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はじめての“恋人デート”
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「ねえ、おにいちゃん」
朝食を食べ終えたあと、はるがマグカップを両手で包みながら言った。
「今日さ、このままどこか行かない? デート……したい」
蒼は驚いたように顔を上げる。
「デート?」
「うん。“恋人になって初めてのデート”って、大事なやつでしょ?」
はるは少しだけ照れながらも、真っ直ぐな目をしていた。
「今まで何度も一緒に出かけてきたけど……今日は、違う意味で隣を歩きたいな」
その言葉に、蒼はゆっくりと笑った。
「……いいよ。行こうか、“恋人として”のデートに」
⸻
昼前にふたりで駅に向かい、電車で数駅先のショッピングモールへ向かった。
特別な場所じゃないけれど、“今日のふたり”にとっては、どんな景色も新鮮だった。
人混みの中で自然に手を繋ぐ。
交差点でははるがちょっとだけ距離を詰めて、蒼の肩に腕を軽く当てる。
(こんなにも自然に、こうして歩けるんだな)
蒼は、はるの手の感触を確かめるように指を絡めた。
「ねえ、おにいちゃん」
「ん?」
「歩きながら手を繋ぐのって、……こんなに嬉しいんだね」
「そうか?」
「うん。ずっと“夢”だったから。
“好きな人と手を繋いで、街を歩く”っていうの」
はるがはにかんで笑う。
その横顔があまりにも眩しくて、蒼は思わず目を逸らしそうになった。
「じゃあ、今日はその夢、たくさん叶えような」
⸻
本屋を見て、洋服屋を冷やかして、ペアのキーホルダーを選んだ。
「……これ、なんかさ、ちょっと高校生カップルみたいじゃない?」
「いいじゃん。今しかできないんだし」
ふたりが選んだのは、小さな星の形をしたキーホルダー。
「じゃあ、蒼くんのバッグにつけてよ」
「お、おう」
「その代わり、ぼくのスマホにもつけるね。お揃い」
“恋人”という言葉を交わしてからのはるは、
どこか素直で、遠慮がなくて、でもまっすぐだった。
(ああ、恋人って、こんなにも近い存在なんだな)
蒼は、はるといると自分が変わっていくのを感じていた。
⸻
カフェで遅めのランチを取りながら、はるがふと尋ねる。
「……今日、ぼくのこと、何回“好き”って思った?」
「え?」
「正直に言って?」
蒼は苦笑しながら、少し考えるふりをして答えた。
「……もう数えるのやめた」
「……ずるい。そういうとこ、ずるいよ」
はるは笑って、コップの水をひとくち飲む。
「でもね、ぼくも。
隣にいるだけで、嬉しくて嬉しくて、“好き”が止まらない」
⸻
夕方、駅までの帰り道。
蒼がふと、はるの肩を軽く抱く。
「また、すぐに会えるのに……別れるのが寂しいって思うの、変かな」
「いや、俺もだよ」
「ほんと?」
「ほんと」
はるが足を止めて、蒼を見上げる。
「じゃあ、もう一回だけ、“好き”って言って」
「……好きだよ」
「ぼくも、だいすき」
そのまま、駅前の人混みのなかで、ふたりは小さく唇を重ねた。
それは、今日の締めくくりでもあり、
新しい日々への小さな約束のようだった。
朝食を食べ終えたあと、はるがマグカップを両手で包みながら言った。
「今日さ、このままどこか行かない? デート……したい」
蒼は驚いたように顔を上げる。
「デート?」
「うん。“恋人になって初めてのデート”って、大事なやつでしょ?」
はるは少しだけ照れながらも、真っ直ぐな目をしていた。
「今まで何度も一緒に出かけてきたけど……今日は、違う意味で隣を歩きたいな」
その言葉に、蒼はゆっくりと笑った。
「……いいよ。行こうか、“恋人として”のデートに」
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特別な場所じゃないけれど、“今日のふたり”にとっては、どんな景色も新鮮だった。
人混みの中で自然に手を繋ぐ。
交差点でははるがちょっとだけ距離を詰めて、蒼の肩に腕を軽く当てる。
(こんなにも自然に、こうして歩けるんだな)
蒼は、はるの手の感触を確かめるように指を絡めた。
「ねえ、おにいちゃん」
「ん?」
「歩きながら手を繋ぐのって、……こんなに嬉しいんだね」
「そうか?」
「うん。ずっと“夢”だったから。
“好きな人と手を繋いで、街を歩く”っていうの」
はるがはにかんで笑う。
その横顔があまりにも眩しくて、蒼は思わず目を逸らしそうになった。
「じゃあ、今日はその夢、たくさん叶えような」
⸻
本屋を見て、洋服屋を冷やかして、ペアのキーホルダーを選んだ。
「……これ、なんかさ、ちょっと高校生カップルみたいじゃない?」
「いいじゃん。今しかできないんだし」
ふたりが選んだのは、小さな星の形をしたキーホルダー。
「じゃあ、蒼くんのバッグにつけてよ」
「お、おう」
「その代わり、ぼくのスマホにもつけるね。お揃い」
“恋人”という言葉を交わしてからのはるは、
どこか素直で、遠慮がなくて、でもまっすぐだった。
(ああ、恋人って、こんなにも近い存在なんだな)
蒼は、はるといると自分が変わっていくのを感じていた。
⸻
カフェで遅めのランチを取りながら、はるがふと尋ねる。
「……今日、ぼくのこと、何回“好き”って思った?」
「え?」
「正直に言って?」
蒼は苦笑しながら、少し考えるふりをして答えた。
「……もう数えるのやめた」
「……ずるい。そういうとこ、ずるいよ」
はるは笑って、コップの水をひとくち飲む。
「でもね、ぼくも。
隣にいるだけで、嬉しくて嬉しくて、“好き”が止まらない」
⸻
夕方、駅までの帰り道。
蒼がふと、はるの肩を軽く抱く。
「また、すぐに会えるのに……別れるのが寂しいって思うの、変かな」
「いや、俺もだよ」
「ほんと?」
「ほんと」
はるが足を止めて、蒼を見上げる。
「じゃあ、もう一回だけ、“好き”って言って」
「……好きだよ」
「ぼくも、だいすき」
そのまま、駅前の人混みのなかで、ふたりは小さく唇を重ねた。
それは、今日の締めくくりでもあり、
新しい日々への小さな約束のようだった。
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