かれた固いパンと、コップに入った水が
突き出され、それらを男の手が口元へ押し込む。
手が、扱えないのがこれ程もどかしいとは想像もつかなかった。
縛られた状態で、食事をさせられると言うのは屈辱でもあった。
咀嚼をしながら、リリシが悔しさを顔に滲ませるとアミルアが
近くまで寄って来て体を僅かに密着させる。
その暖かさに、安堵をしながらひたすら食事の時間を過ごしていた。
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