【R18】SM学園

ましゅまろ

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最初の公開調教

 「今日はお前たちM候補生の資質をより明確に見極めるため、公開訓練を行う」

 その朝、冷たい声でそう告げられたとき、僕の心臓は一気に早鐘を打った。

 公開訓練――。
 それはつまり、学園のホールに集められた調教師候補生や教官たち、場合によっては外部からの視察者の前で、裸のまま調教を受け、その反応や従順さを見せつける場だ。

 逃げたい。怖い。誰か助けて。

 そう思っても無駄だってわかっていた。この首輪を付けられた時点で、僕の意思なんてどこにもなかった。

    ◇ ◇ ◇

 広いホールには赤い絨毯が敷かれ、ぐるりと一段高い座席に調教師候補たちが座っている。
 その中央に僕らM候補生は裸のまま並ばされた。

 僕は恥ずかしくて、情けなくて、俯いて自分の足元ばかり見ていた。
 でも、視線を上げると、あの青年――前に僕を褒めてくれた調教師候補の青年がこちらを見ていた。名前はまだ聞いていない。けれど、ひどく印象に残っている冷たい灰色の瞳だ。

 目が合った瞬間、胸の奥がじゅっと熱くなる。
 どうしてだろう。怖いはずなのに、見られていると不思議と安心する。

 (……僕、変だ……)

 そんなふうに考えていると、女教官が静かに歩み寄ってきて、僕の肩に手を置いた。

 「九条玲。君はここから始めなさい」

 「……っ……」

 隣にいた少年がホッと息をついたのが聞こえた。代わりに僕の心臓はもっと早くなる。

 用意された木の台に乗せられ、四つん這いになるよう指示される。裸の肌が冷たい台に触れた瞬間、ぞくりと背筋が震えた。

 「よいか、玲。これからお前はこの場にいる全員に自分がどれだけ従順な存在かを示す。どんなに恥ずかしくても、どんなに怖くても、拒絶は許されない。いいね?」

 「……はい……」

 声が小さすぎたのか、女教官は僕の顎をきゅっと持ち上げて、もう一度言わせた。

 「はい……!」

 そう言った瞬間、頬を撫でるような優しい笑みを浮かべられた。それが嬉しくて、また泣きそうになる。

    ◇ ◇ ◇

 「では始めなさい」

 そう言って、女教官は横に立っていた別の調教師候補――恐らく18歳くらいの少年――に鞭を渡した。

 細くしなる革鞭。それが僕の背中の上を優しくなぞる。

 「ひっ……」

 くすぐられるような、怖いような感触に、自然に声が漏れた。

 「いい声だ。ちゃんと感じるんだね」

 少年は意地悪そうに笑って、それから容赦なく振り下ろした。

 「――あっ!」

 ピシャリという鋭い音がホールに響く。
 背中に焼けるような痛みが走った。思わず肩をすくめ、頭を下げる。

 「首を下げるな。目を上げろ」

 そう言われて、僕は必死に顔を上げた。目の端に涙が滲んでいた。

 (見られてる……こんな姿……)

 客席に並ぶ調教師候補たちの視線が一斉に僕へ注がれているのがわかる。
 その中には、あの灰色の瞳の青年もいた。じっと、僕の反応を見ていた。

 痛いのに、恥ずかしいのに、その視線に少しだけ救われた。

 (……見てて……ちゃんと僕が、良い子でいられるか……)

 また鞭が振り下ろされ、今度は腰のあたりに当たった。

 「んっ……あ……!」

 声を押し殺そうとしたのに漏れてしまう。
 羞恥で顔が熱くなるのに、どこか身体の奥がじんわりと疼いた。

    ◇ ◇ ◇

 数回の鞭打ちが終わると、次は跪くよう指示された。
 台の上で膝を揃え、背筋を伸ばし、首を少し傾ける。それはこの学園で奴隷候補が最初に教わる「お披露目の姿勢」だった。

 「玲、どうだい? 痛いか?」

 さっき鞭を持っていた少年が、冗談めかしてそう言った。

 「……はい、痛いです……」

 小さく答えると、その少年は笑った。

 「でも逃げなかったな。ちゃんと耐えた。いい子じゃないか」

 「……っ……」

 その言葉に胸がぎゅっと締めつけられて、僕は涙が零れた。
 なのにそれは悲しいからじゃなかった。ただ、褒められたのが嬉しくて泣いたんだと思う。

 (僕……本当におかしくなっちゃったのかな……でも……)

 嬉しかった。
 従順でいることで、僕はここにいてもいいって思えた。

    ◇ ◇ ◇

 「終了。玲は今日の公開訓練、優秀だった。これからもその素質を伸ばしなさい」

 女教官がそう言って僕の頭を撫でてくれた。
 その瞬間、怖さも羞恥も全部どこかへ飛んでいった気がした。

 (良かった……僕、ちゃんと従順にできたんだ……)

 気づけば、また涙が頬を伝っていた。

    ◇ ◇ ◇

 訓練が終わった夜、部屋でベッドに横たわって天井を見つめる。

 身体のあちこちが鞭のせいで熱を持っていて、触れるとひりひりした。
 でも、それより胸の奥が変に温かくて、何度もそこを手で押さえてしまう。

 (僕……あの人に褒められたいのかな……)

 思い出すのは、灰色の瞳の青年の顔だった。
 彼は訓練中、一度も顔色を変えずに僕を見ていた。でもあの冷たい視線が、なぜかずっと僕を支えてくれていた気がする。

 (……会いたいな……)

 そう思った瞬間、自分でも呆れるくらいドキドキしてしまった。

    ◇ ◇ ◇

 そして数日後、願いはあっけなく叶った。

 部屋のドアをノックし、入ってきたのはその青年だった。今日から彼が僕の専属調教師になると告げられた。

 「玲、だな。……これからお前は俺が育てる。お前の全部は俺のものだ。分かるか?」

 「……はい……」

 その冷たい目に見つめられて、僕は膝の上で拳をぎゅっと握った。

 「俺の言うことは絶対だ。拒絶したら、今までの比じゃない苦痛を味わわせる。だが……従順なら、ちゃんと褒めてやる」

 「……はい……僕、ちゃんと従います……」

 頭を深く下げた。すると青年はその髪を撫でてくれた。
 それだけで胸がじゅわっと熱くなって、目の奥がまた滲む。

 (褒められたい……もっと……)

 自分の中にそんな欲望が芽生えているのを、はっきりと自覚してしまった。
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