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終着
目覚めし者よ
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「そんな事が?!」
「あ…やだよ!美沙希!利津!」
今にも泣き出しそうに、美沙希と利津を呼ぶ未奈。
「利津!起きろって!」
理沙が利津の身体を揺らす。
「若葉…美沙希は本当に「残された時間はない」って言ったの?」
放心状態で聞き返す葉月。
「えぇ…言いましたわ」
葉月の顔を見れず、返す若葉の頬に涙が伝う。
「利津!目を…覚ましてよ…」
理沙の声に勢いがなくなりそうになる。
「…ん…」
「利津?おい!利津!あたしがわかる!?」
理沙の勢いを取り戻した声に4人が反応して、利津のベッドに駆け寄る。口々に利津を呼ぶ。
「…ん…理沙?」
「利津!」
「あぁ…病院…?」
「あたしら、3日も寝てたみたい。」
頭に手を添えながら起き上がる利津。ハッとしたように顔を上げ、4人に問いかける。
「美沙希は?!」
「隣ですわ」
仰向けに横たわる美沙希。
気が付けば、美沙希だけ点滴に繋がれている。顔色も良くない。5人が美沙希のベッドに集まり、声を掛ける。
「美沙希、目を開けて。お願い…。私、まだ謝ってないんだよ?謝らせてよ。お願い…」
美沙希の手を取り、涙を流しながら声を掛ける葉月。
「目覚ませよ。あたしの事、助けてくれたお礼言ってないじゃん!」
「美沙希、目を覚ましてくださいな…」
「そうだよ。あたしにも謝らせてよ…美沙希…」
「やだよぉ。美沙希ぃ…」
「…み…んな…無事?」
弱々しい口調で、弱々しく目を開けて5人を見回す美沙希に、ハッとして顔を見合わせて美沙希を見つめる5人。
「美沙希!目が覚めたんだな!」
「美沙希…良かった…良かったぁ…。ごめん、ごめんね」
顔を覗き込む利津に泣き崩れる葉月。
「お医者様、呼んできますわ!」
走り出す若葉。
「若葉…いいわ。こっちに来て」
弱々しい美沙希の声。
「でも、医者に診てもらわなきゃ」
理沙の言葉に首を左右に振る。
「みんなに聞いてほしい事があるの」
元気のない笑顔。
「それよりも診てもらう方が先だよ。話なら診てもらってからでも退院した後でも出来るでしょ」
利津の言葉にまた首を左右に振る。
「今じゃなきゃダメなの」
その言葉に何かを察した5人がまた口々に言う。
「美沙希…?嫌。嫌よ!」
葉月が首を左右に振る。
「お願い。聞いてよ」
「ヤダよ!私、絶対聞かない!」
未奈が駄々っ子のようにいやいやする。
「みんな…本当にありがとう。私ね、みんなと会えて本当に良かった。楽しかったよ」
力いっぱいの笑顔をする。
「美沙希…そんな事言わないでくださいな」
「みんな…泣かせてごめんね。私はいっぱい楽しい思い出もらっていくのに、何も残せなくてごめん」
みんなが泣いている。
「でも、忘れないから。みんなとは絶対また会えるって予感がするから。だからサヨナラは言わない。だから、みんなも私の事忘れないでいてね」
「忘れるわけ…ない」
みんな、もう言葉が出てこない。
「ずっとね、友達よ。本当にありがとう。バイバイ…」
静かに目を閉じる。
「美沙希?やだ、起きてよ?ウソでしょ?美沙希!」
「朝のHRで、みんなに悲しい知らせがある。知っているとは思うが、昨日このクラスの葵 美沙希が事故で亡くなった。今日、お通夜だそうだ。最後のお別れに行ってやってくれ」
「利津。ここにいたんだ」
理沙が声を掛ける。
「あぁ、理沙。ここ初めて美沙希と会った場所なんだ」
利津が懐かしげな笑みを浮かべる。
「初めてって、こんな学校の裏門が?」
「そ。あいつデキ良かったじゃん?女子に結構僻まれててさ。たまたま通りかかった時、囲まれてたの見つけて追い払ったら友達」
苦笑する利津。
「へぇ。カッコいいとこあるじゃん」
笑い返す理沙。
「どうも。ところで、何か用事あったんじゃないの?」
「あぁ、みんな待ってるから行こう」
「呼びに来てくれたんだ。ありがとう」
「わーかば。どうしたの?図書室でぼーっとしてるなんて珍しいじゃん」
本を広げたまま、窓の外を見ている若葉の顔を笑顔で覗き込む未奈。
「未奈。ここは、美沙希との思い出の場所なんですの」
「思い出?」
聞き返しながら隣に座る。
「えぇ。わたくし転入生でしたでしょ?人見知りもあって、なかなかクラスに馴染めず、放課後にここに来ては悩んでいましたの。そんな時、美沙希が気にかけてくれて「私の友達に紹介するわ!」って。それであなた方と友達になれたんですの」
「そう言えばそうだったね。あ、葉月が門で待ってるって」
「そう。行きましょうか」
笑い合って立ち上がる2人。
「美沙希。私達、この門の陰で待ち合わせて授業抜け出したりしたね。ゆっくり休んでね。私達もいずれ逝くから、忘れずに待っててね」
青く晴れた空を見上げて、独り言を呟く葉月。
「葉月ー!お待たせ!」
声のする方を見ると、未奈が小走りに駆け寄ってくる。その後ろに若葉と利津と理沙が微笑んでこちらに向かって歩いている。
「さてと、今日はどこに寄ってこうか」
「そうだなー」
「と、その前に…」
葉月がみんなにウインクして、門の方に振り返る。
「美沙希!また会おうね!」
空に向かって声を揃える。
《みんな…ありがとう。だけどね、姫がね、近いうちにみんなと再会出来るって。今すぐにはムリだけど、必ず会えるって約束してくれたのよ。だから、みんなが来る前にまた会える。今からみんなのびっくりする顔が楽しみだよ。それまで元気でいてね》
本当にありがとう。
みんなのおかげで、こうしてまた巫女姫と過ごす幸せな日々を取り戻す事が出来ました。
だけど、そのせいで、みんなの大切な美沙希を幸せを奪ってしまいました。
巫女姫と相談してね、お礼にみんなに幸せをプレゼントする事にしました。
少しだけ、時間がかかってしまいますが受け取ってね。
本当にありがとう。
「あ…やだよ!美沙希!利津!」
今にも泣き出しそうに、美沙希と利津を呼ぶ未奈。
「利津!起きろって!」
理沙が利津の身体を揺らす。
「若葉…美沙希は本当に「残された時間はない」って言ったの?」
放心状態で聞き返す葉月。
「えぇ…言いましたわ」
葉月の顔を見れず、返す若葉の頬に涙が伝う。
「利津!目を…覚ましてよ…」
理沙の声に勢いがなくなりそうになる。
「…ん…」
「利津?おい!利津!あたしがわかる!?」
理沙の勢いを取り戻した声に4人が反応して、利津のベッドに駆け寄る。口々に利津を呼ぶ。
「…ん…理沙?」
「利津!」
「あぁ…病院…?」
「あたしら、3日も寝てたみたい。」
頭に手を添えながら起き上がる利津。ハッとしたように顔を上げ、4人に問いかける。
「美沙希は?!」
「隣ですわ」
仰向けに横たわる美沙希。
気が付けば、美沙希だけ点滴に繋がれている。顔色も良くない。5人が美沙希のベッドに集まり、声を掛ける。
「美沙希、目を開けて。お願い…。私、まだ謝ってないんだよ?謝らせてよ。お願い…」
美沙希の手を取り、涙を流しながら声を掛ける葉月。
「目覚ませよ。あたしの事、助けてくれたお礼言ってないじゃん!」
「美沙希、目を覚ましてくださいな…」
「そうだよ。あたしにも謝らせてよ…美沙希…」
「やだよぉ。美沙希ぃ…」
「…み…んな…無事?」
弱々しい口調で、弱々しく目を開けて5人を見回す美沙希に、ハッとして顔を見合わせて美沙希を見つめる5人。
「美沙希!目が覚めたんだな!」
「美沙希…良かった…良かったぁ…。ごめん、ごめんね」
顔を覗き込む利津に泣き崩れる葉月。
「お医者様、呼んできますわ!」
走り出す若葉。
「若葉…いいわ。こっちに来て」
弱々しい美沙希の声。
「でも、医者に診てもらわなきゃ」
理沙の言葉に首を左右に振る。
「みんなに聞いてほしい事があるの」
元気のない笑顔。
「それよりも診てもらう方が先だよ。話なら診てもらってからでも退院した後でも出来るでしょ」
利津の言葉にまた首を左右に振る。
「今じゃなきゃダメなの」
その言葉に何かを察した5人がまた口々に言う。
「美沙希…?嫌。嫌よ!」
葉月が首を左右に振る。
「お願い。聞いてよ」
「ヤダよ!私、絶対聞かない!」
未奈が駄々っ子のようにいやいやする。
「みんな…本当にありがとう。私ね、みんなと会えて本当に良かった。楽しかったよ」
力いっぱいの笑顔をする。
「美沙希…そんな事言わないでくださいな」
「みんな…泣かせてごめんね。私はいっぱい楽しい思い出もらっていくのに、何も残せなくてごめん」
みんなが泣いている。
「でも、忘れないから。みんなとは絶対また会えるって予感がするから。だからサヨナラは言わない。だから、みんなも私の事忘れないでいてね」
「忘れるわけ…ない」
みんな、もう言葉が出てこない。
「ずっとね、友達よ。本当にありがとう。バイバイ…」
静かに目を閉じる。
「美沙希?やだ、起きてよ?ウソでしょ?美沙希!」
「朝のHRで、みんなに悲しい知らせがある。知っているとは思うが、昨日このクラスの葵 美沙希が事故で亡くなった。今日、お通夜だそうだ。最後のお別れに行ってやってくれ」
「利津。ここにいたんだ」
理沙が声を掛ける。
「あぁ、理沙。ここ初めて美沙希と会った場所なんだ」
利津が懐かしげな笑みを浮かべる。
「初めてって、こんな学校の裏門が?」
「そ。あいつデキ良かったじゃん?女子に結構僻まれててさ。たまたま通りかかった時、囲まれてたの見つけて追い払ったら友達」
苦笑する利津。
「へぇ。カッコいいとこあるじゃん」
笑い返す理沙。
「どうも。ところで、何か用事あったんじゃないの?」
「あぁ、みんな待ってるから行こう」
「呼びに来てくれたんだ。ありがとう」
「わーかば。どうしたの?図書室でぼーっとしてるなんて珍しいじゃん」
本を広げたまま、窓の外を見ている若葉の顔を笑顔で覗き込む未奈。
「未奈。ここは、美沙希との思い出の場所なんですの」
「思い出?」
聞き返しながら隣に座る。
「えぇ。わたくし転入生でしたでしょ?人見知りもあって、なかなかクラスに馴染めず、放課後にここに来ては悩んでいましたの。そんな時、美沙希が気にかけてくれて「私の友達に紹介するわ!」って。それであなた方と友達になれたんですの」
「そう言えばそうだったね。あ、葉月が門で待ってるって」
「そう。行きましょうか」
笑い合って立ち上がる2人。
「美沙希。私達、この門の陰で待ち合わせて授業抜け出したりしたね。ゆっくり休んでね。私達もいずれ逝くから、忘れずに待っててね」
青く晴れた空を見上げて、独り言を呟く葉月。
「葉月ー!お待たせ!」
声のする方を見ると、未奈が小走りに駆け寄ってくる。その後ろに若葉と利津と理沙が微笑んでこちらに向かって歩いている。
「さてと、今日はどこに寄ってこうか」
「そうだなー」
「と、その前に…」
葉月がみんなにウインクして、門の方に振り返る。
「美沙希!また会おうね!」
空に向かって声を揃える。
《みんな…ありがとう。だけどね、姫がね、近いうちにみんなと再会出来るって。今すぐにはムリだけど、必ず会えるって約束してくれたのよ。だから、みんなが来る前にまた会える。今からみんなのびっくりする顔が楽しみだよ。それまで元気でいてね》
本当にありがとう。
みんなのおかげで、こうしてまた巫女姫と過ごす幸せな日々を取り戻す事が出来ました。
だけど、そのせいで、みんなの大切な美沙希を幸せを奪ってしまいました。
巫女姫と相談してね、お礼にみんなに幸せをプレゼントする事にしました。
少しだけ、時間がかかってしまいますが受け取ってね。
本当にありがとう。
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