日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

文字の大きさ
10 / 120
3.帝都に蠢く影

特高警察の監視網

しおりを挟む
昭和十六年十二月二十七日。
東京・霞が関、内務省庁舎の一室。

特別高等警察、通称「特高」。思想犯・反体制派の摘発を主務とする秘密警察組織の中心にいたのが、警視正水原和典だった。

「蒼月レイ。帝大所属、年齢十三。軍の戦略顧問的存在であり、国民的人気を獲得しつつある」

水原は資料を読み上げながら、静かに言った。

「……国家の枠組みを“思想”から変えようとする者だ。危険極まりない」

部下の刑事が訊ねる。

「直接拘束しますか?」

「いや、“英雄”には“疑念”という毒が効く。まずは徹底的に監視し、情報を収集せよ。
周囲に“何か胡散臭い”と思わせることだ」

それは、“事実”ではなく“印象”によって名声を崩す――特高流の“心理作戦”だった。



同じ頃、帝国大学。

蒼月レイの身辺には、確かに異変が起き始めていた。
帝大の一部教員が突如解任され、研究室の予算が減額。
学生たちの間には「レイは陸軍に睨まれているらしい」という噂が流れていた。

久坂が言った。

「これは情報戦だ。敵は君を殴る前に、君の“信頼”を壊しにきてる」

レイは冷静に資料の整理を続けながら呟いた。

「恐れてはいけない。国家は“顔”を見せずに攻撃してくる。だが、敵の輪郭が分かれば、戦える」



翌日。

レイはあえて正面から特高の存在に切り込んだ。
帝大内の研究発表会で、堂々とこう述べたのだ。

「……学問は、思想であり、思想は未来の設計図です。
もしこの国が、“思うこと”すら許さなくなったとき――我々が失うのは、自由ではなく“未来”です」

会場が静まり返る。
それは間違いなく、特高警察への宣戦布告だった。

その発言は翌日には新聞社によって一部引用され、国民の間で再び「少年の知性」に対する信頼が戻りつつあった。

水原は報告を受け、眉をひそめた。

「やはりただの子供ではないな。……ならば、次は“外堀”から埋めよう」

彼は新たな指令を出した。

「少年の関係者――帝大教授、補佐官、家族。
彼らを“引き裂け”。孤立させれば、自壊する」



その夜。
レイは、机に置かれた封筒を見つけた。

中には、無言の写真が一枚。
帝大内で、レイと久坂が会話する姿を、望遠レンズで撮影したものだった。

レイはそれを見つめ、表情を動かさず、ただこう呟いた。

「この国は、未来を恐れているんだな」

そして、そっと書類の下に写真を挟んだ。

「でも、僕は――この国よりも未来を信じる」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

対ソ戦、準備せよ!

湖灯
歴史・時代
1940年、遂に欧州で第二次世界大戦がはじまります。 前作『対米戦、準備せよ!』で、中国での戦いを避けることができ、米国とも良好な経済関係を築くことに成功した日本にもやがて暗い影が押し寄せてきます。 未来の日本から来たという柳生、結城の2人によって1944年のサイパン戦後から1934年の日本に戻った大本営の特例を受けた柏原少佐は再びこの日本の危機を回避させることができるのでしょうか!? 小説家になろうでは、前作『対米戦、準備せよ!』のタイトルのまま先行配信中です!

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

小沢機動部隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
1941年4月10日に世界初の本格的な機動部隊である第1航空艦隊の司令長官が任命された。 名は小沢治三郎。 年功序列で任命予定だった南雲忠一中将は”自分には不適任”として望んで第2艦隊司令長官に就いた。 ただ時局は引き返すことが出来ないほど悪化しており、小沢は戦いに身を投じていくことになる。 毎度同じようにこんなことがあったらなという願望を書き綴ったものです。 楽しんで頂ければ幸いです!

大和型重装甲空母

ypaaaaaaa
歴史・時代
1937年10月にアメリカ海軍は日本海軍が”60000トンを超す巨大戦艦”を”4隻”建造しているという情報を掴んだ。海軍はすぐに対抗策を講じてサウスダコタ級戦艦に続いてアイオワ級戦艦を4隻建造することとした。そして1941年12月。日米は戦端を開いたが戦列に加わっていたのは巨大戦艦ではなく、”巨大空母”であった。

九九式双発艦上攻撃機

ypaaaaaaa
歴史・時代
欧米列強に比べて生産量に劣る日本にとって、爆撃機と雷撃機の統合は至上命題であった。だが、これを実現するためにはエンジンの馬力が足らない。そこで海軍航空技術廠は”双発の”艦上攻撃機の開発を開始。これをものにしして、日本海軍は太平洋に荒波を疾走していく。

日英同盟不滅なり

竹本田重朗
歴史・時代
世界は二度目の世界大戦に突入した。ヒトラー率いるナチス・ドイツがフランス侵攻を開始する。同時にスターリン率いるコミンテルン・ソビエトは満州に侵入した。ヨーロッパから極東まで世界を炎に包まれる。悪逆非道のファシストと共産主義者に正義の鉄槌を下せ。今こそ日英同盟が島国の底力を見せつける時だ。 ※超注意書き※ 1.政治的な主張をする目的は一切ありません 2.そのため政治的な要素は「濁す」又は「省略」することがあります 3.あくまでもフィクションのファンタジーの非現実です 4.そこら中に無茶苦茶が含まれています 5.現実的に存在する如何なる国家や地域、団体、人物と関係ありません 以上をご理解の上でお読みください

万能艦隊

ypaaaaaaa
歴史・時代
第一次世界大戦において国家総力戦の恐ろしさを痛感した日本海軍は、ドレットノート竣工以来続いてきた大艦巨砲主義を早々に放棄し、個艦万能主義へ転換した。世界の海軍通はこれを”愚かな判断”としたが、この個艦万能主義は1940年代に置いてその真価を発揮することになる…

処理中です...