維新竹取物語〜土方歳三とかぐや姫の物語〜

柳井梁

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第21章 裏切りの代償

土方が近藤の邸宅に飛んで行ってから早半日。
夜が更けてもなお、土方が自室に戻ってくることはなかった。
近藤や、永倉、原田といった主要な面々が屯所から姿を消していることは、齋藤の帰還がもたらす大きな意味を物語っているようだった。

「起きてたのか。」
田村と市村を先に寝かせ、薫は一人行灯の灯を頼りに土方の帰りを待っていた。
「なんだか眠れなくて。」
そうか、と短く答えると、土方はすぐに袴の紐を解き、横になる。
「齋藤先生は新選組に復帰されるんですか。」

藤堂先生は、戻ってくるんですか。
本当に聞きたいことは怖くて聞けなかった。

「…灯を消せ。早く寝ろ。」
答えることも煩わしいと言わんばかりに、土方は薫に背を向けたまま、言った。
頑固な背中に何を言っても無駄だとわかっている薫は、すぐに身支度を整え、行灯の火を吹き消した。

齋藤が薫の前に姿を現してから数日が経ったある日のこと、夕食の支度をしていた薫に土方から呼び出しを受けた。
取るものもとりあえず、たすき掛けのまま部屋へ向かうと、重い紫の包みが畳の上に置かれていた。
「花君太夫の所に山口という男がいる。そいつにこれを渡してこい。」
ただのお使いなら田村や市村がいるのに、と少し不貞腐れながら紫の包みを手にすると、ずしりという重みがした。

懐にしまうと、チャリと金属が擦れる音がした。
「これ…。」
お金ですよね、と土方に確認しようとしたが、土方の鋭い眼差しに薫は口を閉ざした。
「用が済んだらとっとと帰って来い。」
「なんだか私がいつも寄り道しているみたいな言い方ですね。」
「事実だろ。」
「別に寄り道しようと思ってるわけではなく・・・!」
「どこをほっつき歩いているか知らねえが、色んな連中に絡まれやがって。」
そ、それには反論できませんが…。
「不可抗力です。」
「とにかく、今宵はだめだ。」
何を隠しているのか、土方の挙動はどこか落ち着きがない。
「何かあるんですか。」
策士の割に嘘がつけないところが、この男の可愛いところでもある。
「何もなくても、だ。」
「教えてくれなきゃ対処もできません。」
苛立つ薫の肩を土方は強く自分の元に引っ張った。
予想しない土方の行動に、薫は小さな悲鳴を上げつつも、土方の懐に収まった。
薫の耳元に土方の吐息がかかる。
「見廻組が河原町をうろついてる。巻き込まれれば、お前は死ぬぞ。」

どこか「死」というものが浮世離れした存在のように感じていたが、土方の言葉で急にその存在が身近なものに変わった。
そうだ、私は、死と隣り合わせの世界で生きているのだ。
薫は、土方のささやきに何度も頷く。
その頷きを見届けると、土方は薫をそっと引きはがし、部屋を出ていった。
感想 2

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みんなの感想(2件)

2021.08.24 ユーザー名の登録がありません

退会済ユーザのコメントです

2021.08.24 柳井梁

ありがとうございます!
大変励みになります!
頑張ります!

解除
面倒くさがり自宅警備員
2021.08.23 面倒くさがり自宅警備員

先程お気に入り登録させて頂きました☺️
最初は少しだけ読んでみようと思い開かせていただきましたが、すっかりお話に夢中になってしまって最後まで読み耽ってしまいました😳
更新されることを楽しみに待っています✨
お体にお気をつけて頑張ってください!

2021.08.24 柳井梁

感想ありがとうございます!
拙い文章ではありますが、楽しんでいただけたら幸いです!

解除

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