時の嵐の中で〜メッセージを受け止めて〜

夕妃

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これから

向かい合い

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次の日、教室に入った私の肩をポンと葉月が叩いた。
「おはよう、美沙希」
「おはよう、葉月。まさか声を掛けてくれるとは思わなかったわ」
「そう?あいつから告白されたかな?と思って」
少しだけ攻撃的な笑みをしている。
「手紙もらったわ」
「そうなの。あんまり浮かれてるとスキが出来るからせいぜい気を付けてね」
「ご丁寧にご忠告ありがとう。だけど、心配無用。浮かれたりしないわ。断るもの」
私の一言に顔色をかえた葉月が声を荒げる。
「断る?どうして!あいつ、いい奴よ?どうして断るのよ?そんなの許さないわ。それじゃ、何の為に私達が別れたのかわかんないじゃない!」
涙目になっている。葉月が彼の事をまだ好きな事が伝わってくる。
「好きな人がいるから。側にいて欲しいし、側にいたい。だから、葉月の彼とは付き合えない」
私はキッパリと言った。こればかりは誰も悪くない。
「そんなハッキリ言われちゃったら仕方ないわね。あいつの事なんていいわ。今は『石』が最優先。今日も綺麗な『石』ね。近々頂くわよ」
攻撃的な笑みに戻りネックレスを一瞥して歩いていく。


放課後。3人で学校うらの喫茶店に集まるのが日課になりつつある。
「さてと、これで誰かしら手掛かり見つけてたら言う事ないわね」
アイスティーをすすり、ため息混じりに言う私。
「そうね。で、なんかないの?」
頭の後ろで手を組む利津。
「しいて申し上げるなら、葉月達もまだ手掛かりないみたいですわね」
「そう…まだ追い抜きも追い越しもないって事ね」
「望みはあるか。先になんとかしないとなぁ」
進展のないまま、分かれて家に帰る。

その夜、窓から見える月に向かって語りかける。
「姫…覚悟は出来てるわ。あとは姫と向かい合うだけ」


『美沙希様!お急ぎくださいませ!』
しばらくすると、血相を変えた津薙が私の部屋に現れた。明らかにおかしい。いつもと違い、髪の毛は乱れ、着物には所々、汚れや焦げに破れている。
「津薙?いつからそこに…その格好、何があったの?」
『《巫女姫》様が動かれたのでございます。…申し訳ございません!』
膝をつき、手を添えて頭を下げる津薙。土下座するって、申し訳ないって、どういうこと?

「姫が?!何かの間違いでしょ?!」
津薙の話を聞き、思わず声を荒げてしまう私。
『わたくし共がついていながら、本当に申し訳ございません!ほんの一瞬の事でございました。ほんの一瞬、姫様から目を離してしまい…姫様はわたくし共を庇われて…美沙希様!どうか、どうかお急ぎくださいませ!』
姫が津薙と三若を庇って重傷を負ったとの事だった。
私に出来る事ならなんとかしたい。だけど、一体どうしたらいいの?
「姫の助けになる事ならなんでもするわ。だけど、私にどうしろっていうの?姫をどうしたら助けられるの?」
『今こそ、今こそ『石』の力を引き出す時でございます。どうか姫様をお助けください』
「わかった。やれるとこまでやってみるわ。急ぐわよ」
利津と若葉に連絡を取り、急いで着替える。
寝ている両親を起こさない様に静かに家を出て、学校まで急ぐ。

既に門の前に利津と若葉が待っていた。
言葉を交わすでもなく私は言った。
「行くわよ!」
「OK!覚悟は出来てる!」
「平和な生活を取り戻しますわ!」

一部屋、不自然に灯りの点いている教室があった。
校庭をダッシュで横切り、その教室に走る。
ドアを開けると不敵な笑みをしている葉月と理沙、未奈の3人がいた。
「遅かったわね。逃げたかと思った」
「お待たせして申し訳ないわね」
葉月の言葉に返す私。
「《姫巫女》の為にも急がないとね」
「知ってんだ。尊敬に値する地獄耳ね」
既に火花の散る理沙と利津。
「じゃ、そろそろ始めますか!」
私と葉月の言葉に、私と利津と若葉が身に付けている『石』が眩しいくらいの光を放った。
「きゃあ!何も見えないよ!」
「この光なんですの!」

目を開けられる様になった時、そこは教室じゃなかった。それよりも、私と葉月が着物姿になっていた。そう、ちょうど姫と巫女姫のように…
先に声を上げたのは利津だった。
「美沙希?!なんで着物なんか…ここどこだ?」
「利津!美沙希の帯留め!」
若葉が私の着物の帯留めを指差す。そこには姫のしていた帯留めと同じ『石』が不思議な光を放っていた。
「なる程ね。現代で」
「因縁の決着だね」
理沙と未奈が頷く。
「葉月。この『石』は渡さない!姫の事も私が守ってみせるわっ!」
「そう言えるのも今のうちよ!」
眩しい光が私と葉月を包み込んだ。


「葉月!」
「おっと。理沙、あんたの相手はあたしよ」
駆け出そうとした理沙の前に利津が立ちはだかる。

「私の相手は若葉って事だね。手加減しないよ。大和撫子ちゃん」
悪戯に笑みを浮かべる未奈。
「後悔なさらないでくださいね」

「あははっ!弱い犬程良く吠えるって言ったもんね」
理沙が高らかに笑う。
足元に縛られた利津と若葉。
「汚い手使いやがって!」
怒鳴る利津。
「美沙希が負けるトコ、その目で見てなよ」
ニッコリ笑う未奈。
若葉が怪訝な顔で声を上げた。
「なんだか、2人の様子おかしくありません事?それに葉月の目が赤い…正気じゃありませんわ!」
「もしかして…『石』のせいじゃないか?」
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