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第11章 過去と未来
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小田原を越え、更に神奈川県の幾つかの宿場町を過ぎてようやく土方達一行は江戸に入った。
「ここが、品川…。」
ビルの乱立する品川駅周辺とは打って変わって、平屋の家が並ぶ街並みと海の近さに薫は驚いた。
人の多さでは現代の品川駅にも負けていない。
「土方君、私は道場を片付ける用事とわたしの方でも知り合いに声を掛けているから
深川の方へ向かおうと思うのだが、よろしいかな。」
初夏の汗ばむ陽気にも拘らず、汗一つかかず涼しい顔で伊東は土方にそう提案した。
「いいでしょう。
私も試衛館と日野の方に用事がありますので、お互い用を済ませてまた品川に集まりましょう。」
「齋藤君、君はどうするかい。
君が良ければ共に深川に来てはくれまいか。」
「私は試衛館道場に出入りしていた身。
周斎先生にご挨拶した後で良ければ、参りましょう。」
「構わぬよ。旧交を温めてきたまえ。」
「ご配慮痛み入る。」
齋藤は表情を変えず、伊東に軽く頭を下げた。
「それでは薫君、再び見える日を楽しみにしているよ。」
爽やかな笑顔を薫に向けると、伊東は深川の方へ向かうと人ごみの中に姿を消した。
一方の土方はと言えば、腹がすいたと近くの小料理屋の暖簾をくぐった。
頼むや否や、すぐにでてきたざるそばをずるずると音を立ててすすると、
乾いた喉にビールが染みるサラリーマンのような声を上げた。
「やはり江戸の食い物に限るな。」
「上方は味が薄くていけません。」
齋藤も江戸が長いらしく、美味しそうに蕎麦をすすっている。
そこまでこだわりのない薫でも、故郷の味を久しぶりに味わって心なしか高揚していた。
「斎藤、伊東のこと頼んだぞ。」
蕎麦を食べ終えて土方は鋭い眼差しで齋藤を見た。
それに対し、齋藤は短く承知、とだけ答えると再び蕎麦をすする。
どうやら、伊東と齋藤を連れてきたのは何か理由があるらしい。
「おい、何もたもたしてるんだ。蕎麦なんてとっとと食っちまわねえとのびきっちまうじゃねえか。」
生粋の江戸っ子―生まれも育ちも多摩であるということはここでは置いておくとしよう―
から厳しい言葉を受けると、薫は残りの蕎麦を勢いよく啜った。
そして、そばつゆを一気に飲み干すと二人の背中を追いかけた。
三人の向かう先は、新選組の原点、試衛館である。
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