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プロローグ
しおりを挟むーいつか絶対、奴らを見返してやる!
そう宣言してから、もう何年経っただろう。何年もが経ち、見返すことができるようになった今でも何かが足りない。パズルのピースが何個か足りない…そんな感じ。この虚無感は一体何だろう…。
お父さん、お母さん、
私は今、貴方達が自慢できる子供に、
なることができていますか…?
「おい、頭が隠居するってよ!」
「マジかよ、どうなるんだこれから…」
「荒れるぞー、今日の幹部会は…」
ここは、この国で1番有名である、国家指定暴力団、竜崎組の本屋敷である。月に1度幹部会というのが開かれるのだが、毎回毎回酷い言い争いが繰り広げられるのだが、今回は一体どんないさかいが起きてしまうのやら…。
「隠居するとは言ったが、実勢には残るつもりじゃ。ワシのことはこれから“頭”ではなく、“会長”とでも呼んでくれ。出来るだけ次期組長の施政に首を突っ込むつもりはないが、ワシが出るだけで違う場面もあることだろう。そのための保険だと思ってくれればいい」
そこにいた幹部会一同は少し動揺した声を上げた。まだ退くのは早いのではないか、次期組長は誰ですか、などなど、様々な疑問が会長となった竜崎組の“顔”に投げられる。それをまぁまぁ落ち着けと言わんばかりの仕草で宥め、
「隠居するとはいってもこの本屋敷は出ることにはなるが、ココの近くで生活をするようになるだけだし、他から呼び出しなり何なりがあればワシが顔を出しても良い。ただ、ワシが生きている間に次期組長を立派に育て、確立させておきたいのだ」
「それで、次期組長は誰なんですか?」
誰もが1番気になっているであろう質問が投げ掛けられる。彼らには会長の決めたことに逆らう気は一切ないため、隠居すると彼が宣言したのであれば、それはこちらがいくら言っても撤回されることはない。そのため、最も重要なのは次期組長は誰だ、ということなのである。
「それはだな…」
誰もが固唾を呑んで会長の次の言葉を待っている。何たって次期組長候補はかなりの数いるのだ。誰が組長になってもおかしくはない、候補はたくさん出ており、既に派閥までできてしまっている。そんな中、一体彼は誰を指名するのか…。
「 優陽、お前だ 」
そういった瞬間、その場の空気が一瞬凍りつき、皆一同に指名された人物の方を向き、途端に怒号で溢れかえった。
「何故ですか!?」
「どうしてアイツが!!」
「アレがトップならこの組も終わるな」
「アイツがなるぐらいならウチの若が!」
「そうだ、ウチの若も!」
「アイツの下につくのは御免被る」
「アイツがやる意味が分からない」
「何を考えてるんですか、頭!!」
「あんな人権もないような奴らばっかり囲っている奴に、トップに立ってほしくないですけどねぇ」
「あいつんとこ、過半数以上が両性類じゃねぇかよ。そんな奴ら抱えている奴に、」
「ガタガタうるせぇよ」
その時、雑踏に紛れることなく、1つの通る声がその場に響き渡った。人形かと思うぐらいに整っている綺麗な顔から放たれたドスの聞いた声は、その場を静寂にさせるには効果覿面だった。
「頭がオレをってんだから、それに従えよ。それとも何か?お前ら頭に忠誠心もねぇのか?頭に従うのがお前らの忠義だろうが。文句ある奴はここから出てけよ。…あぁいや、こっちが出て分家の方で生活してやるよ。頭もまだ出る姿勢はあるみたいだし。こっちも別にお前らの下につくことはもちろん、上になることだって願い下げだ。あとなぁ…」
突然立ち上がり1人の男の前に立ったかと思うと、
「痛っ…!!」
その男の手の甲に一筋の赤い線-斬り傷が入っていた。
「オレのことはどう言ったって何言ったって構わない。ただ、オレの周りの人のことを少しでも悪く言う奴は許さない。それになぁ、色んなことガタガタ抜かしてる奴が多いがこの世界では、喧嘩が強くて頭がいい奴が勝ち上がっていくんだよ。お前ら全員、オレに勝てもしないくせにガタガタぬかすんじゃねぇよ」
実際問題、大の大人達が揃っているのだが、ここにいる人達は喧嘩でも頭脳でも優陽に勝てたことがない。それは本人達も自覚しているため、何も言い返せずにいた。
「オレが、竜崎組の筆頭になります」
「…あぁ、頼んだぞ」
こうして、少し波乱がありながらも、若くして日本一の指定暴力団の筆頭となった優陽の日常が始まるのであった。
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