日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ

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3.帝都に蠢く影

陸軍の策謀

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昭和十六年十二月下旬。
東京・市ヶ谷。陸軍省作戦課の一室に、秘密裏の会合が開かれていた。

出席者は、大谷敬三中将、牟田口廉也少将、辻政信中佐ら――いずれも戦闘第一主義の陸軍強硬派である。

「――このままでは、“あの小僧”に戦争を終わらされるぞ」

大谷がテーブルを叩いた。

「我々が積み重ねてきた精神と武勲、それを、十三のガキが“外交と心理戦”で塗り替える気だ」

辻政信が鼻で笑った。

「香取や海軍はあの少年を“未来”と呼んでいるらしい。冗談だ。未来は我らが銃で切り開くものだろう」

牟田口も頷いた。

「“蒼月レイ”――あれはもはや単なる研究員ではない。国民はあの少年を“希望”と見なしている。ならば、我々の存在意義は消える」

沈黙ののち、大谷が口を開いた。

「彼を――消す」

その言葉に、部屋の空気が凍った。



同じ頃、帝国大学。
蒼月レイは来る戦後構想のシミュレーションに没頭していた。

「戦争が終わった後、国家は何を軸に再構築されるべきか……軍ではなく、“制度”と“教育”だ」

久坂恭介が苦笑する。

「十三歳にして、戦後のことまで考えてるのか」

「“戦争に勝つ”とは、“戦後を制する”ことです。戦争は目的ではなく、最大のリスクでもある」

レイは、戦後のアジア秩序、経済圏構想、国際機関の再設計などをすでに描き始めていた。

「でも、そういう考えが、誰かの逆鱗に触れることもある」

久坂はふと真顔になる。

「君が何をしようと、敵は“理屈”では動かない。“排除すべき存在”だと判断すれば、命も狙ってくる」



それは、冗談ではなかった。

その夜、レイの部屋の郵便受けに差し込まれていた一通の茶封筒。

中に入っていたのは、焼け焦げた軍靴の写真――
そして、紙片にこう書かれていた。

「あの者も、最初は“天才”と呼ばれた」

それは、かつて戦争反対を唱え、消された軍人・石原莞爾を暗示していた。

久坂はすぐに動いた。

「……やつら、本気だ」



翌日、香取清一郎大佐は内々にレイを呼び出した。

「陸軍の一部が動き始めている。君を“国を乱す者”として危険視している」

「私は戦争を止めたいだけです」

「それが“裏切り”と受け取られるのが、この国の今の現実だ」

香取は深く椅子に沈みながら続けた。

「君の命は、もう“国の意思”の中にある。……決して自由ではいられない」



夜、レイは帝大の屋上から、灯の消えた東京の街を見下ろしていた。

彼の瞳には、恐怖も迷いもない。あるのは、ただ一つの覚悟だった。

「来るなら来い。僕はもう――“未来”を見てしまったんだ」

その時、風が吹いた。冬の空気の中に、かすかな“銃火の匂い”が混じっているように感じられた。

それは、帝都の影に忍び寄る“粛清の気配”だった。
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