創成魔法の使い手の巫女は、対の存在に気が付きました

そこは、南国。獣人の里

2-12 里の生活

　次の日、起きるとサリーの朝食作りの手伝いを頼まれた。
　獣人の里では、南国芋と呼ばれる長くて赤い芋をすり潰して
それに水を加え、よく練って丸く成型した物をかまどで焼く。
　熱が入りふっくらと程良く膨らんでくれば、鉄の棒でかまどから
取り出され南国芋パンの出来上がりである。

「ここでは芋パンが主食なのヨ。それと畑で採れた
野菜を使ったサラダも」

　柔らかそうな表面を持つ出来立てのパンに、リリシは
顔を輝かせる。
　いずれ、作り方を覚えて作って貰うかラ、とサリーが
伝えるとリリシもアミルアも深く頷いた。
　そして五人は、地面のクッションに座って食事を始める。
　楽しい会話と、美味しいパンで爽やかな朝食の時間を
過ごす事が出来た。

「じゃあ、狩りに行って来るゾ」

　細長い投げ槍のような物を持ったダクザが、息子のケルノスを
伴って出発する。
　どうやらここでは、男は狩り。女は、炊事と畑仕事を
分担しているようだった。

「ダクザさん、狩りも畑仕事も両方手伝って貰うって
前に言ってましたわね」
「うんうん。教団に居た頃は、こんなに体を動かした事
無かったからどんな仕事でも新鮮で何だか楽しいよ。
サリーさんは、親切だし」
「ふふフ。じゃあ片付けが終わったら畑に行くわヨ」

　皿を全て洗い、農作業用の白い服に着替えて三人は
近くの畑に向かう。
　そこでは、人参やキャベツ等の品種を育てている。

「水遣りと雑草抜きが、主なお仕事ヨ。
特に雑草は、入念に抜いておかないといけないワネ」

　リリシとアミルアは、作物を間違えて抜かないように
気を付けながら雑草を毟って行く。
　サリーは、雑草は毎日しつこく生えて来るからその度に
抜かないと駄目なのヨと教えてくれた。
　日差しは、厳しくたちまちの内にリリシの喉がカラカラになる。
それを伝えると、サリーは水筒に入れた水を差し出してくれた。
　ただのお水なのに、今はすごく美味しい！
労働の後の水の美味しさを知る事が、出来たのは貴重な体験だった。
　途中、人参の葉に付いていた毛虫にアミルアが吃驚してしまう等の
ハプニングがあったが畑での仕事の手伝いも無事終わり
三人はテントに戻った。
　昼食を簡単に済ませると、今度は洗濯と裁縫と掃除が
待っている。

「サリーさんは、私達が来る前はこの仕事を一人でしていたんだね。
すっごく大変」
「慣れて来ると、苦でも無いワネ。でも、今はアナタ達が
手伝ってくれてとても助かるワヨ」
　
　確かに、三人で仕事をすれば終わるのも早い。
　サリーに細やかに教えて貰いながら、リリシ達は
仕事を覚えて行く事となる。