花吹雪が舞う夜空

モカココ

文字の大きさ
1 / 3

プロローグ

しおりを挟む

ーいつか絶対、奴らを見返してやる!

そう宣言してから、もう何年経っただろう。何年もが経ち、見返すことができるようになった今でも何かが足りない。パズルのピースが何個か足りない…そんな感じ。この虚無感は一体何だろう…。

   お父さん、お母さん、
   私は今、貴方達が自慢できる子供に、
        なることができていますか…?





「おい、頭が隠居するってよ!」
「マジかよ、どうなるんだこれから…」
「荒れるぞー、今日の幹部会は…」

ここは、この国で1番有名である、国家指定暴力団、竜崎組の本屋敷である。月に1度幹部会というのが開かれるのだが、毎回毎回酷い言い争いが繰り広げられるのだが、今回は一体どんないさかいが起きてしまうのやら…。

「隠居するとは言ったが、実勢には残るつもりじゃ。ワシのことはこれから“頭”ではなく、“会長”とでも呼んでくれ。出来るだけ次期組長の施政に首を突っ込むつもりはないが、ワシが出るだけで違う場面もあることだろう。そのための保険だと思ってくれればいい」

そこにいた幹部会一同は少し動揺した声を上げた。まだ退くのは早いのではないか、次期組長は誰ですか、などなど、様々な疑問が会長となった竜崎組の“顔”に投げられる。それをまぁまぁ落ち着けと言わんばかりの仕草で宥め、

「隠居するとはいってもこの本屋敷は出ることにはなるが、ココの近くで生活をするようになるだけだし、他から呼び出しなり何なりがあればワシが顔を出しても良い。ただ、ワシが生きている間に次期組長を立派に育て、確立させておきたいのだ」

「それで、次期組長は誰なんですか?」

誰もが1番気になっているであろう質問が投げ掛けられる。彼らには会長の決めたことに逆らう気は一切ないため、隠居すると彼が宣言したのであれば、それはこちらがいくら言っても撤回されることはない。そのため、最も重要なのは次期組長は誰だ、ということなのである。

「それはだな…」

誰もが固唾を呑んで会長の次の言葉を待っている。何たって次期組長候補はかなりの数いるのだ。誰が組長になってもおかしくはない、候補はたくさん出ており、既に派閥までできてしまっている。そんな中、一体彼は誰を指名するのか…。


「 優陽、お前だ 」


そういった瞬間、その場の空気が一瞬凍りつき、皆一同に指名された人物の方を向き、途端に怒号で溢れかえった。

「何故ですか!?」
「どうしてアイツが!!」
「アレがトップならこの組も終わるな」
「アイツがなるぐらいならウチの若が!」
「そうだ、ウチの若も!」
「アイツの下につくのは御免被る」
「アイツがやる意味が分からない」
「何を考えてるんですか、頭!!」
「あんな人権もないような奴らばっかり囲っている奴に、トップに立ってほしくないですけどねぇ」
「あいつんとこ、過半数以上が両性類じゃねぇかよ。そんな奴ら抱えている奴に、」

「ガタガタうるせぇよ」

その時、雑踏に紛れることなく、1つの通る声がその場に響き渡った。人形かと思うぐらいに整っている綺麗な顔から放たれたドスの聞いた声は、その場を静寂にさせるには効果覿面だった。

「頭がオレをってんだから、それに従えよ。それとも何か?お前ら頭に忠誠心もねぇのか?頭に従うのがお前らの忠義だろうが。文句ある奴はここから出てけよ。…あぁいや、こっちが出て分家の方で生活してやるよ。頭もまだ出る姿勢はあるみたいだし。こっちも別にお前らの下につくことはもちろん、上になることだって願い下げだ。あとなぁ…」

突然立ち上がり1人の男の前に立ったかと思うと、

「痛っ…!!」

その男の手の甲に一筋の赤い線-斬り傷が入っていた。

「オレのことはどう言ったって何言ったって構わない。ただ、オレの周りの人のことを少しでも悪く言う奴は許さない。それになぁ、色んなことガタガタ抜かしてる奴が多いがこの世界では、喧嘩が強くて頭がいい奴が勝ち上がっていくんだよ。お前ら全員、オレに勝てもしないくせにガタガタぬかすんじゃねぇよ」

実際問題、大の大人達が揃っているのだが、ここにいる人達は喧嘩でも頭脳でも優陽に勝てたことがない。それは本人達も自覚しているため、何も言い返せずにいた。

「オレが、竜崎組の筆頭になります」
「…あぁ、頼んだぞ」

こうして、少し波乱がありながらも、若くして日本一の指定暴力団の筆頭となった優陽の日常が始まるのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

敵国の将軍×見捨てられた王子

モカ
BL
敵国の将軍×見捨てられた王子

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

処理中です...