ショタに癒されたいんです。

このままずっと一緒にいられたら

その日の午後、蒼はふとした思いつきで、本屋に立ち寄った。

新生活や春向けの特集棚に並ぶ「一人暮らしの始め方」や「部屋づくりのコツ」――
その隣に置かれていたのは、「子どもと暮らす家時間」という一冊だった。

ページをめくると、そこには親子でもない、教師でもない、
けれど子どもと“共に過ごす”時間を大切にする人たちの記録が並んでいた。

（家族じゃなくても、ちゃんと築ける関係がある。
もしかしたら、俺とはるも――）

本を閉じて、蒼は胸の内に静かに芽生える気持ちに気づいていた。

（このままずっと、傍にいたい）

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その夜。
蒼の部屋に来たはるは、宿題を終えたあと、何をするでもなくソファで丸まっていた。

「……おにいちゃん、今日はなんか静かだね」

「そうか？」

「うん。なんか、“考えごとしてるときの顔”してる」

「……鋭いな、お前は」

蒼は少し笑って、ソファに座りなおした。

「……たとえばさ、もしもこのまま、
毎日こうして過ごしていけたら、どう思う？」

はるは目を瞬かせた。

「“このまま”？ って？」

「一緒にごはん作って、学校の話聞いて、たまにけんかして、たまに黙って座って。
……そういう日がずっと続いていくのって、悪くないなって」

はるは小さく笑った。

「それ、ぼくも何度も思ったよ。
今日も“帰りたくない”って思ったし。
でも、言っちゃうと重いかなって思って、言わなかった」

「……重くなんかないよ」

蒼はそう言って、ふと、はるの髪に指を伸ばし、
そっと、ひと筋を撫でた。

はるは驚きもせず、ただそのまま目を閉じて、身を預けた。

「このままずっと……一緒にいられたらいいのにね」

その声は、まるで夢のように淡く、やさしかった。

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言葉にしなくても、
“好き”はそこにあった。

そして、ふたりの未来は――
まだ名前はないけれど、静かに、確かに始まりつつあった。