BAD ENDしかないゲームの世界で、俺は幸せを掴んでみせる 〜導きのカケラと呪われた転生者〜

🍚🐴

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第一章 腐蝕の魔女イデア

10話 生殖行為※


暫く歩き続け、村の姿が霞むほど進んだ頃。
先を歩いていたルークが、ようやく足を止めた。

「はぁっ……。おい、いつまで歩かせんだよっ、少し休憩……」

湿った空気が漂い、土の匂いが濃くなる。
その時——ぬるり、と何かが這う音がした。
剥き出しになった岩肌の陰から、半透明の塊がゆっくりと這い出してくる。

「なに、今の音……」
翔が足を止める。靴の裏にまとわりついた半透明のものが、微かに震えた。

「……ただのスライムだね。害はない」
ルークが淡々と呟いた。

半透明の塊が、ゆっくりと形を変えながら翔の方へと這い寄ってくる。
青く透ける体の中心で、青白い光の粒が脈を打ちゆらめいていた。

「スライムって……あの、ゲームでよく出る最弱モンスターの……」
軽口を言いかけた翔の声が途切れる。
スライムは、殺意を向けるでもなく、翔の足首にまとわりつき、体の中へ溶け込むように絡みついてきた。

「うわっ、やめろ、なんだよこれっ……!」
翔は慌てて振り払うが、粘着質な物体が絡みついて離れない。
スライムは、まるで呼吸するように脈動しながら、翔の皮膚に吸いつき、体温を吸い上げていく。
冷たい感触が皮膚を這い、ぞくりと悪寒が走る。

ルークはその光景を、じっと観察していた。
「……あぁ、やっぱり。通常なら捕食に移るはずなのに、キミに欲が出ている。まるで……“繁殖”を試みているかのように」

「見てないで助けろよっ!!」

翔の怒鳴り声が辺りに響く。
そしてようやくルークが一歩踏み出し、手を伸ばす。
だが、それは救いの手ではない。
あろうことか、ルークは指を差しながらこの逸脱した状況の説明を続けた。

「……分かる?この個体は発情しているんだ。キミの中にある魔王の存在を感知している。そして、種の拡散のために、キミを媒介にしようとしている」

ルークの視線は、至って冷静さを保ったまま、ただ観察している。
その悍ましさに翔は顔を青くさせた。
「は、はぁっ!?なに呑気に語ってんだよ!ひぁ!?」

スライムの粘液が、翔の衣服へと滑り込む。やがてそれは下半身——臀部へと伸びる。

「うぎゃっ!ヌルヌルしたのがっ、ケツの中にっ!!いやだっ、気色わりぃっ、早く助けっ、たすけてっ」

ルークはなるほど、と一頻り観察を終えた後、その掌から鈍い銀光が走を散らす。
指を弾いた瞬間。スライムが一瞬で弾け飛んだ。
焦げた匂いが周囲に漂う。翔は息を荒げ、ルークを責め立てた。

「なんで……っ、すぐ助けなかったんだよっ!!」

ルークは無表情のまま、地を濡らすモンスターの死骸に視線を落とす。

「ごめん。この魔物の“反応”を確かめたかったんだ。……やっぱり、特異だった。あんなの初めて見たよ。キミの器の核は、なんだ」

「あぁ!?何を訳のわかんねぇことを……!」
一定のトーンで話し続けるルークの言葉に、翔は深く理解も示さず、ただ腹が沸くるような怒りの感情を露わにさせる。

それでも尚、ルークは残酷に現実を突きつけた。

「異界の人間は何かしら能力を持っている話をしたのを覚えてる?けど、キミに能力が芽生えることはない」

「はっ……?急に何言って……なっ、何で!でも酒場では……!」

「……ママは、かなり能力値が高い。だけど、魔物を惹きつけない。それは、邪神的存在である魔王——核としての役目が機能していない証拠だ。だから、村にとって何の脅威も持たない」

ルークは、怒りに顔を染める翔の右の掌に浮かび始めた黒い瘴気を浄化した。

「だけど、キミの肚の中にいる魔王は、誰よりも強力で絶大なキミの生命力を奪い続けている。だから、能力が開花できない。……キミの満足する答えはあったかな」

僕はあまり説明が得意じゃないから、こうやって実際に体感した方が手っ取り早いと思って、と何とも非常とも取れるルークの機械的な説明に、翔は唖然と口を開く。
そしてヒュ、と喉から息が漏れた。

「奪い……続けている?」

ルークはこくりと頷き、足元に広がるモンスターの残骸から、翔に目を向ける。

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