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それでも、好きなんだ
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日曜日の午後。
空はどこか落ち着かず、雲がゆっくり流れていた。
蒼は部屋の掃除を済ませ、カップに温かいお茶を淹れていた。
何度も時計を見ては、意味もなくソファを整える。
そして――インターホンが鳴った。
「……いらっしゃい」
「……おじゃまします」
玄関に立っていたはるは、以前と同じ笑顔はなかった。
けれど、ちゃんと前を見ていた。
⸻
リビングに入ると、ふたりはいつものように向かい合って座った。
けれど、空気は以前とまるで違った。
はるが、先に口を開いた。
「……ぼくね、ほんとは“もう話したくない”って思ったときもあったよ」
蒼は小さく頷いた。
その言葉は、はるがどれだけ傷ついていたかを何よりも雄弁に語っていた。
「でも、それでも……やっぱり“話したい”って思ったの。
だって、“好き”って気持ちは、怒っても消えなかったから」
蒼は、そのまっすぐな目を見返した。
「……ありがとう、来てくれて」
「言わなきゃ伝わらないってわかってたけど、
言っても伝わらないかもしれないって思ったら、こわくなった」
「わかるよ。俺も同じだった」
蒼はゆっくりと、言葉を選ぶように続けた。
「俺にとって、はるはただの“かわいい子”じゃない。
“守ってあげたい子”でも、“弟みたいな存在”でも、もうなくなってる。
だからこそ、あの日はこわかった。
この関係に名前をつけてしまったら、
なにかを壊してしまう気がして」
はるは息をのんだまま、静かに聞いていた。
「でも……今なら、少しわかる気がする。
名前がなくても、かたちが決まってなくても、
“想い合う”ってことは、それだけで十分に重いって」
蒼は、手を伸ばした。
けれど、その手はぎゅっと握るのではなく、そっと机の上に置かれただけだった。
「すぐに“付き合おう”とか、“恋人になろう”って言えなくてごめん。
でも俺は、はるを“本気で大切な人”だと思ってる。
これからも一緒にいたい。
その気持ちには、嘘がない」
はるはしばらく何も言わず、ただ目を伏せていた。
やがて、小さく微笑んだ。
「……それでも、好きなんだ。
きっとぼく、これからもずっと好きでいると思う。
だから、今の答えでも、ちゃんと受け取る」
蒼は、心の奥に染み込むようなその言葉に、静かに息をついた。
ふたりの間にある距離は、もう以前とは違っていた。
“こわくて踏み出せなかった場所”に、ようやく足を踏み入れたような感覚だった。
空はどこか落ち着かず、雲がゆっくり流れていた。
蒼は部屋の掃除を済ませ、カップに温かいお茶を淹れていた。
何度も時計を見ては、意味もなくソファを整える。
そして――インターホンが鳴った。
「……いらっしゃい」
「……おじゃまします」
玄関に立っていたはるは、以前と同じ笑顔はなかった。
けれど、ちゃんと前を見ていた。
⸻
リビングに入ると、ふたりはいつものように向かい合って座った。
けれど、空気は以前とまるで違った。
はるが、先に口を開いた。
「……ぼくね、ほんとは“もう話したくない”って思ったときもあったよ」
蒼は小さく頷いた。
その言葉は、はるがどれだけ傷ついていたかを何よりも雄弁に語っていた。
「でも、それでも……やっぱり“話したい”って思ったの。
だって、“好き”って気持ちは、怒っても消えなかったから」
蒼は、そのまっすぐな目を見返した。
「……ありがとう、来てくれて」
「言わなきゃ伝わらないってわかってたけど、
言っても伝わらないかもしれないって思ったら、こわくなった」
「わかるよ。俺も同じだった」
蒼はゆっくりと、言葉を選ぶように続けた。
「俺にとって、はるはただの“かわいい子”じゃない。
“守ってあげたい子”でも、“弟みたいな存在”でも、もうなくなってる。
だからこそ、あの日はこわかった。
この関係に名前をつけてしまったら、
なにかを壊してしまう気がして」
はるは息をのんだまま、静かに聞いていた。
「でも……今なら、少しわかる気がする。
名前がなくても、かたちが決まってなくても、
“想い合う”ってことは、それだけで十分に重いって」
蒼は、手を伸ばした。
けれど、その手はぎゅっと握るのではなく、そっと机の上に置かれただけだった。
「すぐに“付き合おう”とか、“恋人になろう”って言えなくてごめん。
でも俺は、はるを“本気で大切な人”だと思ってる。
これからも一緒にいたい。
その気持ちには、嘘がない」
はるはしばらく何も言わず、ただ目を伏せていた。
やがて、小さく微笑んだ。
「……それでも、好きなんだ。
きっとぼく、これからもずっと好きでいると思う。
だから、今の答えでも、ちゃんと受け取る」
蒼は、心の奥に染み込むようなその言葉に、静かに息をついた。
ふたりの間にある距離は、もう以前とは違っていた。
“こわくて踏み出せなかった場所”に、ようやく足を踏み入れたような感覚だった。
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