10 / 14
終着
『石』
しおりを挟む
「なによ『石』のせいって!」
理沙が利津の胸ぐらを掴む。その手を身体で払う利津。
「わかんないの?慣れない『石』の力が放つ光の中にずっといて、その力を支えてるんだから、精神的にだって体力だって限界なんだよ」
理沙を睨み付ける利津。
「なんだ、それなら簡単だよ!」
未奈がニッコリ笑う。
「どうする気ですの?」
「利津と若葉を殺して『石』の力で2人の生命力を葉月にあげればいいんじゃん」
「なる程」
小さいナイフを取り出す理沙。
「あんた、そんなもんいつも持ってんの?」
「2人が死ねば『石』の力は半減する。つまり、美沙希の力が半分になるわけで、めでたく葉月が勝って《巫女姫》様が全てを手に入れられるって訳」
「怖い事言いますわね」
「えー、若葉ってば今更『友達でしょ』なんて言うつもりなのー?」
屈託なく笑う未奈。
気が付けば、理沙と未奈の目も赤みを帯びて来ている。
「若葉…これって…」
利津が若葉に耳打ちする。
「ええ、結構ヤバいですわね」
「だったら構わないでしょ!」
ナイフを振り上げる理沙に、笑い声を上げる未奈。
目を瞑り、肩を竦める利津と若葉。
真っ白な光の中、葉月と対立する。
着物の袖を振り上げ、葉月に向かって伸ばす。
手から、透き通った丸い光の球が葉月に向かうと、葉月が両手を前に出し、腕を左右に広げる。
光の壁のようなものが出来て、光の球が当たり砕ける。
今度は葉月が光の球をこちらに向けてくる。
葉月と同じように光の壁で球を砕く。
ふと、嫌な予感が走り利津達の方に視線を向けると、利津と若葉が縛られ、理沙がナイフを振り上げていた。
「利津!若葉!」
私は走り出していた。
「?」
目を開けた利津が、自分を覆っている影に顔を上げた。
「美沙希?!」
利津の声に若葉も顔を上げる。
「美沙希?」
「2人とも、大丈夫…?ケホッ」
2人に微笑みかけ、倒れた私は血を吐いた。私の背中には理沙が振り下ろしたナイフが刺さっている。
「美…美沙希?しっかりしろって!」
「美沙希!目を開けてくださいなっ!」
慌てる利津に泣きそうな若葉。
2人の声が聞こえているけど、身体が動かない。
「美沙希…?…美沙希!」
こちらを見ていた葉月が、ハッとしたように駆け寄ってくる。目から赤みが消えていた。そしていつの間にか、教室に戻っていた。
「美沙希!」
「美沙希…やだー!」
放心していた理沙と未奈も駆け寄ろうとした時。
「あっ!
「あぁ!」
2人とも声を上げて倒れ込んだ。
「理沙?おい、どーしたの?!」
「未奈?しっかりしてくださいな!」
駆け寄ってきた葉月にロープを解いてもらった利津と若葉が倒れ込んだ2人を揺さぶる。
『おーほほほほほ。』
高らかな笑い声が響いた。
『お久しぶりです事。随分と気持ちの良い光景だ事』
葉月がキッと睨み《巫女姫》の前に立った。
「よくも…よくも私の身体を使って、こんな酷い事を!理沙と未奈まで巻き込んで…絶対許さないっ!」
『許しを乞わねばならぬ?このわたくしに頭を下げ許しを乞うのは《姫巫女》以下お前達であろう。第一、なんの力も持たないお前に何が出来ると?わたくしに指1本触れる事など叶わぬわ!』
高らかに言い放つ《巫女姫》は揺るぎない自信に満ちた顔をしていたが、どこか寂しそうでもあった。
『出来ます』
声と共に、《姫巫女》が現れた。
「《姫巫女》様!」
葉月と利津と若葉の声が揃う。
『出たな。お前に用などないわっ』
憎悪を露わにした表情で《姫巫女》を見る《巫女姫》。
悲しそうな表情で《巫女姫》を見た《姫巫女》は私達の方に向き直る。
葉月が急く。
「どうしたらいいの!?一体どうすればいいのですか?」
『あなた方をわたくしの今いるココに呼べばいいのです。ですが…それには美沙希の力が必要なのです』
言いにくそうに、倒れ込んでいる私を見つめる《姫巫女》。
「それは、お言葉ですが《姫巫女》様、美沙希は…」
「私なら平気よ」
若葉の言葉を遮って、私は声を絞り出す。
「美沙希!大丈夫?救急車呼んでくる!」
走り出して教室を出て行く葉月。
後姿を見送って、私は痛みを堪えながら姫の前に立つ。
「美沙希!」
利津と若葉の呼ぶ声が聞こえる。
「姫、必ず私が。」
『美沙希。本当に申し訳ありません。頼みます』
深々と頭を下げる姫。
「美沙希…どういう事?」
私を支えながら、利津が問いかける。
前を見つめたまま、私は静かに答えた。
「私に残された時間は少ない」
そう。わかってる。
『石』の力とは、私の生命力でもあるのだ。
3つ揃って、利津と若葉の力が宿った『石』が私のと1つになった時、私の生命力となり不思議な力となる。
目を見開いた若葉が口を開く。
「美沙希!それでしたら…」
「それでも!私は行くわ。2度とこの教室に帰ってこれないとしても、私は行く。」
若葉の言葉を遮り、私は声を上げる。
「じゃ、あたしも行くしかないね」
ウインクして笑う利津に若葉が続けた。
「わたくしも行きますわよ」
「利津…若葉…ありがとう。じゃ、行くわよ!」
2人に微笑み返して、姫を見つめた。
優しく微笑んで頷いた姫が両手を水を掬い上げるような形にして私達の方に差し出すと、また眩い光に包み込まれた。
私達が消えた後に教室に戻ってきた葉月は声を上げる。
「!?どうなってるの???美沙希?利津!若葉!どうなっちゃったのよ!」
理沙が利津の胸ぐらを掴む。その手を身体で払う利津。
「わかんないの?慣れない『石』の力が放つ光の中にずっといて、その力を支えてるんだから、精神的にだって体力だって限界なんだよ」
理沙を睨み付ける利津。
「なんだ、それなら簡単だよ!」
未奈がニッコリ笑う。
「どうする気ですの?」
「利津と若葉を殺して『石』の力で2人の生命力を葉月にあげればいいんじゃん」
「なる程」
小さいナイフを取り出す理沙。
「あんた、そんなもんいつも持ってんの?」
「2人が死ねば『石』の力は半減する。つまり、美沙希の力が半分になるわけで、めでたく葉月が勝って《巫女姫》様が全てを手に入れられるって訳」
「怖い事言いますわね」
「えー、若葉ってば今更『友達でしょ』なんて言うつもりなのー?」
屈託なく笑う未奈。
気が付けば、理沙と未奈の目も赤みを帯びて来ている。
「若葉…これって…」
利津が若葉に耳打ちする。
「ええ、結構ヤバいですわね」
「だったら構わないでしょ!」
ナイフを振り上げる理沙に、笑い声を上げる未奈。
目を瞑り、肩を竦める利津と若葉。
真っ白な光の中、葉月と対立する。
着物の袖を振り上げ、葉月に向かって伸ばす。
手から、透き通った丸い光の球が葉月に向かうと、葉月が両手を前に出し、腕を左右に広げる。
光の壁のようなものが出来て、光の球が当たり砕ける。
今度は葉月が光の球をこちらに向けてくる。
葉月と同じように光の壁で球を砕く。
ふと、嫌な予感が走り利津達の方に視線を向けると、利津と若葉が縛られ、理沙がナイフを振り上げていた。
「利津!若葉!」
私は走り出していた。
「?」
目を開けた利津が、自分を覆っている影に顔を上げた。
「美沙希?!」
利津の声に若葉も顔を上げる。
「美沙希?」
「2人とも、大丈夫…?ケホッ」
2人に微笑みかけ、倒れた私は血を吐いた。私の背中には理沙が振り下ろしたナイフが刺さっている。
「美…美沙希?しっかりしろって!」
「美沙希!目を開けてくださいなっ!」
慌てる利津に泣きそうな若葉。
2人の声が聞こえているけど、身体が動かない。
「美沙希…?…美沙希!」
こちらを見ていた葉月が、ハッとしたように駆け寄ってくる。目から赤みが消えていた。そしていつの間にか、教室に戻っていた。
「美沙希!」
「美沙希…やだー!」
放心していた理沙と未奈も駆け寄ろうとした時。
「あっ!
「あぁ!」
2人とも声を上げて倒れ込んだ。
「理沙?おい、どーしたの?!」
「未奈?しっかりしてくださいな!」
駆け寄ってきた葉月にロープを解いてもらった利津と若葉が倒れ込んだ2人を揺さぶる。
『おーほほほほほ。』
高らかな笑い声が響いた。
『お久しぶりです事。随分と気持ちの良い光景だ事』
葉月がキッと睨み《巫女姫》の前に立った。
「よくも…よくも私の身体を使って、こんな酷い事を!理沙と未奈まで巻き込んで…絶対許さないっ!」
『許しを乞わねばならぬ?このわたくしに頭を下げ許しを乞うのは《姫巫女》以下お前達であろう。第一、なんの力も持たないお前に何が出来ると?わたくしに指1本触れる事など叶わぬわ!』
高らかに言い放つ《巫女姫》は揺るぎない自信に満ちた顔をしていたが、どこか寂しそうでもあった。
『出来ます』
声と共に、《姫巫女》が現れた。
「《姫巫女》様!」
葉月と利津と若葉の声が揃う。
『出たな。お前に用などないわっ』
憎悪を露わにした表情で《姫巫女》を見る《巫女姫》。
悲しそうな表情で《巫女姫》を見た《姫巫女》は私達の方に向き直る。
葉月が急く。
「どうしたらいいの!?一体どうすればいいのですか?」
『あなた方をわたくしの今いるココに呼べばいいのです。ですが…それには美沙希の力が必要なのです』
言いにくそうに、倒れ込んでいる私を見つめる《姫巫女》。
「それは、お言葉ですが《姫巫女》様、美沙希は…」
「私なら平気よ」
若葉の言葉を遮って、私は声を絞り出す。
「美沙希!大丈夫?救急車呼んでくる!」
走り出して教室を出て行く葉月。
後姿を見送って、私は痛みを堪えながら姫の前に立つ。
「美沙希!」
利津と若葉の呼ぶ声が聞こえる。
「姫、必ず私が。」
『美沙希。本当に申し訳ありません。頼みます』
深々と頭を下げる姫。
「美沙希…どういう事?」
私を支えながら、利津が問いかける。
前を見つめたまま、私は静かに答えた。
「私に残された時間は少ない」
そう。わかってる。
『石』の力とは、私の生命力でもあるのだ。
3つ揃って、利津と若葉の力が宿った『石』が私のと1つになった時、私の生命力となり不思議な力となる。
目を見開いた若葉が口を開く。
「美沙希!それでしたら…」
「それでも!私は行くわ。2度とこの教室に帰ってこれないとしても、私は行く。」
若葉の言葉を遮り、私は声を上げる。
「じゃ、あたしも行くしかないね」
ウインクして笑う利津に若葉が続けた。
「わたくしも行きますわよ」
「利津…若葉…ありがとう。じゃ、行くわよ!」
2人に微笑み返して、姫を見つめた。
優しく微笑んで頷いた姫が両手を水を掬い上げるような形にして私達の方に差し出すと、また眩い光に包み込まれた。
私達が消えた後に教室に戻ってきた葉月は声を上げる。
「!?どうなってるの???美沙希?利津!若葉!どうなっちゃったのよ!」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる